2010-03-16
『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電4 炉の構造におけるウラン原発炉とトリウム溶融塩炉の比較』
本編シリーズ3では、“燃料として”のウラン系統とトリウム系統の原発の性能比較を行いました。
シリーズ記事『次代を担う、エネルギー・資源』 トリウム原子力発電1 核エネルギーを利用した発電システムを概観する1/2
の中で、
固体燃料の原子力発電所では、燃料装着、連続処理、メンテナンス等の点において合理的でないのに対して、液体化燃料を使用する溶融塩炉では、液体循環システムを主体とした単純なプラントとして設計可能で、固体燃料型炉の弱点を克服できる。
とまとめましたが、今回具体的な中身に迫っていきます。
その前に一般的に原子炉にはどんな要素があるかを見ておきましょう。
☆原子炉に必要な要素って何?
まず、核分裂を起こすには中性子が必要です。何らかの方法で核燃料に中性子を当てると分裂し、その中から「熱」と「中性子」が飛び出します。飛び出した熱を電力として利用するには、発電機まで運び出す熱搬送媒体(=冷却材)が必要です。
また、電力を継続的に生み出すには、この核分裂で飛び出た中性子を周囲の核燃料に当てて、連鎖的な核分裂(=臨界状態)が必要です。そのためにはこの中性子の速度を落とす必要があり、この働きをするものを「減速材」と言います。(※)
※なぜ中性子の速度を落とすと周囲の原子に当たりやすくなるのか?
(速度が速いと当りにくく、遅いと当りやすいのは、お互いの粒子間に核力が働き、お互いが引き寄せられるので、遅い方が当たる確立が上がる。というのが有力な説です。)
この「熱搬送媒体」と「減速材」が炉の構造に必要不可欠な要素ですが、「固体燃料炉」と、「液体化燃料炉(=トリウム溶融塩炉)」では下記のように異なります。
【固体燃料炉】 熱搬送媒体:水 減速材:水
【液体化燃料炉】 熱搬送媒体:溶融塩 減速材:黒鉛(C)
それではこの違いにも注目しながら、炉のシステムを見ていきましょう。
【シリーズ過去エントリー】
1.『次代を担う、エネルギー・資源』 トリウム原子力発電1 核エネルギーを利用した発電システムを概観する1/2
2.『次代を担う、エネルギー・資源』 トリウム原子力発2 核エネルギーを利用した発電システムを概観する2/2
3.『次代を担う、エネルギー・資源』 トリウム原子力発電3 核化学反応におけるウランとトリウムの比較
4.『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電【番外編】♪原子力コラム♪~核反応ってなあに?①~
5.『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電【番外編】♪原子力コラム♪~核反応ってなあに?②~