2011-08-30

次代のエネルギー潮汐・海流の可能性 6.日本は波力発電が主流となる!

前回までは、世界の潮汐発電について紹介してきました。今回は日本の先進的な波力発電について紹介します。
波のエネルギーは、場所によってその特性が異なります。また、365日、時刻や、月の満ち欠け、季節によってもその大きさが変化することはよく知られています。
例えば、日本海側では、冬の季節風による波が高く、逆に夏期は比較的穏やかなことが多いのです。これに対して、太平洋側は台風の時期を除けば、季節的な変動は少ないといえます。静穏な海が、何日も続くことはあまりなく、一年を通じて、1~2m程度の波が押し寄せることが多いのです。
その波の力を使って安定して電気を作ろうという試みを紹介します。
 
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写真はこちらよりお借りしました。
 
○波力発電の種類
 
波力発電の方式は大きく分けて1次変換によって以下の3種類に分類することが出来ます。
日本を中心として、これまでにどのような研究開発がおこなわれてきたか、見てみることにしましょう。
 
1.空気エネルギーに変換する 
2.機械的なエネルギーに変換する
3.水の位置エネルギーまたは水流エネルギーに変換する 

 
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1.空気エネルギーに変換する
海岸では波が絶え間なく寄せては返していますが、この波の力で電気を作ろうというのが波力発電です。空気エネルギーに変換する波力発電とは、波が上下する力で空気の流れを作り、この空気の流れでタービン(羽根車)を回す というものです。
空気室では波の上下運動によって、空気の流れが生じます。空気流は向きが変わる往復流ですが、ウェルズタービン(注)は空気の動きが変わっても同じ方向に回ります。
  
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写真はこちらよりお借りしました。
 
特に波力発電の普及のために、港の静穏度を確保するための防波堤を兼用する事例研究が進められました。防波堤は、波力発電の本体施設として活用可能であり、特に、日本で設計施工技術を磨き上げたケーソン式防波堤は、空気タービン方式の発電にもっとも適していたのです。
87年度からは第一港湾建設局酒田港湾工事事務所で波力発電ケーソンの製作・据付工事が実施され、発電機の最大出力は六十kWにのぼりました。

波力で発電した電力は海底ケーブルで海岸のデモンストレーション・ハウスに送られ、煌々 と照らす照明灯を点灯させたり、地下水を大量に汲み上げ を行い、市民の方々の注目を集めたのです。
(注)ウェルズタービンとは
往復の空気の流れに対して同じ方向に回転することができる特殊なタービン(羽根車)で、空気の流れを効率よく回転エネルギーに変えることができます。
 
事例
・「三瀬立岩海岸」(実験終了:新技術事業団)
・「マイティーホエール」(海洋科学技術センター)
・「寝屋漁港」(実験終了、大成建設)
・「波力発電ケーソン」(実験は一段落、運輸省)
・「定圧化タンク方式波力発電システム」(エンジニアリング振興協会、竹中工務店)
・「マイティーホエール」(海洋科学技術センター)
・「水弁集約式波力発電システム」(東北電力株式会社)
 
 
2.機械的なエネルギーに変換する
波エネルギーを受圧板の振り子運動としてとらえ油圧に変換する、いわば「波のプール」の造波装置の逆の原理で電力に変換する方式です。
室蘭工業大学と日立造船㈱の技術により増毛町が設置し、1981年から1986年にかけて実験が行われました。同様の「振子式」の研究施設が、室蘭港外防波堤沖側にもあって、1983年から試験を行っています。
この方式では、鉛直板をプラントの上に固定した回転軸からつり下げ、波力によってこの鉛直板が振り子のように前後に動揺します。これによって上の水平軸が回転動揺する力で油圧ポンプを駆動し、油圧モータを回転させて発電しました。(最大出力は16kw)
この装置では油圧回路の設計と油圧ポンプの選定が重要となり、最終的にはロータリーベーンポンプを用いることで、エネルギー変換の総合効率四十%以上を得ることが出来たと報告されています。
 
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事例
・「室蘭港」(実験終了:室蘭工業大学)
 
 
3.水の位置エネルギーまたは水流エネルギーに変換する
このタイプの実験が日本の海で行われた例はありません。
波によって打ち寄せられる水塊を構造物の斜面に沿って遡上、越波させ、背後の池に貯留します。そして池の水面と海水面との水位の差を利用して低落差用水車タービンを回すというのが、その原理です。
ノルウエーの沿岸には北極海からの高波が打ち寄せ、年間平均の波エネルギーは海岸一mあたり40kWにも達します。ノルウエーでは、越波貯留型(350kW)及び空気流方式(500kW)の大型発電装置が開発されました。
 
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事例
・「タプチャン:TAPCHAN:Taped Channel Power Plantの略」    
※ノルウェーにある波力発電の実証プラントです。
 
 
 
○波力発電の日本の先進事例
 
現在、日本では上記のような今までの経験・技術蓄積をふまえ、新たな段階へ進もうとしています。民間では神戸大の先端事例、そして行政では、東京都の先進事例を紹介します :o
1.波力発電の新方式開発 神戸大名誉教授 高い効率性、耐久性実現
最後に、上記のブイ型発電機、日本の波力発電の中でも最も注目されている研究を紹介します。

『波力発電の新方式開発 神戸大名誉教授 高い効率性、耐久性実現』 
  1月4日3時19分配信 産経新聞
環境面で注目される波力発電で従来弱点となっていた効率性を高め、低コストで高い耐久性を保持する新しいシステムを、神吉(かんき)博・神戸大名誉教授(機械力学)らが開発。実用化に向け、最終試験を進めている。ジャイロ(コマ)を使って波による揺れを直接回転運動に変換する技術を採用。製品化を目指す神戸大発のベンチャー企業「ジャイロダイナミクス」(神戸市中央区)は、今年から国内外で販売を開始する計画を立てている。
 
地球温暖化防止が世界的課題となる中、発電の分野では原子力のほか、自然エネルギーの活用も進んでいる。しかし、太陽光や風力発電の実用化が進む一方、波力は効率の悪さがネックとなり、ほとんど利用されていない。
 
日本全国の海岸に打ち寄せる波のエネルギーは総計で原発数十基分と推定され、神吉さんは「これほどのエネルギーを使わないのはもったいない」と、平成12年ごろから波力発電の研究を進めてきた。
 
従来の波力発電は、波の運動を空気の移動に変換し、タービン(回転動力の原動機)を回して発電する方式が主流だった。しかし、この方式ではエネルギーの変換回数が多く、タービンの回転ロスもあって効率の悪さにつながっていた。
 
神吉さんはもともとジャイロを使った宇宙ステーションの制御などの研究が専門で、波力をジャイロで回転運動に換え、発電機を回す方式を発案した。鳥取大と共同研究を進め、16年には鳥取市の港湾に最大出力5・5キロワットの試験機を設置。実験の結果、発電効率はタービン方式の2倍以上になることが確認された。
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写真はこちらよりお借りしました。
 
ジャイロ方式は機械が海水や外気と接触しないため耐久性にも優れており、実験では海上に4カ月間設置しても損傷はなかった。
  
現在は和歌山県すさみ町沖の太平洋で最大出力45キロワットの発電機(縦9メートル、横15メートル)を浮かべ、今年2月までの予定で実験を行っている。ジャイロダイナミクス社は、1月中にも自治体関係者らを実験場に招き、お披露目する予定。

 
神吉さんは「太陽光発電より安く、風力発電より安定した発電量を目指している。ディーゼル発電に頼らざるを得ない離島での補助電源として有効性を発揮できるはず」と話している。

資料はこちらからお借りしました。
 
 
2.東京都環境局の地球温暖化対策「波力発電検討会」
2009年、東京都が国に先んじて立ち上げた波力発電検討会が2010年3月に報告書をまとめました。なかなか国が動かない分野だけに注目されています。

『東京都『波力発電検討会報告書』
報告書では、波力発電の導入促進のために、
 
1.波力発電を「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」に基づく新 エネルギーに加えるなど、国のエネルギー政策として法的に位置づけ、開発・導入に取り組むこと。
 
2.波力発電を国の海洋基本計画に折り込むこと。
 
3.実海域における実証実験やモデル発電事業、海底ケーブル等のインフラの整備等の検討を進めること。
 
4. 今後の技術開発等を踏まえ、将来的には波力発電による電力も固定価格買取制度の対象に加えるほか、必要な支援策を講じること。
と提言しました

同時に、「波力発電の普及拡大ロードマップ」を示しました。
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先ずは、伊豆諸島(大島沖合)で実海域実証試験を開始し、次にモデル発電事業を展開、その後、2020年までに200MW程度の波力発電所を数箇所建設し、他の海洋再生可能エネルギーとあわせて1GW程度にすることを展望しています。

資料はこちらからお借りしました。
  
 
○潮汐・海流発電の可能性、波力発電が最も有望
潮汐、海流、波力発電と、海に生まれる力(高いエネルギー密度)を電気に代える試みを紹介してきましたが、この日本で一番可能性のある発電方式は、波力発電ではないでしょうか。
潮汐発電については、日本では潮位差が小さく、1日に2回という短い発電時間、日によって変化する潮位差に合わせた発電計画が必要となり、潮汐発電の可能性は限定的です。
また、海流発電を実現させるには、沿岸部から遠くまで送電できる設備が必要となり、主流にはなれそうにありません。
神戸大の事例のようなブイ型波力発電の可能性も含めて考えると、日本全国の沿岸部に設置が可能、24時間365日一定の発電が可能な波力発電が、一番可能性をもっているのではないでしょうか。
特に1~2mの波が常時起っている太平洋沿岸部の都市には有効でしょう。島嶼部などではとても重宝するのではないでしょうか。

波力発電は地域と国が一丸になって進めることで、小水力発電、地熱発電等の新エネルギーと共にエネルギー問題を解決していく一翼を担えるはずです :o

List    投稿者 egisi | 2011-08-30 | Posted in E10.潮汐・海流の可能性No Comments » 

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