次代のエネルギー潮汐・海流の可能性 5.世界の新たな潮汐・海流発電への試み
Minesto UK社の海中凧による潮流発電システムです。
前回、世界各国の潮汐発電を紹介しました。
既に実用化されている大型のものとしては、フランス・ランス潮汐発電所(最大出力240MW=千kW)、韓国・始華湖潮力発電所(最大出力254MW)があり、これらは、大規模な水力発電所(ちなみに黒部川第四発電所で335MW)、あるいは小規模の火力発電所に相当する発電量を誇ります。
ところが、潮汐を直接利用するためには、5~8mの潮位差が必要とされていますし、いずれもが巨大なダムを湾岸に造営する構造になっており、このような活用ができる適地は限られてきます。
実際、日本においては、潮位差が大きい太平洋沿岸でも平均2~3m、潮位差の一番大きい九州有明海の奥部で4.9mと、潮汐を直接利用するには潮位差が小さく、また、巨大なダムを湾岸に造営することは困難であり、日本で潮汐発電がつくられる可能性は低いとされています。
しかし、これまで見てきたように、潮汐は自転と月の引力によって生みだされ、海流は太陽からの膨大なエネルギーによって生みだされており、潮汐・海流は宇宙が存在する限りは、絶えることがない恒久的なエネルギーであり、特に日本の場合は、国土面積は小さいものの、領海と排他的経済水域を合わせると世界第9位の面積を持っており、海流エネルギーを使わない手はありません。
そこで、今回は、潮流・海流による発電への世界各国の先進的な取組みを紹介します。
*潮流とは、潮汐現象による流れのこと。潮位差はあまり大きくなくても海峡などのように海底地形が狭まっているところでは流れが速くなる。
*ソフトエネルギーから引用させていただきます。
2025年に電力の90%を再生可能エネルギーへシフトさせる目標を掲げたニュージーランド
エネルギー政策を強力に推進しているニュージーランドは、火山国でありプレート境界に位置する島国なので原子力発電は行っていません。その代わりに、豊富な水資源による水力(6割弱)、地熱(約1割)、その他、風力、太陽光などの再生可能エネルギーによって、既に2010年段階で電力の74%を賄っており、この目標は十分に実現可能な範囲にあると見られています。
その中で
2011年3月に「ニュージーランド政府、カイパラ湾の200MW潮汐力発電所の建設を承認」が発表されました。
広域場所は、ここを見てください。
発電所はカイパラ湾の入口にあり、大きな潮流が発生する場所で想定されています。
ズームアップするとこんな感じです。
記事によると
「クレスト・エネルギー Crest Energy 社のカイパラハーバー Kaipara Harbourにおける200MW潮汐力発電所の建設は、まずは3基の実証機を取り付け、発電、周囲の環境などの影響をさらに観察しながら、慎重に進める方針であるということです。クレスト・エネルギー Crest Energy 社が導入する、潮流発電機は確定ではないようですが、番狂わせがなければアメリカのシアトル近郊への導入が決まっているOpen Hydro オープンハイドロの約30フィート(9m)の回転翼をもった潮流発電機の採用が有力です。」
ニュージーランドは、豊かな湾岸を利用して潮流発電を展開しようとしているのですね。
さらにアグレッシブなのは英国、なかでもスコットランドが一歩先んじています。
スコットランド、2020年の再生可能エネルギーの導入目標を100%へと引き上げ
スコットランドは、すでに1/4以上を再生可能エネルギーによりまかなっている実績を積み上げ、今後5年間で風力に加え、海洋エネルギーやバイオマスエネルギーなどの導入計画を推し進め、今回の100%という高い目標を達成しようと計画しているのです。
画像の確認
「スコットランドは、法制度、教育制度などイングランド、ウェールズ、北アイルランドなど国家としてのイギリスを構成する他の”カントリー”とは別のしくみをもっているということで、同国についてはせいぜい映像や文章からの知識しかないので、なかなか理解しにくいです。そのスコットランドは、グレートブリテン島の三分の一程度の面積に3百万人程度の人口をもっているということです。このイギリスの一地域のスコットランドは、再生可能エネルギーに非常に熱心で、イギリスの再生可能エネルギーの情報をたどっていると、スコットランド関連の情報によく出会います。
同じ島国とはいえ、日本とは国のなりたちからしてまったく違うイギリス、多様性や地域の自治という意味では、参考にならないかもしれないが、それでも島国としてそこに存在する再生可能エネルギーを利用し、それをつながりとして育て外国も巻き込んだ海のスマートグリッドを育てようとしている。それは、ノースシー・グリッドと呼ばれ、まずは海洋エネルギーの中で洋上風車群をつなぐ計画です。将来的には、同じく積極的に研究開発を進めようとしている波力・潮流などを加え、ノースシー、北海の中でエネルギーのポテンシャルをヨーロッパの同エネルギーに占める割合を25%と読み、スコットランドの海中の送電網を経由して、エネルギーを輸出することを真剣に考えています。」
その中で、
「オイスター潮流発電装置 Aquamarine Power社OYSTERAR(R)hydro-electric wave energy converter、実証運転を開始」が発表されました。
システムはこのYouTubeでご覧ください。
そして、本体はこんなに大きいものです。
記事によると、
「海中(深さ10-16m)の岩に固定されたオイスター本体は、発電時には立て、荒天の時などは海底に格納できます。波の動きで適度な浮力を与えられたフラップと呼ばれる部分が振動し、その振動をダンパーに伝え送圧管の水を循環させます。ポイントは、送圧管の先の発電部分は陸上に置くことができる点です。これにより、メンテナンスの手間と、それにかかるコストを削減できるということです。結果稼動率を高く保つことが期待できるということです。
将来的には、1基2MWのオイスター潮流発電装置を20基導入し、9000戸分に相当する電力を発電する計画ということです。」
壮大な計画ですね。
同じ英国のウェールズでも、
『マリンカレントタービン Marine Current Turbines、2015年にウェールズに7基合計10MWの潮流発電所建設へ』のように、潮流発電に積極的です。
英国は、将来的には北海油田に匹敵するものとして、海洋エネルギーの分野で世界をリードしています。
それを政策的に後押しするため、公的資金でEMEC(欧州海洋エネルギーセンター)を整備し、実証試験のための海洋空間利用に伴う漁業調整や各種法規制、自然環境に与える影響評価などの調整を容易にしています。
こういう背景があるから、英国はアグレッシブな取組みができるのですね。
引き続き、近くの韓国です。
次々に海洋エネルギーを利用した発電を推進する韓国
2008年3月には『韓国で世界最大の潮流発電所建設計画が始動』
「韓国の電力会社”KOREA MIDLAND POWER”社が、完成すれば世界最大となる300MWの潮流発電所を建設する計画を推進しています。イギリスのLunar Energy社と韓国の電力会社 KOREA MIDLAND POWERが契約し計画を発表しました。計画では、2008年中にはテストプラント1基の設置を開始し、2009年3月に本格稼動。さらに、このテストプラントの実験を経て、2015年の12月までに300基、300MWの堂々たる潮流発電所の建設計画です。」
2009年5月には『韓国のウルトルモク1MWの潮流発電所が建設されました』
「アナウンスによると、1MWクラスのパイロットプラントを建設したということです。韓国が成功することで、いい刺激にもなりそうなので、是非成功していただきたいと思います。珍島郡(Jindo)ウルトルモク(Uldolmok)の珍島大橋周辺に建設されたようです。今後この地域で、2013年までに90MWの規模で、そしてさらに大規模な潮流発電所の建設を、これらの経験を踏まえて、拡大していこうとしているようです。」
韓国は、総延長17,200kmの海岸線、国土面積の3倍を越える広大な大陸棚を精力的に活用しようとしているのです。
そして、日本です。
海峡での実験を試行する日本
欧米諸国が海洋エネルギーの技術開発を戦略展開している中で、太陽光発電に特化した政策をとっている日本はこの分野での立ち後れが指摘されていますが、民間から新たな取り組みがでてきています。
独自システムで潮力・海流発電の事業化を狙うノヴァエネルギー
この海流発電所の構想は次のようなものです。(ノヴァエネルギーHPから)
【1ユニット2000Kwhの発電力】
海流発電所1ユニットは長さ120mの垂直に延びた大型のブイに500kwhのプロペラ4基を取り付け、一ユニットの発電力2,000Kwhとした海流発電装置です。この装置を200ユニット、2km四方の海洋に設置する事により400,000Kwhの発電プラントを建設することが可能です。
【独自開発の垂直ブイ】
独自開発の垂直ブイは重りとバラストで重力と浮力を調整し、ブイ本体の喫水を決め、海底にアンカーで固定する。台風等外部要因による波などの影響は水上20mと海中20m位までの為、水中下100mでは常に安定した水の流れが確保できます。
【ヘリポート付きコントロールハウス】
垂直ブイの水上上部(20m)に設置したコントロールハウスには、2MWの発電機、油圧モーター、電力コントロールパネルなどが保管されています。ハウスは流線型をモデルに海上波浪、強風による力を極力受けない様に設計しております。 上部をヘリポートとし、内部機器のメンテナンスはヘリコプター輸送によって行います。
【発電原理】
本装置はノヴァ研究所独自開発の水流プロペラタービンを海流(3~4knotsノット)により回転させ、その回転力を低回転大出力の完全無漏 油圧ポンプで圧力変換、ホースにより動圧を上部海上ハウスに送り、油圧モーターにより発電機を回転させ電力を得るものです。油圧は静圧となってプロペラ側油圧ポンプに戻ります。
2010年6月から淡路・岩屋沖で実験を始めたが、潮流発電タービンが流出する事故がありましたが、次のステップでは明石海峡大橋の橋脚での実験を計画しています。
MW級海流発電を試行するエンジニアリング振興協会
これは、流体力学を応用して、均質の薄板を曲げて製作することで軽量化かつ大型化をはかることができる『ループ型タービン』を活用して、海流発電機としては世界最大級(2MW)の開発をしようとするもので、今後実証試験の実施を計画しています。
その他、徳島・鳴門海峡、愛媛・来島海峡、福岡・関門海峡、青森・津軽海峡などの強流域で潮流発電の実験が行われています。
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日本と同じく海岸線が長くて急峻な国々での潮流・海流発電の試みをみてきましたが、比較的陸地に近く、海底が浅いポイントでの潮流の利用が主流となっているようです。
次回は引き続き、「波力発電」の新たな試みを紹介します。
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