トリウム原発に騙されてはいけない!! 2~トリウムなら大丈夫って本当?
画像はwired vision さんからお借りしました
みなさん、こんにちは!
前回の記事『トリウム原発に騙されてはいけない!!1~ウランとトリウムって何が違うの?』では従来のウラン原発とトリウム原発を「生成物」と「炉の構造」について比較し、一般に言われているトリウム原発の利点や今後の可能性を提示しました。
今回の記事『トリウム原発に騙されてはいけない!!2~トリウムなら大丈夫って本当?』では、良いことばかりが詠われているトリウム原発…でもそれって本当に大丈夫?という点を、現状発生している原子力発電の問題をまじえて整理していきます。
本題に入る前にいつもの をお願いします!
ありがとうございます
☆☆☆トリウム原発だってウラン原発と同じ「原子力発電」
前回掲載した記事から、トリウム原発は従来のウラン原発と「炉の構造」や「使用する核燃料」が異なり「プルトニウムが発生しなくて安全」なことや「放射性廃棄物が少ない」「エネルギー変換率がよい」ということが分かりました。
しかし、「炉の構造」や「使用する核燃料」がいくら違っていても、トリウム原発も原子力発電であることに変わりはありません。
そして、原子力発電である限りは必ず放射性廃棄物が発生するのです。
下の表は核反応物が同質量の場合に発生する生成物の質量を比較した表です。
確かにプルトニウムは発生していませんが、他の核分裂生成物が発生しており、その質量合計はウラン燃料の場合より多いことが分かります。
これまでプルトニウムが発生することの問題点は、核兵器への転用が容易であることや体内で内部被曝しガンになる恐れがあることでした。
しかし、実際にはそれ以外にも核分裂生成物は発生し、それらはプルトニウムと似たような毒性を持っています。
「プルトニウムが出ないから安全」というのは、トリウム原発を正当化するための詭弁なのです。
☆☆☆放射性廃棄物は半永久的に残り続ける
原子レベルの分裂によって生じるエネルギーは、自然界を見てみると「太陽や惑星、宇宙の誕生」のように時間的にも「宇宙スケール」の物質循環系を巡るものです。
それを地球上の生物循環系に無理やりあてはめると、時間的にもスケールが違うため結果的に我々にとって猛毒の「ごみ」として長期間残ってしまうのです。
では、その猛毒の「ごみ」、放射性廃棄物の処理は実態としてどうなっているのでしょう。
☆処分されずに、たらい回しにされる放射性廃棄物
原子炉から出た使用済核燃料は、まず原発敷地内の貯蔵プールで4年~5年間冷却した後で再処理することになっており、平成20年度末で200リットルドラム缶に換算して62万4,309本(保管面積にして約74万平方メートル)の使用済核燃料が、それぞれの原発敷地内の貯蔵プールで保管されています。
それぞれの原発敷地内における貯蔵量の限界が迫っている使用済核燃料は、各地の原発から、茨城県東海村の日本原子力研究開発機構の再処理施設および、青森県六ヶ所村の日本原燃の再処理事業所(再処理工場はまだ試験運転の段階)へと搬送されています。
平成20年度末現在、東海村の再処理施設には、200リットルドラム缶に換算して81,913本の使用済核燃料が、六ヶ所村の再処理事業所には、200リットルドラム缶に換算して22,375本の使用済核燃料が保管されています。これらはいずれも、「燃料プール」と称される施設に入れられています。
また、処理しきれない使用済核燃料を、一時的に(最長で50年程度)保管するための「中間貯蔵施設」(リサイクル燃料備蓄センター)が青森県・むつ市に平成24年に開設される予定になっています。
この施設は、建屋2棟(1棟の敷地面積は約7,800平方メートル)に最大5千トン(金属キャスク288基分)の使用済核燃料を貯蔵する計画ですが、その後の搬出先については目途が立っていない状況です。
つまり、現状では、再処理サイクルが未完成のため、廃棄物の循環が止まっている状態になっており、それぞれの原発敷地内の保管場所で溢れた使用済核燃料を、「“再処理施設”という保管場所」へ引越ししている状態になっています。
『次代を担うエネルギー・資源 トリウム原子力発電11 ~地球の物質循環から切り離された廃棄物の増量→蓄積の危機~』より
青森県六ヶ所村 日本原燃の再処理施設
日本原燃さんからお借りしました
☆“再処理”=プルトニウム回収
”再処理”というと核廃棄物を再度処理して、それこそ処分することだと思ってしまいますが、実は“再処理”とは、“核廃棄物の中から、ウラン、プルトニウム、その他の放射性核分裂生成物とを分離して、プルトニウムだけを回収すること”なのです。
そして残りの核廃棄物は”最終処分”つまり“全て”地中埋設してしまうのです。
『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電8~“再処理”とはどういうことなのか?~』より
既に放射性廃棄物の貯蔵量は膨大な量になっていて、それらを保管する場所はパンク寸前なのです!そして放射性廃棄物の再処理の実態は「プルトニウムの回収」で、放射性廃棄物を無害化したり安全に処分することではないのです!
最も重要なことは…
量の違いはあるものの、トリウム原発も放射性廃棄物の処分を巡る問題はウラン原発と同じ構造だということです。
☆☆☆原発は最終的に社会活力、みんなの生きる場を閉塞させていく
☆地球の物質循環から切り離された廃棄物が閉塞空間を生み出す
石炭・石油といった化石燃料は、炭酸ガスに変わって大気中に放出され、それを植物が吸収して光合成に使います。それを草食動物が食べ、草食動物を肉食動物が食べ、やがて死んで微生物に分解され…と、最終的には食物連鎖へと循環します。
それに対して、放射性廃棄物は地球の物質循環から切り離されています。核分裂が進み、放射能がなくなるまでの数万年~数億年もの間、分解されることなく残り続けるのです。
しかも、原子炉を作って50年もすれば原子炉を廃炉することになり、原子炉を解体した際に出る放射性廃棄物が急激に増えることになります。こうして増え続ける放射性廃棄物の行き場がなくなれば、廃炉になった原子炉を解体することなく、原子炉ごと周囲を立ち入り禁止区域にすることも想定されます。
いずれにしても、人間の使える土地が地球上からどんどん減っていくことになります。これが、原子力発電の最大の問題点なのです。
『次代を担うエネルギー・資源 トリウム原子力発電11 ~地球の物質循環から切り離された廃棄物の増量→蓄積の危機~』より
☆原子力発電によるエネルギー供給の背後で、社会活力の衰弱が進行する
放射性廃棄物は、無害化するまでの途方もない期間、人間の暮らす空間から隔離しておかなければなりません。放射性廃棄物が増えて蓄積されるということは、「隔離された閉塞空間」が地球上に増え続けることに他なりません。
それは同時に、その様な閉塞空間で核のゴミを管理する人間を増やすことを意味します。その様な息苦しい管理社会で、社会の活力が生み出されることはありません。つまり、効率だけを考えて原子力発電を続ければ、確かに目先のエネルギーを得ることはできますが、それと引き換えに急速に閉塞空間が増えていき、社会活力の衰弱が進行していくのです。
『次代を担うエネルギー・資源 トリウム原子力発電11 ~地球の物質循環から切り離された廃棄物の増量→蓄積の危機~』より
放射性廃棄物は、無害化するまでの途方もない期間、人間の暮らす空間から隔離しておかなければなりません。逆を返せば、途方もない期間、人間の暮らす空間が隔離されなければならないのです。
福島原発の事故以来、私たちはまさにこの状況に置かれようとしているのではないではないでしょうか?
放射性物質拡散による汚染の拡大はもはや無視できない程ひどいものになっています。
現場の作業員は極度の緊張のなか作業をしています。本人たちはとてもじゃないけど活力はでないし、周りも活力がでませんよね。
さて、今回の記事『トリウム原発に騙されてはいけない!!2~トリウムなら大丈夫って本当?』では、一般に言われているトリウム原発の利点「プルトニウムが発生しなくて安全」や「放射性廃棄物が少ない」「エネルギー変換率がよい」ということが本当なのか?大丈夫なのか?という点を扱いました。
結論として言えることは…
「プルトニウムが発生しなくて安全」「放射性廃棄物が少ない」「エネルギー変換率がよい」といった目先の利点に騙されてはいけない!
ということです。
いくら「炉の構造」や「使用する核燃料」が異なっていても、「放射性廃棄物の処分を巡る問題」や「社会の活力、みんなの生きる場を閉塞させていく」根本的な構造は従来のウラン原発とまったく同じです。
トリウム原発も含めた原子力発電とは、動植物も含めた生命の活動を根本的に破壊してしまう危険なものなのです!
では、このようなトリウム原発を含めた原子力発電が注目されている背景には何が隠されているのでしょうか?
それでは次回「一体、誰のための原子力発電なのか」をお楽しみに
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