2010-08-21

『マグネシウムエネルギーは次代のエネルギーになり得るか?第7回~薄い自然光をどうやって濃密な光にするか~

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地球上のエネルギーの源である太陽エネルギーを利用することは、これからの新エネを考える上では必要不可欠です。これまで科学反応を起こす高温状態を作るには、大量の化石燃料を必要としていたが太陽エネルギーを原資に、マグネシウムをも還元させる2万度という高温を作り出す太陽光励起レーザーが、もし本当に実用化できるなら、化石燃料に代わって太陽をエネルギーとするこれからの社会像は可能性を帯びてきます。
その点で、太陽光励起レーザーの実現性は、マグネシウムの還元に関わらず大きなカギになってくると思うが、薄い拡散した低密度の太陽光を、どうやって高密度のエネルギーに変えているのかを今回調べてみました。
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 自然状態の太陽光 
そもそも、自然状態の太陽光エネルギーはどんな状態か。
太陽光の波長は、短波長の宇宙線からγ線~X線~紫外線~可視光線~赤外線~電波(マイクロ派や短波等・・)と色んな波長が混在した光となっています。地球に到達する光の量は図のように波長によって異なっていて、紫外線~可視光線~赤外線でその殆どを占めています。その中でも、可視光線の波長域(380nm~780nm)が最も分光放射照度(平たく言えば単位面積あたりの光のエネルギー量)が大きくなっていることが分かります。
太陽光は生物にとってエネルギーの源なので、生物はその最もエネルギー量の大きい波長域を利用できるように進化してきました。だから人類は380nm~780nmの波長域を可視できるようになったのですね。もちろん生物によっては可視領域が異なります。夜でも虫が寄ってこない低誘虫灯というのがありますが、人間には見えるけど、虫には見えないという、可視領域の違いを利用しています。
Solar_Spectrum_jp.jpg
<放射照度と波長の図>画像はこちらからお借りしました。
これらの波長が地表面に降り注ぎ、生物はそのエネルギーを元に生命活動を営んでいます。
これを単位面積あたりの熱量でいうと0.1W/cm2となります。

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太陽光は総量では膨大なエネルギー量ですが、色んな波長が色んな方向に拡散しているため、そのままでは薄く拡散した状態として地表面に降り注いでいるといえます。でも、こんな小さな熱量でも植物は光合成を通じて還元反応を起こしているのだからスゴイですね。 大きな熱量がないと還元反応を創れない科学技術は、まだまだ生物が作り上げた仕組みの足元にも及んでいないのかもしれませんね。生物の仕組みを学ぶ理由はここにあります。


 虫眼鏡の原理 
そんな色んな波長の太陽光を、高密度な使えるエネルギーにするにはどうすればよいか。まず一番身近なのは虫眼鏡による集光。子どものとき虫眼鏡で光を集めて、黒く塗った紙を焼きませんでした 😀 虫眼鏡で光を集光すると、単位面積あたりの光のエネルギー密度は高まります。でも、集光できる光は同じ波長の光しかダメというのが虫眼鏡の限界でもあります。
というのも、光はガラスに当たると、そのガラスの形状に応じて光の速度が変わり、屈折する性質をもっており、この屈折の原理を使って、光を一点に集光するのが虫眼鏡です。この屈折の方向は光の波長によって変わるので、同じ虫眼鏡を通して一点に集光しているのは同じ波長の光のみで、他の波長はその波長ごとに色んな焦点を結ぶ事になります。プリズム現象ですね。
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これは何を意味するかというと、虫眼鏡で集光できる光のエネルギーは、同じ波長の光に限られていて、その他のエネルギーは集められないということ。これが虫眼鏡の限界。単位面積あたりの熱量にすると、1000W/cm2になります。自然状態の1万倍ですね。ちなみに、集光鏡を使って鶏肉を焼いている店もあるとか・・ 🙄

 励起レーザー 
さて励起レーザー。自然状態では0.1W/cm2、虫眼鏡では1000W/cm2。励起レーザーでは結論からいうと100,000W/cm2になるようで、自然状態のなんと100万倍! 。逆に言えば100万倍にまですることで漸く2万度の温度で酸化マグネシウムを還元できるようですが、なんで、こんなことが出来ているのか?その鍵は光の位相を揃えるところにあるようです。
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位相を揃えるというのは、波長の長さも振幅も波形の基点も全て同じ光の波長になるということで、簡単に言えばキチッと整列した光になるということ。自然状態では前段でも述べたように、色んな波長の光が多方向に拡散しているので密度は薄いですが、レーザー媒質から発せられる光はキチッと整列しているので、小さい面積の中にたくさんの光が入ることができます。しかもみんな同じ波形なので互いが干渉することなく余すことなく集光することができる。言うなれば、自然状態では色んな体格の人間が色んな方向にパンチしているのに対し、レーザーを通すと同じ体格のたくさんの人間が一点に同時にパンチしていくイメージでしょうか。軍隊みたいですね。その密度が虫眼鏡の100倍、自然状態の100万倍ということです。
厳密には量子力学で説明できると思いますが、多分ちゃんと解ってないとややこしくなるだけで、レーザー光はまずはこの程度の理解でよいのかもしれません。

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さて、そんなマジックみたいなことができるのがレーザー媒質ですが、どんな事がその中で行われているか。もうちょっとだけ次回突っ込んでみたいと思います。

List    投稿者 nannoki | 2010-08-21 | Posted in E06.マグネシウムエネルギー3 Comments » 

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コメント3件

 しょう | 2011.07.26 16:47

単位が大きすぎるため、全く想像もつかない状況ではありますが、過去4ヶ月間の100万倍の放射能が放出されても、全体の3%の放出量にしか過ぎない訳ですよね?
勿論、瞬時にそれだけの放射能が放出されるリスクはとても低いとは思います(願います)が、果たしてそのような性能を抱えた建屋内で、
・いくら東電社員や関係会社の人とは言え、人間が作業をして良いものだろうか?
・いつになれば建屋内での本格的な作業が出来るのか?
などなど、色々と心配になってきます。
一部の人間が甘い汁を吸いたいがために導入されてしまった、本当はなくても良かった存在。(実際、あってはならない存在ですが)
地域住民のみならず、東電社員、及び関係者も不幸だと思います。
菅首相の言う、回生エネルギーだったでしょうか。
具体的な事は何も考えてないんでしょ?
支持率アップのためのパフォーマンスなんでしょ?
など思ってしまいますが、例え国政レベルの考えはそうであったとしても、民間はその流れを汲んで進むべきではなかろうか?と・・・少なくとも私はそう感じます。

 tutinori | 2011.07.27 15:14

>しょう様
すみません。一部計算に間違いがあり、修正しました。(※大気放出率)
最終的には317万テラベクレルなので、先日までの数字からは少し下がりましたが、しょう様の言う通り、現在の100万倍放出しても3%に過ぎないことには変わりません。
>例え国政レベルの考えはそうであったとしても、民間はその流れを汲んで進むべきではなかろうか?と・・・少なくとも私はそう感じます。
私どもも同感です。マスコミの情報が少なくなっていくのに比例して大衆側の意識も薄れてきているように感じている今、まずは事実情報の共有が急がれると思います。

 しょう | 2011.07.29 17:17

その規模の中では誤差とも言えない程度の誤差修正ですね。www
でも誤りに気付いたら、直ちに修正されるという真摯なお姿が、読む立場の私には安心感を与えてくれます。
「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、何らかの理由ですぐ実行に移せないのならば、せめて「鉄が熱いうちに打てないなら、せめて熱い状態を維持して」と言いたいです。

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