2010-06-12

『マグネシウムエネルギーは次代のエネルギーになり得るか?第4回~マグネシウムエネルギーの利用法』

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マグネシウムの燃焼
写真はこちらよりお借りしました
『マグネシウムエネルギーは次代のエネルギーになり得るか?第3回~マグネシウムのエネルギー量』に続き、シリーズ第4回目。
今回は、マグネシウムエネルギーをどのようにして利用するのかを、矢部孝教授の著書である『マグネシウム文明論』を参照しながら、紹介していきます。
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まず、マグネシウムからエネルギーを取り出す方法は大きく分けて2つあります。
①マグネシウムを燃やす
②マグネシウムを電池の燃料として使う

①は、文字通り石炭のようにマグネシウムを燃やして使うというもの。現在火力発電所で燃やしている石炭の代替品として使うなどの使い途があります。
石炭との違いは、燃やしたマグネシウムを再びマグネシウムに還元して再利用出来るという点です。
海中に無尽蔵にあるとことを前提としている点も、大きな違いですね)
②は、マグネシウムの他の物質との化学反応エネルギーを直接電気エネルギーに変える、というもの。
電池というと、多くの人はリチウム乾電池などがすぐ頭に浮かぶのではないしょうか?
乾電池や充電池というのは、その本体中に電気を蓄える性能を持っています。それに対し、ここで紹介する『燃料電池』は、燃料を入れると化学反応によって発電を行う、一種の発電機のような性能を持つと考えてよいでしょう。
矢部教授が提唱するのは、金属の酸化反応時の化学反応エネルギーを電流に変換する、『金属空気電池』です。
この電池は、
①爆発の危険性の高い水素を発生させずに電気を取り出せる
②正極活物質が金属である燃料電池に比べ、空気電池は正極活物質が空気中の酸素であるため、エネルギー密度を高めることが出来る

という特徴があります。
一般的な電池と、金属空気電池を図式にあらわすと、以下のようになります。(『マグネシウム文明論』を参照)

マグネシウム空気電池の反応式
負極:2Mg           → 2Mg2+ +4e- (-2.363V)
正極:O2+2H2O+4e-   → 4OH-      (+0.401V)
全反応:2Mg+O2+2H2O → 2Mg(OH)2↓   (起電力:2.764V)
 
画像はこちらからお借りしました
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一般的な電池では、マイナス極の活物質(電気を起こすもとになる物質)が電子を放出(酸化)し、プラス極の活物質がその電子を受けとって還元されます。一方、空気電池では、プラス極の活物質として空気中の酸素を取り入れて使います。プラス極の物質が必要なくなりますから、従来型の電池に比べて圧倒的にエネルギー密度を高められるのがおわかりでしょう。
マグネシウム空気電池において、マイナス極の活物質として用いられるのは、当然マグネシウムです。
プラス極の酸素とマイナス極のマグネシウムが反応すると酸化作用が起き、電気エネルギーを得られます。あとに残るのは酸化マグネシウムです。
(『マグネシウム文明論』より引用)
*******************************
マイナス極に使うマグネシウムを交換可能にすることで、空気電池が燃料電池になる、というわけです。
ちなみに、マグネシウム空気電池における『電子を受け取っている電極』の正体は、残念ながら明かされていません。
矢部教授はこの電池のさまざまな利用法を提案しています。
まずは自動車。マグネシウム空気電池を使って、例えばガソリンを入れるのと同じ感覚で、マグネシウムを燃料として入れ換えながら走る自動車がつくれます。
矢部教授の試算では、20キログラムのマグネシウムの搭載で300km程度走ることが可能とのこと。そのほか、現在電気や石油を使って動いている交通機関は、すべてマグネシウムを燃料源に置き換えられる可能性があります。
たとえば、鉄道は、現在は送電線から供給された電気によりモーターを動かしていますが、これをマグネシウム空気電池に置き換えます。すでに鉄道網の構築された都市では、火力発電所の燃料をマグネシウムに換え、その電気によって走らせるということになります。
また、船舶にもマグネシウム空気電池を搭載することが出来ます。矢部教授のアイデアでは、太陽光励起レーザーを人工衛星を経由して航行中の船を狙い撃つことで、マグネシウムを積み換えることなく長距離の航海を可能にするといいます (但し、現在の日本では大気中で大出力レーザーを照射できないので、法律の整備が必要です。)
もっと小型の電子機器 にも利用できます。
金属マグネシウムをカートリッジ状にして入れ換えられるようにし、電池の販売店で酸化マグネシウムを引き取って再利用するというサイクルが可能です。
マグネシウムの可能性を、さらに感じて頂けましたか?
金属空気電池は、マグネシウムのほかに、亜鉛、アルミニウム、リチウムなどを用いた研究が進められています。リチウム自体のエネルギー密度はマグネシウムよりも高いため、リチウム空気電池が実現できたとすれば、マグネシウム空気電池よりも高出力が得られるのは確かです。
この点について、マグネシウムは海水中に無尽蔵にあること、レーザーを用いて低コストで再生できることなどを総合して、リチウムに比べ優位性があると矢部教授は述べています。
実際に燃やすこと・電池として使われることを考えた場合にも、やはりマグネシウムを利用する主なメリットは、
◇海水中に潤沢に存在すること
◇太陽光励起レーザーによって還元し、再利用できること

の2点に絞られそうです。
また、地球温暖化問題の真相は別として、二酸化炭素を排出しないことも、化石燃料との違いとして挙げられます。
では、このシステムの要となる太陽光励起レーザーとはどのような仕組みなのか?ベースエネルギーとしての実現性も、この技術にかかってきそうです。
次回、いよいよレーザー技術について、詳しく見ていきましょう

List    投稿者 kanae | 2010-06-12 | Posted in E06.マグネシウムエネルギー12 Comments » 

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コメント12件

 ジャギ様 | 2011.05.01 13:58

 あまりに性急に巨大なエネルギーを得ようとするのがそもそもの誤りなのでは?
 扱いやすく素性のいい同位体を使い関東以北の山中で「人工温泉」をつくり、半年くらいかけて温めた温水を、養殖・温室・工場・除雪に利用するのもありなのかと。
 スターリングエンジンは、豪雪地帯の「雪」の冷熱と併用するのが実用化の近道かと思います。
 

 satie | 2011.05.02 11:35

ジャギ様へ
コメントありがとうございます。
>扱いやすく素性のいい同位体を使い関東以北の山中で「人工温泉」をつくり、半年くらいかけて温めた温水を、養殖・温室・工場・除雪に利用するのもありなのかと。
同位体を用いた人工温泉、当方初めて聞きました。
原子力を用いるということでしょうか?
できれば参考になるサイトなどを教えていただけるとありがたいです^^
>スターリングエンジンは、豪雪地帯の「雪」の冷熱と併用するのが実用化の近道かと思います。
雪の冷熱と外気の温度差ではかなりの低温度差であるため、必要な熱効率と出力を得るのは難しそうですが、冷却用の水の変わりに用いるのはありかもしれませんね。

 雑草Z | 2011.05.02 15:58

 スターリングエンジンの実用化となるとやはりまだまだ色々な問題点があるのがわかりました。これまでガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関に負けてきたのも頷けます。
 しかしやはり本質的には内燃機関よりも優れていると思います。工場の排熱利用などコージェネや地熱の利用(温泉熱)には大きな可能性があると思いました。これからまた外燃機関が見直されると言う見通しは的確かと思います。
・・・と、ここで、気付いたのですが、地熱発電所では当然外燃機関が使われている筈ですね。蒸気タービンでしょう。どのくらい小規模になれば蒸気タービンよりもスターリングエンジンのほうが効率がよくなるのでしょうか?
 地熱はこれからかなり活用出来るクリーンなエネルギーの代表になると思っています。スターリングエンジンの活躍の場が出来そうです。
 
 

 satie | 2011.05.02 19:22

雑草Z様へ
コメントありがとうございます。
私は地熱発電についてはまだ詳しく調べたことがなかったのですが、天然に噴出する蒸気を用いるようですね。あくまで感覚ですが、蒸気であれば、そのままそれでタービンを回したほうが効率が良さそうです。
>どのくらい小規模になれば蒸気タービンよりもスターリングエンジンのほうが効率がよくなるのでしょうか?
前回の投稿の最後の方で、「蒸気スクリュ」をご紹介しましたが、そこにあるグラフを見ると、結構小さい規模でも、小さいとはいえそこそこの効率になっています(あくまで理論上の数値である可能性が高いですが)。
タービンは正直あまり詳しくないのですが、
タービンの代わりに風力発電の風車で考えると、
風のパワーは断面積に比例するため、風車の直径が2倍になると得られるパワーは4倍になります。
また、風のパワーは風速の3乗に比例します。
このように、規模、風速に対して得られる出力が指数関数的に増加していくため、より規模を大きくしたほうが効率もよくなるという仕組みなのではないでしょうか。
地熱は安定した電力供給としてポスト原発の有力候補ですね。
穴を掘って熱を逃がすことになるので、地震を誘発したりしないのかな?逆に地震を減らす効果があるのかな?など疑問は残りますが。

 ジャギ様 | 2011.05.02 21:03

 天然の温泉はマグマの地熱だけでなく、岩石に含まれるラジウムやウラン、ラドン、カリウム40などの放射性同位体によって地下水が温められたものです。
 要は臨界状態にならなければ、だらだらとパーマネントな「熱源」として利用できるのです。
 「人工温泉」の有力候補は劣化ウランとラドンガスでしょう。
 特にラドンはウランの300万倍のα線を出すので、圧縮してボンベに密閉し、断熱容器の水槽に沈めておけばじわじわと水を温めてくれます。
 脱原発社会は逆説的ですが、数十万人の核技術者が高度な職業倫理と高いモチベーションを維持しないと実現しないのです。 

 satie | 2011.05.02 23:22

ジャギ様へ
早速のご返答ありがとうございます!
原発のような超高温ではなく、低温でじわじわ温めるということですね。
>特にラドンはウランの300万倍のα線を出すので、圧縮してボンベに密閉し、断熱容器の水槽に沈めておけばじわじわと水を温めてくれます。
もしボンベが爆発したり、漏れたりしてα線を出すラドンを吸い込んでしまうと、危険な内部被曝をしてしまうのではないでしょうか?(間違っていたらごめんなさい。)

 ジャギ様 | 2011.05.03 9:38

 地球は縄文時代より前から、海に行っても、温泉地へ行っても家で寝ていても自然放射能にまみれています。
 自然放射能が身体にいいわけではなく、極端に体内半減期が短いように生物が体内物質循環や寿命を進化の過程で形成したからです。
 別に日本をガボン大地にする訳ではないので、常識的範囲であれば目くじらをたてることもないかと。
 一方で、今回の震災で個人も企業も「資産」や「資本」の在り様に、根本的な疑問符がつけられたと思います。
 公共インフラにエネルギーと物流を委ねていたら「生存できない」という事実は、従来のスキームから「一身の独立が一国の自尊」に繋がる気づきとなり、家庭や企業でエネルギーや危機対応能力を「公共財」として備える動きを加速することでしょう。

 guyver1092 | 2011.05.03 21:06

 はじめまして。「雑草の言葉」からたどってまいりました。スターリングエンジンは玉石混交ですね。私は、このような代替になるシステムは、素のコストで既存のシステム並みでないと役に立たないと考えています。太陽熱発電は、コスト的に太陽電池並みの発電コストとのことなので、素直に普通の石油火力発電をしたほうが却って石油の消費が少ないのではないでしょうか。エネルギー産出比的にも同じと考えます。
 木質バイオマス発電ですが、スターリングエンジンと言うよりは、木質ペレットに問題があるようですね。ペレットに加工する段階で無駄(エントロピー)が発生し、石油火力発電より高コストになっているように受け取れます。木質ペレットにこだわらず、ゴミの焼却熱利用とすれば、自治体のごみ回収、焼却コストと相殺することで、社会全体では意味があるかもしれません。
 工場廃熱利用についてですが、紹介の会社とは別の会社の製品についてニュースを見つけました。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/HONSHI/20091130/178167/
 紹介の会社も、出力あたりのシステム単価が同じぐらいの製品であれば、十分意味のある製品と考えます。
 地熱発電については、温度差により、モノになるかどうかが決まってくるでしょう。あまり温度差が低いと、発電量に対して、製品のシステム代が高すぎるという事態になりかねません。
 家庭用コージェネについてスターリングエンジンの値段と熱効率の問題と考えます。ガスを使うというなら、すでにガスエンジンがあるのですから、普通のガスエンジン以上の低コストで、熱と電力を供給できるかが問題と考えます。言いかえると、スターリングエンジンにするメリットは何かということです。都市ガスはきれいな燃料なので、内燃機関でもシステムを作れます。燃料を選ばないスターリングエンジンにする意味が何かということになります。先ほどの木質バイオマスで言ったようにゴミも燃やすとすれば、意味があるでしょうが。

 satie | 2011.05.07 0:01

ジャギ様へ
ご返答ありがとうございます。
>一方で、今回の震災で個人も企業も「資産」や「資本」の在り様に、根本的な疑問符がつけられたと思います。
同感です。
「お金を出して買った自分のものだから、どうしても構わないんだ」という意識が、無駄な消費や、環境破壊を生んでしまっていると思います。自然の恵みを分けてもらっている、貸してもらっているんだという意識に変われば、もっと物を大切にできるようになります。
guyver1092様へ
はじめまして。
コメントありがとうございます。
>太陽熱発電は、コスト的に太陽電池並みの発電コストとのことなので、素直に普通の石油火力発電をしたほうが却って石油の消費が少ないのではないでしょうか。エネルギー産出比的にも同じと考えます。
この小火力発電の目的は、大事なエネルギーを海外に依存してしまっている現状から脱し、「日本国内で自給自足すること」です。
なので、石油は使わないことを前提にしています。
>木質ペレットにこだわらず、ゴミの焼却熱利用とすれば、自治体のごみ回収、焼却コストと相殺することで、社会全体では意味があるかもしれません。
木質ペレットのコスト問題はまだあるようですね。ペレットにしなくても、薪や木屑、ゴミの焼却熱が使えるようになればいいですね。現状は、熱交換器にススがついてすぐにダメになってしまうのを防ぐために、間接的に熱を伝えているため、熱効率がさらに下がってしまうという問題があるようですが。
>都市ガスはきれいな燃料なので、内燃機関でもシステムを作れます。燃料を選ばないスターリングエンジンにする意味が何かということになります。先ほどの木質バイオマスで言ったようにゴミも燃やすとすれば、意味があるでしょうが。
その通りです…天然ガスだと内燃機関も使えますね^^
スターリングエンジンは、寒冷地で利用すれば、現在の内燃機関のコージェネシステムよりも高効率にすることができるそうです。

 金型屋 | 2013.02.09 19:44

 先月の、「プレス技術」を読みましたが、日立金属の高性能冷間工具鋼、SLD-MAGICのトライボロジー特性は凄いですね。微量の油をぬったセミドライ状態で、摩擦させるとまるで先端技術のDLCのような自己潤滑性が出るなんて。耐摩耗性も高いのでコーティング費用分コストパフォーマンスが良く、耐荷重能も2500MPaぐらいに高強度でいろんな転動・摩擦・摺動部品にも使えそうだ。

 塑性加工業 | 2013.07.04 22:41

先日、その高性能工具鋼SLD-MAGIC(S-MAGIC)の自己潤滑性とかいう話を日本トライボロジー学会で聞いたが、モリブデンとかカーボン、それにDLCコーティングなどの怪しげな論説とも整合し、油中添加剤の極圧効果にも拡張できる話は面白かった。そのメカニズムをひらたくいえば世界初かつ世界最小の本格的ナノマシンであるボールベアリング状の分子性結晶(グラファイト層間化合物)が金属表面に自己組織化されて、フリクションが良くなるということらしい。

 機械かじり | 2013.09.16 16:53

 たしかにこれをつかって、オイル交換フリーのエンジンなんか開発できるんじゃないの?つまりはオイルも半永久的に機能する”部品化”時代がやってくるかも。やっぱりオイル削減も地球温暖化への重要な対策だからね。

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