2008-08-30

『水資源』の危機!!どうする?-④:2.水資源の危機とは 2)水資源(淡水)の汚染

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WHOによると、安全な水を飲めない人の数は世界で11億人以上いるとされています。
これは世界人口のおよそ1/6にあたります 😮
ネットで「水汚染」を検索すると、衝撃的な画像や動画がたくさん出てきます。
特に、中国は赤く染まった黄河だったり、
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『北京週報』より
大量の魚が浮かんでいたり   %E5%AE%98%E6%A9%8B%E6%B9%96.jpg
『看中国』より
中国では、この30年ほど猛烈な勢いで工業化が進んでいます。
それに伴う中国の水汚染,健康被害は、日本の高度成長期の比ではないようです。
ここでは、中国に焦点を当てて、水汚染の実態を見ていきます

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中国では、都市の90%の地下水、河川、湖沼の水の75%が汚染されており、毎日7億人が汚染された飲料水を飲んでいます。(地方生活者3億人分の飲料水は安全でないという)
汚染の原因といえば、工業がまず思いつきます 🙄
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■工業による汚染
重工業は、中国の年率9.9% という経済成長の牽引役であり、「河川流域の工業の柱」として支持されています。 

・中国の製紙業は、2004年だけで31億8000万トンの廃水を水域に流しており、これは総排水量の14.4%にあたる。
・川岸の化学工場や発電所は、製紙工場や繊維工場や食品工場とともに、中国の河川や湖の主要汚染源となっている。今では、国内の河川湖沼の70%が汚染されていると推定される。
・中国最大級の工業都市である重慶市の中心街の水道水には、最近新たな国内規制によって飲料水から検出されてはならないとされた101種の汚染物質のうち、80種が含まれている。

 中国政府は、明らかな環境安全リスクを引き起こしている工場を厳しく取り締まり、川を浄化する努力を積み重ねてはいるものの、資金も専門家も不足しているため、進展は遅いのが実情です。
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『アジアの安全な食べ物』より
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汚水処理について
 汚染処理のためのインフラ整備は、深刻な汚染を防止し軽減するうえでもうひとつのカギを握る分野ですが、これも中国では立ち後れています。

・2004年に点検した結果、汚染企業の31.5%が最大許容量以上の排水を行っていることと、水処理施設の56.7%が稼働していないことがわかった。
・淮河(わいが)沿いでは、2005年末までに稼働する予定だった約85か所の水処理施設が、資金不足のためにいまだ建設されていない。いくつかの都市廃水処理施設では廃水処理の効果がなく、稼働していない所さえある。

世界的な市場拡大により、経済成長を目指して工業生産を拡大させると、農機具も工業化し、化学肥料・農薬の使用により農業生産を拡大させることが可能になり、また、必要にもなります。この工業化された農業によっても水は汚染されているのでしょうか?

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■農業による汚染
かつての中国では,水や養分などの供給が制限になって,作物単収(単位面積あたりの収量)がきわめて低かったが,中国政府は,化学窒素肥料,農薬,灌漑水の供給量を増やして,単収を飛躍的に向上 させてきました。
牧畜や養鶏をふくむ農業は、上水道および地下水を汚染する多くの無機・有機物質の発生源です。これらの汚濁物質には、農地の侵食からおこる沈殿物や、動物の排泄(はいせつ)物、市販の肥料などからのリンや窒素の化合物などがあります。動物の排泄物には酸素要求物質、窒素、リンが多くふくまれ、また病原体もしばしばすみついています。肥料から出る廃棄物は農地に残り、これらの物質をふくむ水が地表で流出したり土壌にしみこんだりして、表流水や地下水を汚染します。

・中国北部の北京、天津、河北省、および山東省では、1995年に調査した地点の半分以上で、地下水の硝酸塩濃度が健康のための基準値を超えていた。

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「中国の環境破壊」通商白書2005年版より
主要な河川の水質状況を見ると、近年においては、水質改善の傾向が見られるものの、人が直接接触することに適さないほど汚染された水域が、主要河川の6割以上の水域を占めており、全体的に、水質汚染はいまだに深刻な状況にあることが分かります:cry:
■汚染による健康被害
水中の窒素・リン等の栄養塩の濃度が高くなると、富栄養化によって赤潮や青潮が発生します。硝酸塩は、人間の体内で亜硝酸塩に還元され、メトヘモグロビン血症や発癌性物質の生成に関係すると言われ、飲料水・食品中の濃度が高い場合には人間の健康に悪影響を及ぼす疑いがもたれています。

・途上国では、安全な水の欠如が現在も病気や死亡の大きな原因となっている。
・汚染された水による下痢などで、子供を中心に年間300万人以上が死亡している。
・安全な水を利用できる人の数は1990年から2000年にかけて8億1600万人増加したが、人口もこれと同じくらい増加したため、利用できない人の数は約11億人から変化していない。適切な衛生設備がない人の数は同期間でわずかに増加し、24億人となった。

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他国では…
アメリカ・中国・インド
は3国で世界の穀物の半分を生産している農業大国であり、また、工業国でもあります。アメリカ、インドでも中国と同じように水汚染が問題となっています。

・地下水に大きく依存しているアメリカ中世部では、水道水からアトラジンというたった一種類の除草剤を除去するために、年間4億ドルを費やしている。連邦調査評議会によれば、アメリカでは今後30年の間に、汚染された地下水を初期浄化するための費用が約30万箇所で、1兆ドルに達する可能性がある。
・1990年代後半、インドの汚染対策中央評議会が22の主要な工業地域の地下水を調査した結果、すべて飲用に適さないことがわかった。
・インドのガンジス川とブラマプトラ川では、細菌と排泄物が多量に混入している。

また、農業国であるEU諸国のほとんどの国で水質汚染源の第1位は農業になっています。
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日本では…
硝酸汚染については,総件数の44%で汚染原因が把握されている。把握された原因は,施肥90%,家畜排せつ物37%,生活排水34%(施肥+家畜排せつ物が原因になっているケースが多いため,総計は100%を超える)で,約7割は農業が原因と推定されている。
以上から水汚染を図解化すると、以下のようになります。
 
    豊かな生活   →                生活廃水急増                →  
       ↓                           ↓
    工業拡大    → 工業廃水急増 → 廃水処理資金不足、インフラ整備遅延  → 水汚染  
       ↓                              
    農業の工業化 → 単収増大 → 化学肥料使用量増大 → 富栄養化       →
■『水戦争-水資源争奪の最終戦争が始まった』柴田明夫 著(角川SSC新書,2007年)
■『「水」戦争の世紀』モード・バーロウ、トニー・クラーク 著(集英社新書0218A)
■環境保全型農業レポート
■『中国の水危機』
■『中国の環境問題』通商白書2005年版

List    投稿者 satie | 2008-08-30 | Posted in I04.水資源の危機4 Comments » 

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コメント4件

 ザルにんじゃ | 2009.01.31 22:24

被子植物が圧倒的に種類が多い理由が分かりました。そういえば、普段私たちが口にしているのも、ほとんど被子植物ですね。でも、どうしてわざわざ人間や動物に食べられるような果実や種を作るんでしょうか。不思議ですね。

 匿名 | 2009.01.31 22:27

動物に比べて、種の拡散、遺伝子の変異促進を進めるのがずいぶん遅い感じですね。
そこが、動物と植物の適応戦略の違いでしょうか?

 leonrosa | 2009.02.02 12:33

ザルにんじゃさん、コメントありがとう!
稲も麦も被子植物ですね。
植物は、太陽の光と土壌の水・栄養素への適応が、第一義的な課題です。
そして、地上の乾燥環境。
だから、動物が食べる事に対しの防御は、二次的なものだと考えられます。
だから、植物は、「動物に食べられるかどうかは、考えていない」とも言えます。
また、動物の方がずっと機能高度化に長けていますので、対動物の防御は、ほどほどにしているとも言えます。

 leonrosa | 2009.02.02 12:55

匿名さん、コメントありがとう。
>動物に比べて、種の拡散、遺伝子の変異促進を進めるのがずいぶん遅い感じですね。
動物では、約5億5千万年前のカンブリア紀に、あらゆる動物形態が登場したと言われる様に、種の拡散と変異促進が起こっている。
それに対して、植物ではという事でしょうか?
>そこが、動物と植物の適応戦略の違いでしょうか?
植物と動物の生存基盤が、当然異なります。
植物は、基本的には、光、炭酸ガス、水、栄養素の存在状態が、外圧の主軸です。『自然外圧』です。
その意味では、太陽光が豊富で、炭酸ガス濃度も濃い地上が、植物進化のゆりかごです。
それに対して、動物では、捕食・被補足という『種間圧力』が登場しますね。(カンブリア紀)
カンブリア紀の意味①生殖過程への適応圧力
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=29753
植物の外圧は、自然圧力>種間圧力
動物の外圧は、カンブリア紀以降、種間圧力>自然圧力
以上のようになると思います。

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