『水資源』の危機!!どうする?⑬:3.水資源危機の原因は?2)市場第一の国際資本(グローバル企業)の戦略~世界支配の黒幕は?~
今回も 『水資源』の危機!!どうする?⑫:3.水資源危機の原因は?2)市場第一の国際資本(グローバル企業)の戦略~急成長している水市場~に引き続き、水道事業とその背後関係について調べてみたい。
『世界の〈水道民営化〉の実態: 新たな公共水道をめざして』より借用
水道民営化の時代であったともいえる90年代を経て世界各地で多くの水道民営化事業が推進された。しかし、水道というインフラ事業には多額の資金が必要となる。ここで、国際金融機関(世界銀行、IMF等)の協力が不可欠となってくる。ちなみに、世界銀行は1990~2002年の間に200億ドル、276件の水供給ローン案件を融資。その30%に水道民営化を義務付けており、その大半が1997年~2002年の間に集中している。では、その世界銀行が行なってきたこととは?
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■水の民営化政策の黒幕、国際金融機関
ウォーターバロン3社は、1996年「世界水会議」という組織をフランスのマルセイユに作り、国際連合や世界銀行などと手を組み、専門家を使って「水道事業は民営化すべし」という国際世論を作り上げていった。さらには、「上下水道部門を民営化しなければ、世界銀行が融資しない」という制度まで巧妙に作り上げている。また1997年から「世界水フォーラム」を開催し、専門家、政治家、NGOなどを通じて巧妙に国際世論を誘導してきた(これはさきほどの民営化融資の増加とも連動している)。
発展途上国は、水道インフラ整備を行なうにも投資資金不足のため外資が必要となり、援助を受けている立場的弱さもあって、国際金融機関(世銀、IMF)の条件を飲まざるを得ない状況にある。また、並行して「WTO(世界貿易機関)」によってサービス自由化(=外資への水道市場開放)への圧力をかけていく。
◆世界銀行の水政策=2001年に、世界銀行は融資の 50%に対して民営化を要求し、そのうち 80%でフルコストリカバリーを要求している。
◆IMF(国際通貨基金)の水政策=世界 40 カ国における貸付けに関するランダム・レビューでは、2000 年における 12 カ国とのIMF貸付け協定に水の民営化あるいはコストリカバリー(コストの全額回収)を義務付けている。
◆WTO(世界貿易機関)の動向=現在、WTO の GATS(サービス貿易一般協定)におけるサービス貿易自由化交渉の対象分野に水道サービスを含めることについて検討が行われている。サービス貿易が自由化されれば、その恩恵を一番受けるのはグローバル水企業である。水道サービスにおいても、多国籍企業が世界中で民営化事業を行いやすい状況になる。
<市場拡大停止以降の水政策>
1977年:国連水会議
1980 年代を「国際水供給と衛生の10 年」とする決定がなされた。
1992年:水と環境に関する国際会議(ダブリン会議)
世界レベルでの淡水資源確保を強く位置付けた。
1996年:世界水会議(WWC)をフランスのマルセイユに設立。
世界水フォーラムを主催。
2000年:第2回世界水フォーラム
「世界水ビジョン」と「行動のための枠組み」が発表された。
2003年:第3回世界水フォーラム(閣僚級国際会議)
「水に関するガバナンスと自助努力の強化」と「自助努力を支援する水パートナーシップの醸成」のための各国、国際機関の貢献策をとりまとめた「水行動集」が発表された。
2006年:第4回世界水フォーラム
持続可能な発展のあらゆる面において、水が重要であることを再確認。
2007年:第1回アジア・太平洋水サミット
アジア・太平洋地域において安全な飲料水を利用できない人々の数並びに基本的衛生設備の利用できない人々の数を、2015年までに半減し、2025年までにゼロを目指す。
【出典:厚生労働省HPを元に作成】
参考投稿:
『世界の収奪のカラクリ:世銀は途上国を救うためではなく搾取システムを構築するために存在する』
『IMF・世界銀行・WTOの正体 : 民営化・自由化させることで国家資産を収奪する機関』
■世界の投資マネーの受け皿としての「ウォーター・ファンド」
・世界で急成長を遂げているウォーター・ファンドだが2007年12月の時点で本数にして27本、総額では2000億ドルを超える規模に膨らんでいる(対前年比で53%増という急ピッチで増え続けている)。
・世界のウォーターバロンや水関連企業は、行き場を失った世界の投資マネーの受け皿として、過去、類を見ないほどの活況ぶりを呈している。
・スエズ、ヴェオリア、テムズウォーターのウォーターバロン御三家を過去20年間の株価の推移で見て見ると、おおよそ30倍にまで株価が膨張していることが明らかになる。
『ウォーター・マネー「水資源大国」日本の逆襲』(浜田和幸著 光文社 2008年) より引用
ウォーターバロン、国際金融機関(世銀、IMF)が水道民営化の推進によって市場拡大への布石を打った上で仕上げとなるのは、投資マネーの受け皿となる「ウォーター・ファンド」である。これによって、より高いリターンを追求する国際金融資本家(金貸し)の投資先として、「エネルギー(石油、ウラン等)」「食糧」に続く「水資源」という投資対象が完成する。つまり、「市場拡大絶対→水道民営化への世論誘導→ウォータバロンの世界市場制覇→ウォーターファンドによるマネー運用(膨張)」というシナリオは、市場拡大絶対という前提に基づく次の「ビジネスモデル」なのである。これは、基本的には「環境ビジネス(CO2、他)」と同じ構造だといえる。
参考投稿:
『地球温暖化問題は、新たな金貸しシステムの布石ではないか?』
『地球温暖化で大儲けするアル・ゴア』
■途上国での民営化失敗続出!?
しかし、その民営化路線も2000年以降、事業戦略の修正を余儀なくされている。その最大の要因は民衆の抵抗である。多くの場合、競争原理が働いている民間企業によって効率化が図られ、コストダウンや品質の向上につながるとのうたい文句で民営化が促進される。しかし、実態はむしろ、水道価格の大幅な上昇や利益重視で投資削減→品質低下、あるいは約束していた下水道敷設の不履行による未処理下水の垂れ流し→疫病の発生といったサービスの低下などの諸問題の方が大きいことである。そして最大の問題は、水道代を支払えない貧困層への給水をストップすること、つまりは生存に不可欠な水の供給を止めてしまうことにある。
◆ボリビア(コチャバンバ市)の事例
1985年:ボリビアでは IMF(国際通貨基金)と世界銀行(WB)による構造調整プログラムによって、運輸や通信に民営化を導入
1999年:ベクテル社(米)と 40 年のコンセッション契約 IMF と世界銀行は段階的補助金を廃止
2000年1月:水道料金が 従来の 3~4 倍に上昇(法律で定められた月最低賃金が $100、そのうち水道料金は$20 を占める)
2000年4月:水新法がボリビア議会でたった2日で可決;貧困の農民にまで水利権の強制。
→暴動発生;17 歳の少年が死亡 都市は1週間閉鎖
→結果、ベクテル社との契約はとりやめに
2002年:ベクテル社は、契約を破棄したボリビア政府に対し$25,000,000(30億円)もの 補償金を要求;世界銀行の下の組織である ICSID(国際投資紛争解決機関)へ提訴、受理される
◆失敗した民営化事例
1999年:マレーシア・クランタン
2000年:ギニア
2002年:フィリピン・マニラ
2002年:アルゼンチン・ブエノスアイレス
2003年:米国・アトランタ
2005年:ボリビア・エルアルトとラパス
2005年:タンザニア
2005年:マリ
2005年:ウルグアイ・モルドナード
2005年:アルゼンチン・サンタフェ
そして、とうとう、総本家ともいえるパリの水道事業さえも、価格やサービス面で不満や行政と企業の汚職問題によって100年振りに公営に戻されることが決定された。
◆パリの水道が公営化
100年間民営化されていたパリ市の水道事業が2010年までに公営化されることになった(水道産業新聞 7月17日)。パリ市長がこのほど、「より良い 価格とより良いサービスを取り戻すため、100年以上続いた私的企業の独占を終わらせ、上下水道の運営をすべて市が取り戻す」と発表。
パリ市の水道は現在まで、施設は市が保有、管理は営業がヴェオリア社、セーヌ川右岸の配水はヴェオリア社、左岸はスエズ社が担当。浄水部門は市と民間会社が出資する第3セクターに委託。
1995 年にグルノーブル市で発覚した市長とスエズグループの水道事業利権供与契約汚職が発端となり、全国で民営化の是非が議論され始めた。その結果、過去10年 間に40以上の自治体が水道事業の運営を「より良い価格とより良いサービスを取り戻すため」、民間から公共に戻している。パリでは、2009年末にヴェオ リアとスエズとの契約を打ち切り、「パリ水道公社」を設立し、水道事業を両社から引き継ぐ予定。同市長は他の自治体にも水道事業の公営化を奨励する予定と のこと。
公共施設の民営化またはPPPが奨励されている途上国において、この10年の水道事業の運営をめぐるフランスの動きをどのように受け止めるべきなのか。
(「開発援助って何ですか」より引用)
■実は失敗ではなく「利益の喰い散らかし」では?
一見すると、中南米やアフリカ等の水道民営化事業からの撤退は、ウォーターバロンや国際金融資本家の失敗に見える。しかし、例えば上記のボリビア(コチャバンバ)の事例では、アメリカのベクテル社(ブッシュ大統領がオーナー)は7ヶ月間に100万ドル(1.2億)に満たない投資しかしていないにもかかわらず、ボリビアから2500万ドル(30億)の補償金を取ろうとしています(つまり、28.8億の利ざやを収奪)。
ボリビアで、ベクテル社の水道事業に反対した市民の代表は、以下のように語っている
「この2500万ドルがあれば、2万5000人の教師を雇用し、貧しい子供に教育を受けさせ、12万世帯に水道を敷き、雨水でない衛生的で安全な水を提供する事が出来た。」
『オルタナティブ通信』「貧乏人は水を飲むな」・政策を取る国連=米国民主党アル・ゴア より引用
http://alternativereport1.seesaa.net/article/103393812.html
あるいは、パリ水道事業においても、ヴェオリアはパリ市と1 9 8 5 年より2 5 年間の水道事業のアフェルマージュ契約を結んでおり、2010年をもって契約終了となる。この水道収支を確認してみたい。
『水道事業の民営化について』より借用
収支表から水収益分- 受水費より5 9 , 8 5 2 , 0 0 0 ユーロ( 約9 5 億円)の利益である。日本での負担が大きい資本コスト( 管路更新) については、パリ市が新規工事を行うため比較することは出来ないが、費用に占める受水費以外( 給与、資本コスト) の割合が少ない。これは、委託内容が管理、運営業務のみであることが理由である。
( ※ ヴェオリアでは。有収率を上げることによって利益を生み出している。なお、新しい投資が必要となった場合は、パリ市が負担することになっている。)
ヴェオリアは自治体に新規建設に伴う投資コストを負担させ、運営管理のみで十分な利益を上げてきたが、再契約において今後25年の間に老朽化している水道設備への補修更新が頻発してくることが予想され(既存の水道管の補修更新に必要な投資を行なう責任を伴う)、その再投資コストは収益圧迫要因となる。
と考えれば、ウォーターバロンは利益の上がる期間だけ、利益の上がる対象(最貧困層へは供給ストップ)から暴利ともいえる利益を上げ、それがうまくいかなくなると、その社会インフラである水道事業を放棄して逃亡する。
結局、「市場(原理)」には社会を統合する気などなく、また統合する力もないということが明らかになったということではないのか。
■そして、日本も狙われている!!
2002年以降、ウォーターバロン3社の姿勢は、政治不安や経済変動のリスクの高い南米・アフリカから、より魅力的な人口急増かつ経済成長の著しい東アジア、安定している北米・東欧にターゲットを移行しつつある。当然、日本はその最有力候補として狙われている。いや、すでに日本でも水道民営化への法改正はなされており、ウォーターバロンの一角がひそかに市場参入を果たしているのだ。
「第3回世界水フォーラムとは」様より借用
【環境経済】世界最大手水道会社、仏ヴェオリアが日本に参入…西原環境テクノロジーを傘下にNIKKEI NET [日経新聞][08/02/03より引用
世界最大の水道会社である仏ヴェオリア・ウォーターは日本の水道事業に本格参入する。
中堅水処理会社の西原環境テクノロジー(東京・港)を傘下に収め、自治体から上下水道の
運営を受託する。日本では規制緩和で水道運営の民間委託が解禁され、今後市場拡大が
見込まれている。官公庁にパイプを持つ西原環境を事実上買収し、日本市場開拓を急ぐ。
日本法人のヴェオリア・ウォーター・ジャパン(東京・港)が西原環境を子会社化して
社長も派遣した。2006年に20%出資していたが、追加出資して比率を51%に引き上げた。
西原の新資本金は14億円。日本市場開拓を本格化するため今後西原の組織改革に着手する。
※西原は日本で最初に下水処理を始めた会社で隠れた名門企業
国際金融資本は郵政民営化に続いて、巨大市場である公共インフラ事業の水道事業の民営化を推し進めるべく政府やマスコミを通じて共認支配を仕掛けてきている。しかし、この「市場拡大第一」の市場原理によるインフラ事業がはたしてうまくいくのか?このまま、日本も水道民営化が推進されてしまうのか。日本はエネルギーや食糧につづいて、公共インフラである水道までも国際金融資本に牛耳られてしまう危険にさらされているのである。
<市場第一の国際資本(グローバル企業)の戦略>図解
<参照>
■るいネット
■自然の摂理から環境問題を考える
■『「水」戦争の世紀』モード・バーロウ、トニー・クラーク 著(集英社新書0218A)
■『世界の水が支配される』国際調査ジャーナリスト協会著(作品社、2004年)
■「世界の水問題と水道民営化の実態」佐久間智子さん http://altermonde.jp/pdf/20071219a.pdf
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コメント3件
yidaki | 2009.05.02 21:35
>共認態サルの増加は、「自然の摂理」を超えた繁殖といえるのだろうか?
おもしろいテーマで追求されていますね。
以前、【生態系の攪乱】という観点で、調べた事があったのですが、生態系の攪乱者としては、ホモサピエンスの段階(5万年前)くらいから見受けられるようです。
参考に↓↓↓
http://bbs.jinruisi.net/blog/2008/12/000493.html
systema | 2009.05.12 21:51
pakettoさん
>真猿登場以降の森の原猿・真猿を含めた猿の個体総数は増加していったのでしょうか?気になります!原・真の比率が変わっただけなのでしょうか?
コメントありがとうございます。大変レス遅くなり申し訳ありません。個体総数については、あくまでも仮説になりますが、次の【人口問題】5~共認態サルの増加は、「自然の摂理」を超えた繁殖といえるのだろうか?(3)にて 検証しています。
>p.s 上二つのpopアップ図版が、もっと大きくなると見やすいと思います♪
すいません。これ以上、拡大すると画質が粗くなり逆に見づらくなってしまいます。元ブログにてダウンロードできるようになっていますので、そちらを手に入れていただけると非常に見やすくなります。
yidakiさん
>以前、【生態系の攪乱】という観点で、調べた事があったのですが、生態系の攪乱者としては、ホモサピエンスの段階(5万年前)くらいから見受けられるようです。
ご紹介ありがとうございます。なるほど、生態系の攪乱ですか。これは自然の摂理とも関係してくるかもしれませんね。引き続き、調べてみます。
原猿類の弱オス達は集団を組むことで、縄張りを獲得することができ繁殖できたんですね♪
ちなみに樹上で暮らす猿たちにとって、基本的に個体数は森で確保できる食料総量によって決まると思われますが、
>原猿段階において環境限界(食と生殖の縄張り限界)まで繁殖した
真猿登場以降の森の原猿・真猿を含めた猿の個体総数は増加していったのでしょうか?気になります!原・真の比率が変わっただけなのでしょうか?
p.s
上二つのpopアップ図版が、もっと大きくなると見やすいと思います♪