2012-08-15

ポスト原発事故を生きるための注目の新エネルギー開発~太陽光・小水力・バイオマス・人工光合成

福島原発を契機に節電意識のたかまりと新エネルギーへの期待が高まっています。今日は、新エネルギーの開発動向の最新情報をお届けしたいと思います。
■効率アップ、あるいはコストダウン・・・太陽光発電の新技術動向
まずは非常に現実的な新エネルギー開発の動きから紹介します。なんと太陽光発電の能力が2倍に引き上げられる技術の開発です。
太陽光発電の能力をいまの2倍以上に高める技術を京都大工学研究科の野田進教授や浅野卓准教授、メーナカ・デ・ゾイサ研究員のグループが開発したと英科学誌ネイチャー・フォトニクス(電子版)で発表した。特定の波長だけを取り出す特殊な「フィルター」のような素材を開発。半導体の材質を工夫したフィルターによって太陽光の熱を発電用電池が吸収しやすい特定の光に変えるという。現在、最も普及しているシリコン製の太陽光電池でも、発電効率が20%程度、最大でも30%だと言われいる。シリコンが吸収して電気に変えられる光が特定の波長に偏っているためだ。しかし、野田進教授らは、ものを熱すると物質中の電子が乱雑に動き回りいろいろな波長の光を出す性質を利用して、2種類の半導体の膜で電子が自由に動けないようにし、波長の幅を特定の領域にとどめる一方で、光のパワーを強くした。
20120709130218IP120706TAN000210000_003.jpg
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20120709000050

 にほんブログ村 環境ブログへ


太陽光発電の開発の方向は大きく二つあります。ひとつは太陽光エネルギーの変換効率を上げる方向、もうひとつはレアメタルなどを使わず製造コストを下げる方向。
現在の太陽光発電はまだまだ無駄にしている部分が多いためこれをもっと上げるための研究は、上野先生以外にもいろんな試みがあります。
東京大学 荒川泰彦教授らが提唱した「量子ドット」を用いた太陽電池は、75%の変換効率を実現できる可能性を示した
記事元はコチラ 
また低価格化路線では金沢工大の研究も見逃せません。
金沢工大工学部の南内嗣(ただつぐ)、宮田俊弘の両教授は銅板と亜鉛を組み合わせた新型太陽電池の基板を開発した。従来のシリコン製に比べ100分の1の費用で製造できるとしている。 http://www.hokkoku.co.jp/subpage/H20110528103.htm
海外からは半導体に電界を加えることで様々な勤続による太陽光発電を志向する技術開発も進んでいます。
カリフォルニア大学とバークレー研究所が新技術「Screening-Engineered Field-Effect Solar Cells」を発表、極細または極薄の電極による印加電界で、多様な半導体から電子を取り出し可能にhttp://news-of-photovoltaic.sblo.jp/article/57474824.html 
wwn20110725-1.jpg
しかし、日本の場合、雨の多さもあって太陽光の発電効率は砂漠のようには上がりませんのでもっと他の技術との併用も考えなくてはいけないでしょう。つまり、雨の多さを逆に有効に利用する方法が必要です。その突破口はやはり、雨の多さがもたらす日本の水(川)と緑の豊富さを活用する方向でしょう。
■日本ならではの豊かな水を使った小水力発電
実は震災以降、小水力発電はかなり実用的レベルで進化していっています。
飯田市の企業五社が自前の機械部品や製造設備を共有することで、相場の約五分の一という一基五十八万円の「マイクロ小水力発電機」を開発した。http://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20120730/CK2012073002000016.html
日本の中小企業力は見上げたものですね。既に山間部の自治体ではその8割を小水力でまかなっている例もありますから普及を期待したいですね。
PK2012072902100164_size0.jpg
●放射能除染にもなるバイオマス発電
もうひとつの「緑」はいわゆる旱魃材等を使ったバイオマス事業です。しかし、バイオマス発電の妨げになっているのがバイオマスを燃やすために材料を乾燥化する時に必要なエネルギーが大きすぎるという点です。その点を大きく改善する技術が登場しました。
東京大学生産技術研究所の堤敦司教授らの研究グループは、独自に開発した「自己熱再生技術」をバイオマスの乾燥工程に適用すると、乾燥に要するエネルギーを従来の熱回収法と比べ、75―84%削減できることをシミュレーションによって明らかにしたhttp://www.nikkan.co.jp/news/nkx0520120808eaal.html
バイオマス発電は原発被害を受けた森林の再生の切り札としても注目されており、是非、期待したいところです。
林野庁の試算では、除染で出る一ヘクタール当たりの除去物は落ち葉と枝葉で約十トン、すべての立ち木を伐採した場合は最大八百トンにもなる。「除染ありきで動きだせば、すぐに行き詰まってしまう。その点、バイオマス発電を同時に進めれば、保管場所の問題は解決できる」http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-6374.html 
もっと身近なところではゴミ清掃工場の廃熱を有効利用する技術も注目されています。この技術を併用すればバイオマス発電は送電線路を設けずにエネルギーを家庭に届けることが出来ます。
甘味料で一度に40軒分の熱を運ぶ、大阪発の新しい都市エネルギー利用法~エリスリトールは果実やワインなどにも含まれている天然の糖アルコールの一種。見た目は白色の粉だ。カロリーがほとんどない上に虫歯の原因にならず、水に溶ける際に吸熱反応を起こすため、清涼感を高めた菓子や歯磨き粉などに食品添加物として使われている。このエリスリトールは120℃で固体から液体へ融解し、融解熱は340kJ/kgである。融点が高く、融解熱が大きいため200℃以下の未利用排熱を効率良く受け取り、蓄熱できる。蓄熱装置の体積を小さくでき、トラック1台で運ぶ熱量が増える、これがエリスリトールのメリットだ。 エリスリトールを利用した熱輸送の技術開発は10年程度の歴史があるものの、大規模な実証実験は今回が初めである。ごみ焼却場と熱輸送車の組み合わせも、今回初めて実証する。http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1109/30/news011_2.html 
■世界で進む脱原発~日本は遅れてはならない!
さて、このような地道な開発に水を差すのが政府の「原発をあきらめない態度」です。
日本原子力研究開発機構へ復興特会から107億円を拠出。~ 機構を管理する文科省の研究開発戦略官付の担当者の言い分は、「実験を行っている日本原子力研究開発機構は、(被災した)青森県と茨城県にあります。同事業のコンセプトは、この研究を日本と欧州が参画する『世界的な核融合の拠点施設』にして、イノベーションの力で復興に寄与しようということになります。」http://ameblo.jp/kumanohitorigoto/entry-11317877310.html 
原発廃止論議が盛んになっている国民の考えと、何と隔たりがあることでしょう。以下のGEのCEOの発言を聴くに脱原発、新エネルギー開発は欧米に完全に出遅れた感があります。
米GE イメルトCEO 原発“見切り”発言の衝撃度~米ゼネラル・エレクトリック(GE)最高経営責任者(CEO)、ジェフ・イメルト氏の原子力発電に対する発言が話題になっている。東京電力福島第1原子力発電所の事故をきっかけに原発のコスト上昇が見込まれる一方、多くの国が地中深くの岩盤から採取する新型天然ガス「シェールガス」や風力に発電用エネルギー源をシフトすると予見。原発は「(経済的に)正当化するのが非常に難しい」と語った。http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD0607I_W2A800C1000000/
福島原発の製造者責任を問われることもなくGEはさっさと原発からトンヅラして、その尻拭いが日本国民に押し付けられているというのですから、日本のお人よしもさすがに困ったものです。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD0607I_W2A800C1000000/
しかし日本の技術力はまだまだ可能性が残っています。人工光合成です。
●人工光合成は植物と同様に太陽光で水とCO2からエタノールなどの有機物をつくる技術。今回、太陽光と水、CO2を反応させるシステムにLED(発光ダイオード)などの半導体に使う窒化ガリウムと独自の金属触媒を採用した。光合成で生成する有機物の変換効率を従来技術の5倍に高めた。植物並みを達成したのは同社が世界初。
http://bzsupport.blog.so-net.ne.jp/2012-07-29
e1a38bf5c0de56fdf093b05a01f2324e.png
自然の摂理に真摯に学び続けてきた日本。循環型のエネルギーを実現することが出来る可能性が最も高いのもこの日本ではないでしょうか。原発事故という悲劇を乗り越えて、脱官僚社会と脱大量消費大量生産社会をつくりだすことこそ、ポスト震災を生きる私たちの使命ではないかと思います。

List    投稿者 staff | 2012-08-15 | Posted in F02.代替エネルギーってどうなの?No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2012/08/1172.html/trackback


Comment



Comment