2010-03-19

『次代を担う、エネルギー・資源』状況編5 ~石油・石炭の使用量・利用先~

これまで、
『次代を担う、エネルギー・資源』状況編1~世界と日本のエネルギー消費の現状~
『次代を担う、エネルギー・資源』状況編2~運輸部門のエネルギー消費はどうなるのか?~
『次代を担う、エネルギー・資源』状況編3~民生部門(業務、家庭分野)のエネルギー消費の実態は?~
『次代を担う、エネルギー・資源』状況編4~産業部門(製造部門)のエネルギー消費の実態は?~
 

過去4つに分けて、日本の3部門(運輸、民生、製造)でのエネルギー消費を押さえてきた。そして、予想では今後20年間では約6~7割へのエネルギー消費は縮小していくと考えられています。

ただし、必要なエネルギー消費量が縮小したとしても、依然として日本のエネルギー自給のカギを握るのは、石油、石炭および天然ガスの化石燃料です。
今回は、その中でも石油と石炭に絞って現在の使用量や利用先などについて調べて行きたいと思います。
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石油の現状
 まずは、日本の石油使用量から押さえていこう。
日本の石油使用量のうち、自給しているのは98万K㍑/年程度(2008年度)で、国内消費量全体に占める比率は、0.3%に過ぎない。つまり、99.7%は海外からの輸入に頼っている状況にある。
 
そこで、日本の石油輸入量(2007年度)は、
503.1バレル/日 経済産業省 資源エネルギー庁 「エネルギー白書2009 第二部エネルギー動向」
→503.1万バレル/日×365日=183,631.5万バレル/年→29,197万K㍑/年
 (※1バレル=0.159 K㍑)
となっている。
 
 次に、日本の石油製品への石油使用量を押さえていく。
石油製品の石油使用量は、5,546万K㍑/年となっており、石油製品は日本の石油消費量の19%を占めている。(数値は、石油連盟「国内石油需給動向」より)
石油の比重を0.9(Kg/㍑)とすると、4,991万トン/年の使用量となる。
 

石油連盟よりよりお借りしました
 
 上記のグラフから以下のことが読み取れる。
一番多く使用されているのは、自動車に36.3%で、その内訳は自家用車(ガソリン)に22.2%、貨物(軽油)に12.8%の割合で使用されている。
 2番目に多いのは、化学用原料に20.8%で、その内ナフサが18.2%と暮らしに役立つさまざまな製品に使用されている。
 3番目に多いのは、家庭・業務用で14.5%となっている。
 
 また、石油は私たちの暮らしに役立つさまざまな製品に使用されているが実際にどの様な商品となって私たちの身の回りに存在しているのか?
 

石油化学工業協会よりお借りしました
 
 プラスチック、繊維、ゴム、塗料、合成洗剤、接着剤、農薬、医薬と様々な商品に使われている。
 今や石油は私たちの日常の生活で見るものに大量に使用されていることが分かる。

 
石炭の現状
 世界で石炭の生産量は332,400万トン/年で、使用量は330,370万トン/年となっている。(2009年度)
 また、日本の石炭消費量ランキングは第4位の約12,870万トンで世界石炭消費量の約3.9%を占めている。(数値は、BP統計2009より)
 日本の石炭消費はどのようなところで使用されているのだろうか?
下記のグラフをご覧下さい。

『エネルギー白書』よりお借りしました。
 
 主な業種における石炭需要を見ると、電力の一般炭需要が最も多く、次いで鉄鋼業の原料炭の需要が多い、この2つの業種で全需要の約8割を占めています。
 石油、石炭の現状を見てきたが、日本のエネルギー問題で重要なのはエネルギー・資源の‘自給自足’である。
電気などのエネルギーは、新エネルギーで考えるとして石油製品(化学製品)をどうするかは、今後の大きな課題になる。
その可能性として石炭液化の技術が一つあるが、日本の石炭埋蔵量でまかなえるだろうか?

 まずは、日本の石油製品を石炭で代替した場合の必要石炭量はどのくらい必要か?
石炭液化油1トンの生産に要する石炭は、直接液化の場合は3.5 トン、間接液化の場合は4.2 トンになるため、効率は約30%
(石炭液化油はガソリン、軽油で、化学製品はナフサだが)この効率を前提にすると、
4,991万トン/年(石油)÷30%=16,637 万トン/年
の石炭が必要になる。
 
 では、日本の石炭埋蔵量からの石油製品を賄える可採年数を考えてみよう。
日本の石炭埋蔵量を調べてみると多種多様なデータで出てきた。
 
総務省統計局「世界の統計2009、エネルギー」のデーター
・無煙炭・瀝青炭=35,500 万トン
・亜瀝青炭・褐炭= 1,700 万トン
 計      =37,200 万トン (※高品位炭)
 
→37,200 万トン/16,637 万トン/年 =2.2年
 
独立行政法人 国立環境研究所「ものづくりと資源・エネルギー」
可採石炭埋蔵量=77,300万トン
(※総務省統計局データーの約2倍)
 
→77,300万トン / 16,637 万トン/年 =4.6年
 
九州大学 地球資源システム工学「石炭コーナー」 のデーター
埋蔵量80億トン=800,000万トン
(※国立環境研究所データーの約10倍)
 
→800,000万トン / 16,637 万トン/年 =48年
 
 なぜ、こんにも埋蔵量に違いがでてきたのか?
 
財団法人 石炭エネルギーセンター
埋蔵量=3,4000億トン
可採埋蔵量=9,091億トン (※埋蔵量:可採埋蔵量=3.7:1)
高品位石炭(無煙炭・瀝青炭)=4,788億トン
 
釧路石炭COM
埋蔵量=11兆トン
可採埋蔵量=1兆トン (※埋蔵量:可採埋蔵量=11:1)
 
この①、②のデーターから、
 
◎可採埋蔵石炭のうち、高品位炭:低品位炭=1:1
国立研究所のデーターが、総務局データーの約2倍になっているのは、高品炭+低品位炭を入れた値の違いと想定できる。
 
◎世界の可採埋蔵量:埋蔵量≒1:3.7~11.0
九州大学のデーターと国立研究所のデーターの違いは“市場ベースの可採埋蔵量”と“埋蔵量”の違いと想定できる。
 
★よって、「低品位炭の液化技術が可能」「市場採算ベース外」を前提に、現在の石油製品を日本の石炭で賄うとすれば、
4.6年×(3.7~11.0)≒『17~51年』。
 
★また、「市場縮小」と「石油製品の内訳のうち必要か否かの判断」により、石油製品の消費量が半減すると想定すれば、
(17~51年)×2倍=『34~102年』
 
よって、日本で自給できる石炭で、石油製品(化学製品)を賄うには、“50年分オーダーの値”であると想定する。
 
 今回は、石油・石炭の現状がどうなっているのかを調べてきた。
自然の摂理に則ったエネルギーの視点でみると石炭は次代のエネルギー源としては可能性は低い。
しかしながら一方で、日本のエネルギー自給を考えていくうえでは、脱石油製品の開発までの当面、石炭についても、視野に入れて追究しておく必要がある。
 
1.日本の石炭埋蔵量は本当はいくらあるのだろう?
市場ベースではなく使える量としてどうなのか?
2.石炭採掘技術(安全性など)の可能性は?
3.石炭から石油への転換(石炭液化)の新技術の可能性は?
4.日本で自給できない場合は、石油製品分の石炭は、相互依存関係で輸入する国があるか?
 
次回は、資源(レアメタル等)の貯蔵量および現在の状況について調べていきたい。

List    投稿者 yhonda | 2010-03-19 | Posted in E01.状況編1 Comment » 

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コメント1件

 iku | 2011.03.15 21:53

寿命の問題、こんな風に(ここまで)考えたことがなかったのですが、「生産様式の変化」と「生活様式の変化」から考えるというのは、面白そうですよね♪
精神病、自殺、延命措置・・・本当の体の寿命ってどうなん?今後どうなるの?は気になります。今後も楽しみです☆

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