2008-12-25

水資源の危機どうする?(番外編)~海水淡水化(1)~

1)海水淡水化とは?~淡水化の仕組み~
『水資源』の危機!!シリーズ読んでいただけましたでしょうか?
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↑このきれいな海の写真は海ZABUUN様のHPからお借りしました
水資源に対する危機感が高まったことと思います。この先、もし日本が水不足になったらどうしましょう?
地球に存在する水の97.5%を海水が占めているということはもうご存知だと思います。
じゃあ、それを飲めるように淡水化できたら、水不足なんて一気に解消されるのでは?と思いますよね。
実は、この「海水淡水化」は、地理的な要因で水不足(山が緩やかでダムが造れない、川が少ない、降雨量が少ないなど)に悩まされていた中東の国では、すでに1930年代から実用化されていて、現在、世界中で海水淡水化プラントが続々と建設されています。
  「じゃあ、水不足は海水淡水化で解消できるんじゃん!どんどん建設しようよ! 😀 」
と思われるかもしれませんが、ちょっと待ってください
海水を飲用水とするためには海水に含まれている約3.5%の塩分を、少なくとも0.05%以下にまで落す必要があり、それには多大なエネルギーが必要なんです。
この番外編では、
  海水淡水化を新たな水源として当てにしていいのか?!
について3回に渡って追求していきます。1回目は基礎知識として、淡水化の種類と仕組みについて見ていきましょう。
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淡水化方式
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海水淡水化方式には、蒸発法、逆浸透法、冷凍法、電気透析法などいろいろありますが、実用化されているもののほとんどは蒸発法と逆浸透法です。
【電気透析法】
塩分が水に溶けると、陽イオンと陰イオンに分かれます。陽イオンのみを通す陽イオン交換膜と、陰イオンのみを通す陰イオン交換膜で隔離された間に海水を入れ、陰イオン交換膜の外側を陽極に、陽イオン交換膜の外側を陰極にして直流電圧をかけると、陰陽両イオンはおのおの膜の外側にひきぬかれ、膜と膜の間に淡水が残るという仕組みです。
 この方法は、溶液中のイオン濃度が高くなるとそれだけ電力、すなわちエネルギーが必要となるため、現在では、おもに塩分濃度の低い海洋深層水を、海水のミネラル分を残して脱塩する方法として使用されています。
【蒸発法】
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蒸発法(多段フラッシュ法)による淡水化プラント(サウジアラビア)
蒸発法は、海水を沸騰・蒸発させ、その蒸気を冷却して真水を得る方式(減圧蒸留)です。海水の質を問わない・大量の淡水を得ることができるなどのメリットがありますが、加熱に多量のエネルギーを必要とするため、エネルギー資源に余裕のある中東産油国に限られています。熱源としては発電所の復水や油井からあがってくる随伴ガスや精製時に発生するオフガスが利用され、冷却には海水が使用されます。このため海水淡水化プラントは精油所や火力発電所に併設される場合が多く、サウジアラビアの海水淡水化公団では多段フラッシュ法の大型海水淡水化プラントを多数稼動させています。サウジアラビアではこれらを工業用水や一般家庭用水の主水源としており、更に余剰の淡水を農業用水としても利用しています。
【逆浸透法】
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↑逆浸透法による淡水化装置
逆浸透(Reverse Osmosis(RO))法は、水を通しイオンや塩類など水以外の不純物は透過しない性質を持つ逆浸透膜というろ過膜の一種を用いて、海水に浸透圧以上の圧力を加えることで、海水をろ過して淡水化する方式です。近年、膜の開発が進んだことでコストダウンが図られたため、世界の淡水化プラントの大部分でこの方式が採用されています。
身近なところでは、実は日本国内でも淡水化施設は稼働しています。福岡や沖縄本島に比較的大きなプラントがあるほか、瀬戸内海にある島や沖縄の離島など、安定した水の供給が難しい地域に、小型の淡水化プラントが設置されています。
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逆浸透膜の原理
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RO淡水化ユニットの構造
逆浸透法による淡水化では、原水から淡水を100%抜き取ることはできず、原水に対する得られる淡水の割合(回収率)は40%~60%となっています。また、淡水と同時に塩分濃度の高い濃縮海水が排出されます。
逆浸透法は、海水だけでなく汚水や下水の再利用にも使われています。現にシンガポールでは、下水を再び工業用水や飲料水にする過程のなかで、この技術が大きな役割を担っています。
この逆浸透膜(RO膜)は、1950年、将来の水不足を心配したアメリカが国家プロジェクトとして巨額を投じ、NASA(アメリカ航空宇宙開発局)が、海水しか飲まないカモメの喉をヒントに開発したものだそうです 😮
水処理膜には、RO膜以外にもいろいろな膜があるようです。
孔の大きいほうから順に並べると、
・精密ろ過(Microfiltration(MF))膜 : 水道水の製造、家庭用浄水器などに利用。
・限外ろ過(Ultrafiltration (UF))膜 : 水道水の製造、人口透析、海水淡水化の前処理などに利用。
・ナノろ過(Nanofiltration(NF))膜  : 脱塩、浄水の軟水化(硬度処理)などに利用。
・逆浸透(Reverse Osmosis(RO))膜 : 半導体洗浄用超純水の製造、脱塩、濃縮還元ジュースの製造に利用。
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水処理と膜より
なるほど、RO膜ってウイルスも通さないんですねぇ…:o
孔の直径が2ナノメートル以下で、水分子がやっと通れるぐらいのレベルだそうです。
淡水化には凄い技術が必要なんですね
また、淡水化プラントも非常に大掛かりです。こういうプラントが世界各地に広がっていくとどうなるんでしょう…
次回は淡水化事業の現状として、淡水化の導入状況と市場規模について見ていきたいと思います。
(参考URL)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E6%B0%B4%E6%B7%A1%E6%B0%B4%E5%8C%96
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%86%E6%B5%B8%E9%80%8F%E8%86%9C
http://www.eb.pref.okinawa.jp/sisetu/suigen/kaisui/flow.html
http://www.mtech-web.co.jp/water.html

List    投稿者 satie | 2008-12-25 | Posted in I04.水資源の危機No Comments » 

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