『次代を担うエネルギー・資源』火力発電の可能性6~「日本の電力の中核的企業が外資に狙われている」~
前回、『火力発電の可能性5~「知らないうちに日本の電力が外資に乗っ取られる!?~」』では、電力会社の経営、特に資本構成を見てみました。そして、電力業界全体の大株主上位には、すでにロックフェラー系、ロスチャイルド系の企業が名を連ねており、外資による乗っ取りの危険性が明らかになりました。今回は、さらに具体的に個別の電力企業への買収リスクについて調べてみたいと思います。
◆日本の電力の中核的企業が外資に狙われている
実際に、2008年にイギリスのヘッジファンドによって電源開発(J-POWER)が買い占められそうになった事件もありました。
『日本政府、英ファンドの電源開発株取得に中止勧告』 2008年04月16日
【4月16日 AFP】(一部更新)政府は16日、英ヘッジファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(The Children’s Investment Fund、TCI)」に対し、電力卸大手、電源開発(Jパワー、Electric Power Development、 J-Power)株の追加取得の中止を勧告した。
TCIは1月に、9.9%を保有する電源開発株を20%まで買い増す計画を発表していた。
外国為替及び外国貿易法(外為法)は、外資が国の安全や公の秩序にとって不可欠な電力などの株を10%以上取得する場合に政府の認可を義務づけている。
額賀福志郎(Fukushiro Nukaga)財務相と甘利明(Akira Amari)経済産業相は公式の声明を発表し、追加投資計画の全面中止を勧告した。TCIが勧告に応じない場合、政府は「中止命令」に踏み切るとみられている。
AFPBB Newsより引用
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◆電源開発(J-POWER)は、日本の電力の中核的企業
ところで、ここで全国の10電力会社(電力の小売業)とは別に、電源開発株式会社(J-POWER、卸売業)が出てきます。簡単にその内容を紹介しておきます。
『Jパワー(J-POWER)の正式名称は、電源開発株式会社』
戦前日本国内の電力供給を一手に引き受けていた「日本発送電」が戦後GHQにより解体。
地方の電力会社に分割された。しかし、資本的に脆弱だったために、1952年に電源開発株式会社が設立される。資本構成は66.69%を財務大臣、残りを9電力会社が保有。
名地方電力会社がカバー出来ない大規模な、水力発電所や火力発電所、原子力発電所(建設途中)の建設、運営にあたる。2004年10月6日に東京証券取引所の第1部に上場、民営化される。
こちらよりお借りしました
<主な事業>
①「卸電気事業者」という位置づけで、電力各社に電気を売っている。
②北海道-東北、本州-四国など地域をまたぐ送電線を持っており、この送電線の利用料を電力会社から受け取っている。
③海外での技術コンサルティング(1960年代~)と、海外発電事業(1990年代後半~)。
つまり、全国の電力会社に電気を供給し、各地域をつなぐ送電線を唯一保有し、さらに大間原発(’14年運転開始予定)は、各地の原発で使用した使用済み核燃料を再処理・加工する「プルサーマル」を担うとされ、まさに日本の核燃料サイクル政策の中核を担う戦略的施設を所有するのが、電源開発(J-POWER)なのです。
このような日本の電力の中核的企業が外資に狙われているというのは一般の国民にはほとんど知らされていないのではないでしょうか?
◆電源開発(J-POWER)の外資比率は、過去に41.5%まで高まっていた
では、さらにその電源開発(J-POWER)の過去の株主構成の変遷を見てみましょう。
<電源開発(J-POWER)の株主データ>
これを見ると、過去、J-POWERを巡って外資と日本の機関投資家が様々な攻防を行ってきたことがわかります。現在は、外資比率が16.8%ですが、過去には41.5%まで高まったことには驚かされます。
この背景には、悪名高い小泉・竹中という従米隷属コンビによる「日本売国政策(新自由主義に基づく日本市場の開放)」があります(背後にはD・ロックフェラーの圧力がある)。
さらには、‘04年に民営化され、即、’05年に筆頭株主に躍り出たのが、「モルガン・スタンレーアンドカンパニー」で、この時には、保有比率が10.8%(2005/6/29段階)と、外為法の制限であるはずの10%を超えています(モルガンは言わずとしれたロックフェラー系の企業です)。
こちらよりお借りしました。
◆東電筆頭株主に外資ファンドが!安全保障に不安も
また、これらの動きはJ-POWER に限らず、2007年11月には、東京電力においても、外資ファンドが筆頭株主になるという事態も発生しています。
『東電筆頭株主に外資ファンドが!安全保障に不安も』
東京電力の筆頭株主に突如、耳慣れない外資系ファンドが躍り出た。
その名はアライアンス・バーンスタイン。
富士通などにも投資する米国系ファンドで、村上ファンドのように積極的に増配などを要求する「アクティビスト」ではないと見られる。
だが、電力業界の盟主である東京電力の筆頭株主に、外資系ファンドが登場したことで憂慮する声も上がっている。
「とうとう来るものが来たか」。
東京電力のある関係者は率直な感想を漏らした。
今年に入り、外資系の投資ファンドや外国政府が運営する国家ファンドによる日本のエネルギー銘柄への投資が進んでいる。
電力卸最大手のJ-POWERに対しては英国系ファンドのTCIが9.9%を投資する筆頭株主となり、配当を2倍以上に引き上げる増配要求を行 なった。石油元売り大手のコスモ石油はアラブ首長国連邦(UAE)・アブダビの政府系投資機関が20%を出資する筆頭株主となった。
(中略)
外国為替法では、国家の安全や秩序維持を妨げる場合、外資による電力会社株の10%以上の保有を中止させることができる。そのため東京電力幹部の危機感はまだ低いが、資源を楯に国家ファンドが乗り込もうとしたとき、本当に抑止力を持つのか。
こうした事態を想定し真剣に議論を始める時期がきている。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也) より引用
ということは、これはJ-POWERに限らず、日本の電力の6割を占める東電、関電、中電を始め、電力業界全体において想定されるリスクだということです。
では、いつからこのような事態になったのでしょうか?
◆従米政権「小泉・竹中」以降、外資比率は急増
もう一度、’01年からの全電力会社における外資比率の推移を見てみましょう。
「株主プロ」を元に作成しました
【年次改革要望書の要求】→【日本の法改正・制度改正】
・アメリカ型経営形態導入→ 03年:商法改正=外国会社の営業所設置義務の撤廃等
・外国企業の日本参入 → 05年:新会社法成立=外資系企業による日本企業の買収を容易にする、「三角合併」の解禁等
・郵政民営化 → 05年:郵政民営化6法案成立
参考:年次改革要望書の要求どおりに成立した法案 (るいネットより)
これを見ると、見事に小泉・竹中の従米政権になってから、立て続けに外資参入のための市場開放がなされ、日本の株式市場でも世界的なファンドなどによる外資買いが急増します。
そして、’07年には、J-POWERの外資比率は41.5%にまで達しています。日本の電力の中核的起業はほとんど外資系とまでいえるほどに株を買い占められていたといえます。
そして、その後、急速に外資比率は下がっていきます(つまり、売却されている)。この背景を探るためにも、J-POWERの株価推移も確認してみます。
MSNマネーよりお借りしました。
これを見ると、明らかです。民営化によって外資が優先的(と見えるほどに)に株を購入し、「ピーク時~下落局面」で売り抜けています。その間、株価は「’04年10月:2,308円→’07年2月:5,930円」と、わずか2年強で2.56倍に急騰しています。おそらく、主要な外資株主(ロックフェラー、ロスチャイルド系)は、その一番いいタイミングで売り抜けているのではないかと推測されます。逆に、さきほどの英ファンド(TCI)は乗り遅れている感があります。
また、長期的には、’00年以降、実体経済を上回るマネー経済の膨張が背景にあります。そして、一部の勝ち組ファンドが巨額の投資マネーを運用し、(以前では考えられないほど)企業買い占めのリスクが急増しています。
・1990年以降、GDPはほぼ不変 。
・国債発行残高は、右肩上がりで増えていっている 。
・マネー経済(=国債+株式)は右肩上がりで増加傾向。
金貸しは、国家を相手に金を貸す様よりお借りしました。
はたして、このような市場環境の急激な変化に対して、日本の外為法に基づく外資制限というのは本当に抑止力があるのが疑問に感じます。
◆電力会社への外資による買収は本当に阻止できるのか?
もう一度、外為法の制限の概要を見てみましょう。
こちらよりお借りしました。
ただ、電源開発(J-POWER)への外為法に基づく中止命令は、1980年に対外取引の原則自由の法体系に改められて以降、初の事例です。この時点(’08年)で、過去3年間に760件の届け出がありましたが、この1件以外の全ての届け出はそのまま投資が認められています。つまり、外為法による外資制限というのは、実際にはほとんど適用されていないといえます。
そして、その制度を活用して実行するのは、担当省の大臣であり、この問題では財務大臣、そして経済産業大臣ということになります。では、現在の閣僚構成はどうなっているのでしょうか?
<菅第二次改造内閣 閣僚名簿>
内閣総理大臣 菅 直人
財務大臣 野田 佳彦
経済産業大臣 海江田万里(鳩山G)
内閣官房長官) 枝野 幸男
外務大臣 前原 誠司
内閣府特命担当大臣 与謝野 馨
(経済財政政策/他)
国家戦略担当 玄葉光一郎
かろうじて、経済産業大臣は、(国民生活が第一とする)鳩山Gに属する海江田氏ですが、菅総理を筆頭に財務大臣以下、ここに上がっている全閣僚が従米隷属のアメリカの利益の代弁者ともいえる顔ぶれになってしまっています。
さらに、問題だといえるのが、この外為法では外資(外国ファンドや企業)による国防や公の秩序の維持に係わる企業への10%以上の投資については制限されますが、内資(国内ファンドや企業)であれば、そもそも外為法にかかりません(プライベートファンドは公開企業と違って出資者は全くわからない)。かっての村上ファンドのような投資ファンドが外資の資金を運用して電力企業の筆頭株主になり、10%以上の株を買い占めようとした場合でも、国家が直接には制限できないことになります(企業自身の防衛次第)。
大手マスコミを巻き込んで、こじつけの理由を大々的に報道し(TPPにおける「平成の開国」のように)、いつ自分たちに都合のいいように「日本の電力」を外資に売り払おうと画策しているかもしれません。
◆電力業界を取り巻く特権階級に対抗するためには国民の共認圧力が必要
<電力業界を取り巻く特権階級>
①金貸し(外資)
②政府(政治家、官僚)
③マスコミ(特に大手)
この3者が国民の利益に反する行為を取ったとしても、現状ではそれを規制する法律は無きに等しいのだといえます。
実際に、過去のJ-POWERの防衛の際には、財務省と経済産業省の間で、財務省は外資に同情的な姿勢を示し(中止命令まですれば閉鎖的として世界市場で孤立する)、国益を守るために絶対死守という経済産業省が必死にそれを説得したという経緯があるようです。また、大手マスコミでは朝日新聞や日経新聞の記事では「外資参入歓迎という政府原則に反する」「不透明な判断」などと、国益に反するような売国的報道がなされていました。
とすると、史上もっともひどいといわれるほどの従米政権である管・民主党、ますますアメリカ寄りの報道を繰り返すマスコミという現状を考えれば、はなはだ心許ないと思われます。
今回、国家防衛課題としての「(海外の資源やエネルギーに依存しない)電力の自給」という問題を考える上で、予想もしない電力会社の外資乗っ取りリスクが明らかになりました。エネルギーの自給、そのための設備投資や技術開発とあわせて、こういった国家的インフラ産業を守るための法制度の整備も急がれると思われます。
まずは、何よりも私たち国民がこういった事実を知り、勝手な行為を監視していく共認圧力を形成していくことが課題となります。その上で、今後どういう方向を目指せばいいのか?ということも考えていく必要があります。電力会社分析編の最終回となる次回は、今後の方向性について扱ってみたいと思います。
<データ元:グラフは下記を元に作成>
・「電気事業のデータベース」(INFOBASE)
・「株主プロ」
・ウィキペディア
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