2008-03-15

持続可能でない水利用による世界の食糧バブル経済 ①

kansas_AST_2001175_lrg%5B1%5Dhosi2.jpg
なんともキレイな幾何学模様ですね 😀
これなんと、とある農業地帯の衛星写真なのです!
そして、このきれいな幾何学模様が、実は世界の水資源の枯渇問題、
ひいては世界的食糧問題と大きく関わっているのです!
「ええっ!?」 
写真はアメリカ合衆国中部、アメリカ有数の大穀倉地帯
グレートプレーンズにあるカンザス州の農場です。
「なんで円形なの??」
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私たちが世界的な水不足と聞いて、今ひとつピンとこない大きな理由に、「目に見えない水」の枯渇があります。「目に見えない水」とは、すなわち地下の水の事です。今回はそんな、地下の水のお話しです。
まず一言に地下の水といっても、地下水は大きく循環系の水非循環系の水に分けられます。循環系の水とは、滞留時間(循環サイクル)に大きく差こそありますが、川の水の様に降水等により常に補給され、長い時間をかけて流れていく水の事です。(大雑把に河川水は平均13日循環系の地下水は平均830年!!で海にたどり着きます。)
そしてもうひとつ、非循環の水。これは「化石水」とも呼ばれる大昔の水が地下の帯水層に閉じ込められたもの。これは石油と同様に、使ったら減っていくだけで、補充されない水です。あまり知られていませんが、今や世界規模の穀倉地帯の農業が、これら化石水や、溜まるのに長い年月を要する地下の水に依存しているのです。
そこで、冒頭の衛星写真の登場です。小麦をはじめ大豆やとうもろこしを多く生産するこの地域は、カンザス州をはじめ8州にまたがる「アメリカのパンかご」と呼ばれる大穀倉地帯です。日本の輸入小麦も大きくここに依存しています。ところが、グレートプレーンズと呼ばれるこの大平原が広がる地域は、ほぼ全域がステップ気候に属し、全体的に降水量が少なく、河川や湖沼などの地表水が少ない地域なのです。
「なんで大規模農業が可能なの?」
その秘密が地下の水です。この大平原の下には「オガララ帯水層」と呼ばれる氷河期に蓄えられた化石水の巨大な水瓶があるのです。世界最大規模のその総面積は、なんと日本列島の2.1倍!!アメリカ8州にまたがり、グレートプレーンズの農業=アメリカのパンかごをその化石水が支えているのです。
aquifer%5B1%5D.gif
「だからなんで円形の農場なのさ?」
・・・今から説明します。実はこの地域はグレートプレーンズと呼ばれて、長い間放置されていた半乾燥地帯でした。第2次世界大戦後に地球上で最大規模というこのオガララ帯水層の地下水を利用した灌漑により、はじめて大規模農業が盛んになったのです。
そして、その大規模農業の方法が、地下の化石水を揚水ポンプで汲み上げ、センターピボット方式と呼ばれる自走式スプリンクラーで行う灌漑農業だったのです。自走式スプリンクラーとは長大な棒状(1㎞~)の構築物で、時計の針のように円を描きながら散水するため、畑は四角ではなく円状になります。
160px-Center-pivot_irrigation.jpg
したがって上空から見ると、畑は「緑の円」のように見えるのです。そして、その「緑の円」が何千何万にも増えて、世界の一大食糧供給地(衛星写真の姿)になったわけです。
今、その円形農場が危機を迎えています。
化石水は石油同様、限られた水です。大規模に農業用水として動力を用いて一気に汲み上げ使い続ければどうなるでしょうか?世界最大規模の水瓶も水量が激減し、その問題に直面しているのです。そして、同様に中国・インドを初めとして世界の食糧生産を支える大穀倉地域でも同じ地下水の枯渇問題が次々と深刻化しています。その理由は例えそれが循環系の地下水であったとしても、地下帯水層に水が満たされるには長い長い時間が必要だからなのです。
この原因は主に各国政府が地下水を過剰に(持続不可能な量を)汲み上げることによって、増加する食糧需要を満たしていることにあるようです。しかし、この方法ではいったん帯水層が枯渇すれば、食糧生産量が激減することは間違いありません。その影響は日本を始め世界に深刻な影響を与える事になると予想されています。現在の食料大量生産は、本来手をつけてはならない水に依存して成り立っているのです。
各国政府は水収入以上の水国債を大量に発行し、世界規模の「食糧バブル経済」を生み出しているのです。
<参考web>
レスター・R・ブラウン
持続可能でない水利用による世界の食糧バブル経済
http://www.es-inc.jp/lib/lester/newsletter/050612_004405.html

List    投稿者 kasahara | 2008-03-15 | Posted in K02.水質汚染8 Comments » 

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コメント8件

 しのぶ | 2008.07.31 2:25

>水資源は、“自然”の偏在性を超え、市場の強弱関係のなかで“人工”の偏在性を加速させながら、世界的に影響を与える深刻な状況に向かっているのである。
日本は水に恵まれてるから、あんまり深刻に考えたことなかったです。。。
しかも「水」って天の恵みみたいな感覚でいたから、“人工”の偏在性が大きいなんてビックリ!!
でもそうだとしたら日本人はまた騙されたりして損しそう(>_>水資源は、“自然”の偏在性を超え、市場の強弱関係のなかで“人工”の偏在性を加速させながら、世界的に影響を与える深刻な状況に向かっているのである。
日本は水に恵まれてるから、あんまり深刻に考えたことなかったです。。。
しかも「水」って天の恵みみたいな感覚でいたから、“人工”の偏在性が大きいなんてビックリ!!
でもそうだとしたら日本人はまた騙されたりして損しそう(>_<)

 あさおか | 2008.07.31 3:09

しのぶさん、コメントありがとうございます♪
日本人は自然への畏敬の念からくる本源性が高いので、しのぶさんの言うように、水に対しても天の恵みという感覚が無意識に染み込んでいます。
これはとっても大事なことで可能性ですよね。
でも、世界ではそんな意識の薄い人たちが跋扈していて、このままでは日本人はまた騙されることになるかもしれないです。
でもそれは、水をめぐる事実の状況を知らないからだけです。
だから、水をめぐる状況の事実を追求して共認してゆけば、日本人は騙されるどころか、自然の摂理に則って、みんなにとってどうして行けばいいかを最も考えれると思います。

 arinco | 2008.07.31 13:15

>島国である日本では、川や流域、そして水利用はすべて日本の国内で完結しているが、世界を見渡すとこうした日本の状況は、むしろ例外的であることが分かる。
とあるように、日本という国は改めて特殊な国である事を認識しました。大陸側は、地域問題→世界問題となるのが日本だと世界的問題になるまで認識できない事が多くあると思います。だからいざ問題が世界的に顕在化すると後手後手となってしまう。
 しかし当然欠点もあれば利点もあり、
>日本人は自然への畏敬の念からくる本源性が高い
と言われるようにその利点を可能性に変えて行きたいですね。

 匿名 | 2008.08.01 2:02

arincoさん、コメントありがとうございます♪
日本人のもつ利点を可能性にするためにも、事実を追求して共認していくことが唯一の基盤です。
その時に、水を水だけの問題ではなく、環境を環境だけの問題だけではなく、その背後にある市場や政治や国際情勢などを統合して追求する必要があります。
一緒に追求していきましょう。

 ポニーテール | 2008.08.03 0:15

自然の摂理の許容量を超えた偏在的な水量を使用している事が、水不足を招く可能性があるとのことですが、
そもそも、水って、なんで減少しないのか不思議です。
地下水や氷河、淡水、海水、森林保水などによって、ある程度保水されることはわかるのですが、太陽光線によって、気化する水蒸気は、結構あるように思われます。日射熱によって、奪われた水蒸気は、100%に近い形で、大気に放出され雨として地上に戻ってくるのでしょうか?人工発熱量との兼ね合いや、各気流バランスなどによってもたらされる赤道線を挟んで南北で進行している砂漠化現象などを考えると、数百年前と対比してもかなりの水分量が失われているのではないかと危惧するのですが・・・、大丈夫なのだろうか?

 y.suzuki | 2008.08.04 23:22

>今や「水」は、政治、市場の問題が色濃く反映された資源であるという点を抜きにしては捉えられない。>
確かに、るいネットでも、国連が世界水発展報告書を2003年に発表していますが、水をめぐる利権(市場拡大)をお膳立てするという役割であるように思えます。世界平和などという大義名分を謳っていますがあやしいものです。
 その意味で、水不足という危機をあおっているのではという疑いはどうなのでしょうか?
 発表されている降水量についても、どうもCO2の前例があって、定常的なのかどうかさえも疑ってしまいます。
 そのあたりも追求を期待しています。

 匿名 | 2008.08.05 22:41

ポニーテールさんコメントありがとうございます♪
太陽からのエネルギーと地軸との関係で規定されている地球の水そして降雨量は、水循環システムのなかで増えも減りもしていません。
ただし、市場拡大から急速な都市化・砂漠化によって、陸地の降雨量も場所も変わってきていると思います。
このあたりについても、今後追及していきますので、応援よろしくお願いします。

 匿名 | 2008.08.05 22:47

y.suzukiさん、コメントありがとうございます♪
>その意味で、水不足という危機をあおっているのではという疑いはどうなのでしょうか?>
仰るとおり、地球温暖化以降になって過剰に水不足の危機を煽っていますね。
水資源の危機のなかには、この煽りの背後の構造も含まれていると考えているので、追求していきます。
応援よろしくお願いします。

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