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持続可能でない水利用による世界の食糧バブル経済 ①

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なんともキレイな幾何学模様ですね 😀
これなんと、とある農業地帯の衛星写真なのです!
そして、このきれいな幾何学模様が、実は世界の水資源の枯渇問題、
ひいては世界的食糧問題と大きく関わっているのです!
「ええっ!?」 
写真はアメリカ合衆国中部、アメリカ有数の大穀倉地帯
グレートプレーンズにあるカンザス州の農場です。
「なんで円形なの??」
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私たちが世界的な水不足と聞いて、今ひとつピンとこない大きな理由に、「目に見えない水」の枯渇があります。「目に見えない水」とは、すなわち地下の水の事です。今回はそんな、地下の水のお話しです。
まず一言に地下の水といっても、地下水は大きく循環系の水非循環系の水に分けられます。循環系の水とは、滞留時間(循環サイクル)に大きく差こそありますが、川の水の様に降水等により常に補給され、長い時間をかけて流れていく水の事です。(大雑把に河川水は平均13日循環系の地下水は平均830年!!で海にたどり着きます。)
そしてもうひとつ、非循環の水。これは「化石水」とも呼ばれる大昔の水が地下の帯水層に閉じ込められたもの。これは石油と同様に、使ったら減っていくだけで、補充されない水です。あまり知られていませんが、今や世界規模の穀倉地帯の農業が、これら化石水や、溜まるのに長い年月を要する地下の水に依存しているのです。
そこで、冒頭の衛星写真の登場です。小麦をはじめ大豆やとうもろこしを多く生産するこの地域は、カンザス州をはじめ8州にまたがる「アメリカのパンかご」と呼ばれる大穀倉地帯です。日本の輸入小麦も大きくここに依存しています。ところが、グレートプレーンズと呼ばれるこの大平原が広がる地域は、ほぼ全域がステップ気候に属し、全体的に降水量が少なく、河川や湖沼などの地表水が少ない地域なのです。
「なんで大規模農業が可能なの?」
その秘密が地下の水です。この大平原の下には「オガララ帯水層」と呼ばれる氷河期に蓄えられた化石水の巨大な水瓶があるのです。世界最大規模のその総面積は、なんと日本列島の2.1倍!!アメリカ8州にまたがり、グレートプレーンズの農業=アメリカのパンかごをその化石水が支えているのです。
aquifer%5B1%5D.gif
「だからなんで円形の農場なのさ?」
・・・今から説明します。実はこの地域はグレートプレーンズと呼ばれて、長い間放置されていた半乾燥地帯でした。第2次世界大戦後に地球上で最大規模というこのオガララ帯水層の地下水を利用した灌漑により、はじめて大規模農業が盛んになったのです。
そして、その大規模農業の方法が、地下の化石水を揚水ポンプで汲み上げ、センターピボット方式と呼ばれる自走式スプリンクラーで行う灌漑農業だったのです。自走式スプリンクラーとは長大な棒状(1㎞~)の構築物で、時計の針のように円を描きながら散水するため、畑は四角ではなく円状になります。
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したがって上空から見ると、畑は「緑の円」のように見えるのです。そして、その「緑の円」が何千何万にも増えて、世界の一大食糧供給地(衛星写真の姿)になったわけです。
今、その円形農場が危機を迎えています。
化石水は石油同様、限られた水です。大規模に農業用水として動力を用いて一気に汲み上げ使い続ければどうなるでしょうか?世界最大規模の水瓶も水量が激減し、その問題に直面しているのです。そして、同様に中国・インドを初めとして世界の食糧生産を支える大穀倉地域でも同じ地下水の枯渇問題が次々と深刻化しています。その理由は例えそれが循環系の地下水であったとしても、地下帯水層に水が満たされるには長い長い時間が必要だからなのです。
この原因は主に各国政府が地下水を過剰に(持続不可能な量を)汲み上げることによって、増加する食糧需要を満たしていることにあるようです。しかし、この方法ではいったん帯水層が枯渇すれば、食糧生産量が激減することは間違いありません。その影響は日本を始め世界に深刻な影響を与える事になると予想されています。現在の食料大量生産は、本来手をつけてはならない水に依存して成り立っているのです。
各国政府は水収入以上の水国債を大量に発行し、世界規模の「食糧バブル経済」を生み出しているのです。
<参考web>
レスター・R・ブラウン
持続可能でない水利用による世界の食糧バブル経済
http://www.es-inc.jp/lib/lester/newsletter/050612_004405.html [1]

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