2007-07-01

産業界に厳しく、消費者に甘い温暖化対策

京都議定書に基づく温暖化対策は現状どこまで実現されているのか?
日本の現状について調べてみました。
議定書では、日本の温室効果ガス削減目標として、1990年比、6%削減が義務付けされましたが、現状では、下図のように総排出量は減るどころか増え続けている。
これを見ると、目標は本当に実現可能なのか?不可能に近いのではないか、と思えるような現状である。これだけ温暖化対策が騒がれていながら、効果が出ていないのは何でだろう?
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図はhttp://www.glass-fiber.net/kankyo/kankyo2.htmlより引用
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先ず、京都議定書に基づくCO2削減負担は、各国間で異なる。
日本は90年比6%削減となっているが(欧は8%、米は7%)、主要先進国の中で最もエネルギー効率がよく、1CO2トン減らすのに、欧米の1.3~2倍のコストが必要だと言われており、この削減目標はかなり厳しい数値である
また、エネルギー消費量をGDPで割った指標で比べても、日本はアメリカの1/3、ドイツの60%しか使っていない ので、かなり省エネ化が進んでいる状態である。(下図参照)
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図はhttp://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data1028.htmlより引用
これは、70年代に2度のオイルショックを経験し、大きな経済的打撃を受けると共に、省エネルギーの重要性が一般市民の意識にも浸透し、法整備や各種省エネルギー政策の推進などが進められた結果と言える。つまり、日本が経済成長を維持しながら他の欧米諸国と同様に省エネルギー化のスピードを維持すること自体が大変難しくなってきている、ということです。
では何が問題か?、分野別のCO2排出構造はどうなっているのでしょうか?
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http://atomica.nucpal.gr.jp/atomica/pict/01/01080207/05.gifより引用
伸びが多いのは、
民生部門の業務、つまりオフィス、店舗、官庁や学校などの公的部門も含んだもので、2000年度で90年比、+22.2%増加
民生部門の家庭は、同+20.4%増加で、冷暖房、家電、ゴミ処理がその主な排出源です。
運輸部門は、同+20.6%増加で、旅客、自動車
最も排出削減に貢献しているのは、産業部門で同+0.9%、という結果です。
民生部門が多いのは、1990年代にエネルギー価格が下落し続ける中で、家電の大型化、高機能化、IT化の進展により消費が急増した為と考えられます。
しかし、「京都議定書は実現できるのか」平凡社 石井孝明著 では次のような要因についても述べています。
>生協が電力と都市ガスの使用量を2001年までの4年間、全国300世帯の組合員を対象に調べたところ、家族構成の変化でエネルギー消費が増えている可能性が大だと言う。
>単身世帯の電力使用量は4人世帯の一人当たりの使用量のガスで3倍、電気で1.8倍である。また、90~00年に全世帯数の伸びが14%だったのに対し、単身世帯の伸びが37%で、実は、共同生活世帯が減ったことがその最も大きい要因ではないか、ということです。

さらに、消費の伸びが大きいのが運輸部門の自動車であり、’90~’00年の自動車保有台数の伸びは30%に対し、乗用車台数の伸びはなんと56%です。
この中でも、企業が運用している輸送機関については概ね減少傾向と、かなり頑張っている。
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http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kankyou/ondanka1.htm#genjouより引用
つまり、温暖化対策は、産業界に厳しく、消費者には甘すぎるのではないか!と言いたくなりますが、皆さん、どうでしょうか?
これら温暖化対策の難しさについて、元資源エネルギー庁長官の稲川康弘氏は次のように述べています。
>「第一次オイルショックから現在を比べると、国民のエネルギー消費量は約3倍になります。行政側では京都議定書など日本のエネルギー政策の転換ごとに、強めの規制手段をいろいろ考えました。エネルギー税の増額、計画配電、エネルギー利用規制などですが、どれも断念しました。過剰な規制をすることは統制経済になり、日本の現在の社会制度と矛盾します。国民がそれを認めるとは思えませんでした。今でもそうでしょう」
この言葉からは、さらなる温暖化対策の手段としては、聖域である家庭=個人消費に手をつけなければ解決しないこと、さらに、そこにあるのは経済成長という政策目標よりも、もっと根っこにある絶対的な壁=「個人の自由を侵してはいけない」が最大のネックだと政策担当者自身も感じているのではないでしょうか!

List    投稿者 simasan | 2007-07-01 | Posted in H.利便・快美性に呼応する市場の危険性6 Comments » 

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コメント6件

 サクラ | 2007.08.30 1:30

大気中の汚染物質は最後はどこにいくの?ってことですよね。
確かに、すごく不思議。
自然の浄化作用みたいに、霧散してなくなっていくのかなぁ、
くらいにしか思ってませんでした。
ちなみに、余り効果はないらしいのですが、光触媒というのがあって、それにより浄化しようという試みもあるようですよ。
光触媒の仕組みを簡単に説明すると、
紫外線が当たると光触媒が大気中の酸素や水から活性酸素を生成し、
この活性酸素が窒素酸化物を順次酸化させて、
硝酸カルシウムとして光触媒の表面に保持される、
というものだそうです。
う~ん、難しい。

 春風 | 2007.08.31 19:57

確かに、大気中の汚染物質がどこへ行くかってあんまり考えたことなかったです!
>そのうち、都市部では太陽が出たら、常に、“光化学スモッグ警報”状態になってしまう。ということもありえますよね。。。。
なんて恐ろしい・・・
地球規模でみれば汚染物質の生成のほうが浄化作用よりも大きそうな気がするし・・・
もっと追求していく必要性を改めて感じました!(>_確かに、大気中の汚染物質がどこへ行くかってあんまり考えたことなかったです!
>そのうち、都市部では太陽が出たら、常に、“光化学スモッグ警報”状態になってしまう。ということもありえますよね。。。。
なんて恐ろしい・・・
地球規模でみれば汚染物質の生成のほうが浄化作用よりも大きそうな気がするし・・・
もっと追求していく必要性を改めて感じました!(>_<)

 naganobu | 2007.08.31 22:41

コメントを入力してください
ヒートアイランド現象は、暑さだけじゃなくて、汚染物質を滞留させると言う意味でも、問題なのですね。人口密集が様々の問題事象を引き起こしているとも言えますね。

 UJYAKU | 2007.09.03 14:58

>サクラさん
“光触媒”とははじめて聞きました!
う~ん。色々な仕組みがあるものなんですね。。
紫外線は何気なく当たってますが、様々な働きをしていて、改めて地球の上に住む私達生き物や自然の仕組みの不思議さを感じます。
>春風さん
そうですよねぇ。。。問題の1つは浄化が追いついていないという事ですね。やはり、人間が化学的に端的に作り出した物質は自然の摂理の中に組みこまれないのかなぁ~と思います。
>naganobuさん
そうですね。ヒートアイランド現象、、、やはり人口が密集すると、様々な弊害がでてきますね。。土地のキャパシティーを超えて生産性を高めるのは無理があるんでしょうかね、やはり。。

 momo | 2007.11.08 19:35

中学え、調べているのですが、なぜなのでしょうね

 あっぷる | 2010.07.08 1:31

家で出来る光化学スモッグの実験・・・って
ありますか?

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