『2012衆議院選挙直前企画』(5)~地方新聞は原発政策を契機に当事者意識の芽生えを呼びかける
先日の記事
『2012衆議院選挙直前企画』(1)~新聞報道による露骨な「『脱原発』叩き」(読売・産経)~
と題して、全国紙が各政党の原発政策をどのように評価しているのかを分析してみました。
最も明快な主張をしているのが、読売新聞で、脱原発=国力衰退、原発なしでは電力の安定供給ができないことを大前提とし、「脱原発」を無責任だと糾弾しています。
原発事故により産業が大打撃を受け国力を衰退させている現実、原発が停止しても電力供給は可能であり、むしろ核廃棄物処理が確立していないまま原発を使い続けることで電力供給が成立しなくなる現実には全く言及せずに、有権者に原発維持を迫っています。
全国紙は程度の差はあれ、直接あるいは間接的に原子力産業を資金源の一つとしてきた利益追求団体であるのは 事実 。
不偏不党のスタンスや、国民のために報道を行うのは、構造的に難しいのが実態です。
では地方紙の報道はどのようになっているのか?
「地方紙は各政党の原発政策をどのように評価しているのか?」を今回調査してみました。
■中日新聞
【社説】「脱原発」 変革は誰が起こすのか2012年12月6日
ドイツの脱原発にかかわったベルリン自由大学教授のミランダ・シュラーズさんは「市民の決断と行動が社会を変える」と話しています。選挙こそ最大の好機です。
3・11を経験した国民が脱原発を選ぶのか、それとも当面は原発に依存し続けるのか。世界が注目しています。
民主党は「二〇三〇年代に原発ゼロ」、日本維新の会は「既設原発は二〇三〇年代までにフェードアウト」と訴えます。
「卒原発」の旗を掲げる日本未来の党は「二〇二二年をめどに、段階的に全原発をなくす」と比較的明快です。自民党は「十年以内に電源構成のベストミックスを確立する」と、当面は、原発を維持する方針です。
脱原発を積極的に唱える政党も、目標年を提示するのが精いっぱいで、具体的な方法や工程表は明らかにしておらず、判断材料は十分とはいえない。
福島の悲しみは続いています。放射能にふるさとを追われた多くの人々が、異郷の地で二度目の新年を迎えるのです。
ひとごとではありません。地震国日本に、原発の安全を確証できるような場所があるのでしょうか。原発敷地内と周辺で、地震を起こす活断層や活断層かもしれない地層が次々見つかってもいる。
電気料金が上がるとか、経済に影響が出ると言いますが、原発事故で損なわれるものの大きさは、比べものになりまん。もちろん「原発後」の産業、雇用確保は必要です。
使用済み核燃料が、原発内の貯蔵プールからあふれ出そうとしています。処分の場所や方法を世界中が探しあぐねる核のごみ。それでも、原発を動かし続けるのでしょうか。
しかし、問われているのは、それだけではありません。私たち国民が原発に代わる風力や太陽光などの自然エネルギーを積極的に選ぶのか。電力、化石燃料多消費型の暮らしを改め、持続可能な社会へ向かうかどうかの選択です。
私たちは、大切なエネルギーの問題を人任せにし過ぎていたようです。しかしそれでは持続可能な社会ができないことを、思い知らされました。暮らしと産業を支えるエネルギーをどうしたいのかを考えながら一票を行使する。今度の選挙は、そういう選挙です。
日本の選択とは、歴史の一こまでもあるのです。
【社説】「脱原発」新党 民意のよき受け皿に2012年11月28日
3・11後、初の総選挙なのに、大きな争点であるはずの「原発」の議論が欠けていた。嘉田由紀子滋賀県知事が脱原発の新党「日本未来の党」の結成を発表した。民意のよき受け皿になってほしい。
嘉田氏は「今のままでは投票する政党がないとの声を聞く。真の第三極をつくりたい」と述べた。
結集軸として脱原発を前面に打ち出し、地方、女性、子どもの視点を大切にするという。これまでの政治に希望を見いだせなかった人たちに、期待は膨らむはずだ。
十四の政党が乱立する次期衆院選に向け、各党はそれぞれ原発政策を掲げている。だが、スローガン的な公約が多く、今後の原発政策の進め方について、国民には違いが見えにくいのが実態だ。
嘉田氏は「原発のない再生可能エネルギー社会へ向け、原発稼働ゼロから全原発廃炉への道筋をつくる」と明言した。
新党は、脱原発の民意を広く受け止める役割を発揮してほしい。
脱原発を重要公約に掲げる新党が登場しビジョンを示すことで、原発政策の議論が盛り上がることを期待したい。
嘉田氏の構想には、小沢一郎代表の「国民の生活が第一」、河村たかし名古屋市長が共同代表の「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」、谷岡郁子参院議員が共同代表の「みどりの風」が合流や連携に動きだしている。
石原慎太郎氏が代表の日本維新の会は、脱原発の姿勢が不鮮明になったと言わざるをえない。
注文もある。嘉田氏は「卒原発と言っており、卒業までに時間がかかる」と言う。「十年後をメドにすべての原発を廃止」の「国民の生活」や、「予定表を作って原発と決別」の「減税日本」などと最低限の調整は必要だ。
原発ゼロまでのスケジュールや代替エネルギー、電力供給地域の経済・雇用対策について、大きな枠組みとして統一的な考えを示せないものだろうか。そうでなければ、民意は戸惑う。
広範な民意の結集を考えるのなら、共産党や社民党とも協力を探ってはどうか。
琵琶湖博物館の学芸員でもあった嘉田氏は「経済性だけで原子力政策を推進することは、国家としての品格を失い、地球倫理上も許されない」と強調した。
原発事故後の日本は、一体どんな選択をするのか。どんな未来を築くのか。世界も注視する選挙なのである。
■京都新聞
衆院選スタート見極める力を持ちたい 2012年12月05日掲載
原発政策や環太平洋連携協定(TPP)、消費増税、さらに領土外交、景気対策…。多くの難題に直面する日本。その針路を決める衆院選が公示された。
東日本大震災後、初めて実施される本格的な国政選挙である。被災地のみならず、この国の再建の方向を左右する政権選択の場となる。引き続き民主党政権がかじ取りを担うのか、自民党が政権に復帰するのか、第三極の政権参画はあるのか。各党の訴えにじっくり耳を傾け、1票を投じたい。
全国300小選挙区と11ブロックの比例代表(180議席)に、前回の1374人(重複立候補を除く)を上回る1504人が立候補した。現行制度で最も多かった1996年をも上回り、政党も最多の12となった。
京都府の6選挙区では計30人が立候補した。全区で民主、自民の激突に共産党がからみ、複数の区に第三極の日本未来の党や日本維新の会などが加わる構図だ。滋賀県の4選挙区は計18人が立候補。民主、自民、共産が競い、複数区に第三極が挑む。
野田佳彦首相(民主党代表)と安倍晋三自民党総裁は、福島県で第一声を上げた。
野田首相は「福島の再生なくして日本の再生なし」と原発依存社会との決別を訴え、「昔の政治に時計を戻すのか」と政権奪還を狙う自民をけん制した。
安倍総裁は脱原発を「技術開発の結果も分からず結論を出すのは無責任」と批判。さらに「領土や海を守れるのは民主やできたばかりの党ではない」と力説した。
日本未来の嘉田由紀子代表も福島で「卒原発」を掲げ、日本維新の石原慎太郎代表は大阪で「政治が硬直している」と訴えた。
民主、自民と第三極との間で埋没を警戒する他の野党党首も声を上げた。
公明党の山口那津男代表は「防災・減災対策」を強調し、共産党の志位和夫委員長は「消費大増税反対」、社民党の福島瑞穂党首は「脱原発」などを主張した。
だが、各党首の主張からは見えてこない部分も多い。民主は政策の数値目標や道筋があいまいになり、自民は東アジア外交を立て直す具体策などが不明だ。選挙戦ではしっかり説明をしてほしい。
政権交代の熱気から3年。有権者の反応がさめて見えるのは、公約への信頼が崩れ、「決められない政治」に陥った政党への不信の表れでもあろう。政治の信頼回復に向けた具体的な政策論争を各党に望みたい。有権者も甘言に惑わされず、政策をじっくり吟味しよう。日本の未来を決めるのは私たち一人一人の見極める力だ。
地方紙は全国紙ほど露骨な誘導報道は見受けられないが、中日新聞の社説にあるとおり、政治や社会のことを考えなさすぎた事への反省と当事者意識の芽生えを呼びかける論調が注目されます。
当事者意識の芽生えは、やがて共同体の再生に結びつく重要な意識転換です。
★政府に頼らず相互扶助にもとづく共同体づくりを!
■競争社会に変貌
世界の多くの政府が採用するアングロサクソン資本主義が求めているのは協調ではなく競争だ。日本社会が今日のように競争、格差社会になったのも、アングロサクソン資本主義を盲目的に採用したからであり、相互扶助で成り立っていた社会は自己責任の競争社会に変貌した。
しかし同時に、私の周りには政府をあてにすることなく、自らの意識で相互扶助の関係を大切にし、過疎化した村を復興させたり、小規模農業を支援する人々が出てきている。この動きは日本の未来への明るい希望となると私は思っている。 過去最高の不支持率となった野田政権を前に、日本人はそろそろ自分自身の持つ力に気づき、政府に頼らず相互扶助にもとづいて共同体づくりを始めるべきではないだろうか。社会の目的とゴールは、そこで暮らす人々の『幸福』である。心から幸せを望むのであれば、国民自身、政府に頼るのではなく地域社会の中で周りの人々との相互扶助を実践してみること、 それが無政府主義の第一歩ではないだろうか。
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