【2012衆議院選挙直前企画】(3)~原発は即刻やめても困らない!火力発電・天然ガスエネルギー政策の見通しがカギ~
いよいよ今週末は、衆議院総選挙です。
昨日に引き続いて、自然の摂理ブログから情報提供していきます。
今日は、エネルギー政策についてです。各政党のマニフェストから見ていきましょう。
◆ ◆ ◆ 各党のエネルギー政策マニフェスト
完全撤廃をうたっているのは、「日本未来の党」「共産党」「社民党」「新党大地」「新党日本」です。
「みんなの党」は原発ゼロをうたっていますが、規制改革、つまり市場を前提としており、中身に主体性が不鮮明です。
また、“目指す”や“依存しない”や“減らす”など濁しているのが「民主党」「公明党」「国民新党」「新党改革」です。
「自民党」は、稼働の可否の判断を3年も引き延ばすと言い、その間に現在停止している原発を再稼働するでしょう。
また、「日本維新の会」はあいまいに脱原発依存体制の構築とうたっていますが、石原代表の核傾斜言動からして、原発推進でしょう。
直ちに稼働ゼロから、3年の判断期間を要するものまでバラバラですが、改めて、原発って本当に必要?やっぱり、原発に代わるエネルギーを開発しないとやめられないのでしょうか?こちらをご覧下さい。
◆ ◆ ◆ 原子力は即刻やめても困らない
日本では現在、電力の30%を超える部分が原子力で供給されています。そのため、ほとんどの日本人は、原子力を廃止すれば電力不足になると思っています。また、多くの人は今後も必要悪として受け入れざるを得ないと思っています。そして、原子力利用に反対すると「それなら電気を使うな」と言われたりします。
しかし、発電所の設備の能力で見ると、原子力は全体の20%しかありません。その原子力が発電量では30%になっているのは、原子力発電所の稼働率だけを上げ、火力発電所を停止させているからです。原子力発電が生み出したという電力をすべて火力発電でまかなったとしても、なお火力発電所の設備利用率は7割にも達しません。それほど日本では発電所は余ってしまっていて、年間の平均設備利用率は5割にもならないのです。
つまり、発電所の半分以上を停止させねばならないほど余っているわけです。
ただ、電気は貯めておけないので、一番たくさん使う時にあわせて発電設備を準備しておく必要がある、だからやはり原子力は必要だと国や電力会社は言います。
しかし、過去の実績を調べてみれば、最大電力需要量が火力と水力発電の合計でまかなえなかったことすらほとんどなかったのです(図7参照)
(「愚かな核=原子力利用」京都大学 原子炉実験所 小出 裕章氏よりお借りしました。 )
東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否か 6~原子力が無くても日本の電力は不足しない~
原発は今すぐにやめても、問題ありません。
現在すでにある火力発電で、十分まかなえるのです。そうすると次に気になるのは、火力発電の燃料です。燃料の安定供給、そしてコストの安定も必要になります。
◆ ◆ ◆ 火力発電の燃料は、何でまかなうのか?
火力発電の燃料は主に石炭、LNG(液化天然ガス)、石油です。火力発電に占めるこの3つの燃料の割合を見てみましょう。
出典:2008年度実績(資源エネルギー庁「電源開発の概要」)を元に株式会社早稲田環境研究所が算出(石油、石炭、LNG以外の火力発電は考慮していない。)
現在は、天然ガスが火力発電の燃料の中で最も大きく44%を占めています。
そして、日本において、その天然ガス輸入先は、アジアが多く、中東が2割強です。
では、その天然ガスの埋蔵はどうなっているでしょうか?
天然ガスは世界各地に豊富な埋蔵量が確認されています。
北米でも天然ガスが余っているようで、日本に輸出したいようです。
北米の天然ガス市場。10年来の安値で、100万BTU当たり$2.5米ドル程度の相場。先日届いたカナダ大手銀行のレポートでは2012年と13年の予想を大幅に下方修正しています。
理由は需要低下、供給過多、シェールガスの非在来型ガスの登場などいろいろです。そして、最大のネックは液化天然ガスの最大消費地、日本と韓国に送る手段がほとんどないことであります。アメリカもカナダもその輸出基地建設のために準備が進んでいますが、LNGのサプライチェーンは極めてプロセスが複雑で大規模になるためカナダはこのままのペースなら2015年頃からの出荷になります。つまりあと3年。アメリカもオレゴンで計画が進んでいますが、これも時間がかかると思います。
天然ガス産出会社は生産調整を行っており、2-3割の減産となっています。目先、更なる減産もありえる状態です。
唯一の希望はアジア市場であり、輸出基地が出来れば現在16ドル台、スポットで18ドルとも言われるLNG市場に入り込むことが出来ます。輸出原価が今の市場価格程度なら9-10ドルといわれていますから利幅も大きいと考えられています。更にカナダBC州の場合、天然ガスのロイヤリティ収入がこの6年で五分の一程度まで落ち込んでおり、積極的に売り込みたいのは山々でしょう。
しかし、私は仮に「北米産LNG」がアジア市場に入ってくればLNGの市況は大きく緩むと思います。もともと輸送手段がなくアメリカやカナダで使い切れない状態だったわけですから安値攻勢とは言わないまでも価格が下向きのバイアスになりやすくなるでしょう。
これは日本の電力にとってはプラスな話になりえます。また、この3年の間には日本での中長期的な電力政策の見直しが進むでしょう。そして、可能性としては電源供給は一般住宅の太陽光パネル、燃料電池の更なる普及をはじめ、企業の自家発電設備の普及を含む分散型になるような気がします。それは石油の需要も下がるし、LNGの需要も下がることになるかもしれません。
こう考えれば電力価格は目先、一時的には値上げがあるとしても長期的には下向きになるような気がいたします。少なくとも天然ガスは北米のガラパゴスであり、余っているという認識は意味があるかと思います。
「天然ガスは、余っている!」より引用させて頂きました。
現在、日本のLNG輸入価格は、他国と比較しても何倍も高額(アメリカ現地価格の8~9倍)です。
これは、アメリカとの交渉に敗北し続けるだけだからです。
しかし、この記事のように需要低下、供給過多、シェールガスの非在来型ガスの登場から天然ガスは余っており、今後天然ガスの価格は下向きになっていくのです。
そのため、今後は更に、天然ガスが火力発電の燃料の中で占める割合を高めてゆくと想定されます。
にも拘わらず、政府はLNGの輸入価格を引き下げるための外交努力をまったく行うこともなく、ただ「原発をやめれば電気代が高くなる」と言っているだけ、というのが実情です。
それに対して、【新党大地】では、このようなマニフェストがうたわれていました。
▽ロシアから北海道への天然ガス・油のパイプライン化
▽原発ゼロに向けロシアと共同で最終処分場の建設、廃炉の研究を推進。
これが本当に実現できたら、北米産LNGの輸出基地建設に3年かかるという問題を解決し、LNG輸入価格は一気に下がると考えられます。
実際に原油の例ですが、ロシアからの輸入が増えています。
■ ロシアの原油で、日本の中東依存度は低下
原油をタンカーで運ぶのに、中東からは20日かかるが、サハリンやナホトカからならほぼ3日で来る。日本近海も安全な海域で海賊等の心配も無く、近距離からの安定的な輸入が実現出来るのが日本としてもありがたい。
また、中東産原油には厳しい規制があり、購入者は転売が出来ないが、ロシア産にはこのような規制が無い等の理由から、日本のロシア原油への依存度は上昇した(逆に中東原油=アメリカの中東依存度は減少傾向にある。)
この、極東に向けた石油パイプラインが構築されれば、日本の依存度は益々上昇すると考えられる。
⇒★日本のロシア原油への依存度が上昇し、逆に中東への依存度が低下し始めた。
⇒★その結果、日本の中東離れ→米国離れが表面化し始めてきた。
「日本を守るのに、右も左もない」より引用させて頂きました。
天然ガスが世界的にある程度潤沢にあるのであれば、日本にとって燃料問題は“外交問題”です。
原油のように、アメリカの息のかかった中東やアジアべったりではなく、多面的に外交の対象を拡げていれば、天然ガスの量とコストを安定して獲得できるのです。
そして、将来的には日本近郊のメタンハイドレードの採掘技術を向上させ、日本国内で自給自足できるようになればいいのです。
◆ ◆ ◆ どのような火力発電がよいのか?
一方、火力発電と一言で言っても、様々な機関を用いた発電方法がありますが、火力発電の効率も可能性が日進月歩で見いだされています。
この中で、最も効率が良いのが、コンバインドサイクルです。コンバインドサイクルとは、ガスタービンを回したあとの残りのエネルギーで蒸気タービンを回す発電方式です。
日本未来の党と合体しましたが、国民の生活が第一では、このコンバインドサイクルに着目しているようです。
「エネルギー政策の大転換」で、10年後を目途に全ての原発を廃止する。そのために、日本の省エネルギー技術と再生可能エネルギーの普及、効率の良い天然ガスコンバインドサイクル火力発電、さらにエネルギーの地産地消を強力に促進する。
それにより、原発立地地域をはじめ、地域経済の発展と雇用の拡大を実現する。
では、コンバインドサイクルは、どのくらい、その他の火力発電よりも効率がよいのでしょうか?
オレンジのラインが一般的な汽力発電、緑がコンバインドサイクルによる発電の効率です。
汽力発電は45年かけて5.6ポイントと徐々に効率を上げてきたのに対し(1960年の発電効率39.4%が2005年には45.0%)、コンバインドサイクル発電は1985年に1100℃級のガスタービンが登場して以来わずか22年で、12%もの効率向上を果たしてきた(1985年の発電効率47.2%が2007年に稼動した川崎火力発電所では59.0%)。
最新では、さらなる高効率化を求め、1700℃級のコンバインドサイクル発電の実用化に向けた技術開発も、国家プロジェクトとして進行しているそうです。これによって発電効率は63%程度に上がると期待されています。
◇ 地域分散型エネルギーシステム(エネルギーの地産地消、消費者=生産者)の可能性
また「国民の生活が第一」のマニフェストには、エネルギーの地産地消、それによって雇用の拡大というものがあります。
これは、「エネルギーの消費者が供給者になる」ということだと思います。
住民自らが自分たちの、そして地域のエネルギーをどうしていくかという課題の当事者となれば、エネルギー自給の問題においても、さらにはエネルギーの無駄削減においても、もっとも有効な解決策だと思います。
『次代を担うエネルギー・資源』火力発電の可能性7~「これからは、エネルギーの消費者が供給者になること」~
◆ ◆ ◆ まとめ
まず、「原発はなくても困らない」ので、出来る限り早く廃止する。
その上で、
・今ある火力発電の燃料である天然ガスの輸入を安定させる。
・火力発電の効率を上げる(コンバインドサイクル)。
が課題となる。
そして更に、
・地域分散型エネルギーシステム(エネルギーの地産地消、消費者=生産者)
を構築してゆくことが次代のエネルギーの可能性。
これらをマニフェストにあげているのは、
原発廃止 :「日本未来の党」「共産党」「社民党」「新党大地」「新党日本」
天然ガス輸入安定 :「新党大地」
コンバインドサイクル :「日本未来の党(国民の生活が第一)」
地域分散型エネルギーシステム :「日本未来の党(国民の生活が第一)」
これらに合わせて、自然の摂理に則った再生可能な新エネルギーの追求が必要となります。
続いて、新エネルギーに関する各党のマニフェストと可能性をみていきます。
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