2012-12-08

『2012衆議院選挙直前企画』(1)~新聞報道による露骨な「『脱原発』叩き」(読売・産経)~

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画像はこちらからお借りしました。
 
12月16日に行われる第46回衆議院選挙は、昨年の3.11大地震+原発災害を経て、初の国政選挙となります。
とりわけ原発災害に際し、大手マスコミは都合の悪い事実を隠蔽した政府・官公庁・電力会社の発表情報を垂れ流していたことが露呈し、人々のマスコミに対する不信感が一気に顕在化しました。
よって、今回の選挙結果は、マスコミの影響度=支配度がどれだけ衰退(残存)しているかを測るバロメーターであると言えます。
 
【参考】
○三極対立はメディアの捏造!現実は明白な二極対立!!~メディア対主権者国民の戦いでもある
○マスコミの“再利用”
 
つまり、今回の選挙の本質は、「マスコミ主導の共認支配vs事実に基づく共認形成」にあり、「原発、TPP、税制」といった具体課題を通しての判断に顕れることになります。
 
しかしながら、人々の意識は、事実に基づく共認形成に向かい始めていますが、選挙における明確な判断軸・根拠が見いだせずに、不信感を抱きながらも結局マスコミ情報に流される危険性もあります。
 
そこで、本ブログでは、自分たちで可能性を判断する材料を少しでも増やすべく、選挙前の特別企画として、本ブログで扱っているテーマと関連性の高い「原発」と「TPP」に関して、本日より投票前日の12/15(土)までの間に合計8本の記事を配信していきます。

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第1回は、原発政策に対する新聞報道に関する記事です。
 
原発政策は、今回の選挙で国民が着目する論点のひとつであり、新聞各社も諸政党の政策を取り上げ、紹介や批評を行っています。
しかし、批評と言うよりも、露骨な「『脱原発』叩き」を展開しているのが、読売・産経の2社です。
 
◆ ◆ ◆ 「脱原発」を徹底的に叩く新聞報道 ~読売・産経~
読売新聞の11月29日の社説と、産経新聞の12月1日の社説を以下に転載します。

日本未来の党 「卒原発」には国政を託せない(11月29日付・読売社説)
 国力を衰退させる「脱原発」を政治目標に掲げる政党に、日本の未来を託せるだろうか。
 日本未来の党が、正式に発足した。代表に就任した嘉田由紀子滋賀県知事は「卒原発プログラム」を作成し、徐々に原発を減らして10年後をめどに原発ゼロにする意向を示した。
 「脱増税」「脱官僚」「品格ある外交」など抽象的な言葉ばかりを掲げている。経済や社会保障、安全保障といった重要なテーマでさえまだ政策がない政党だ。
 嘉田氏が「この指止まれ」と呼びかけたように見えるが、実態は国民の生活が第一の小沢一郎代表や、民主党を離党して新党を結成した山田正彦元農相らが根回しをして、合流を決めたものだ。
 空疎なスローガンと、生き残りのために右往左往する前衆院議員たちの姿には、政治家の劣化を痛感せざるを得ない。
 嘉田氏が掲げる「卒原発」は脱原発と大差はない。それだけでは願望に過ぎず、無責任である。
 電力の安定供給や代替エネルギー確保、経済・雇用対策、原子力の人材育成などについて現実的な計画を明確に示すべきだ。
 結党に際して発表した「びわこ宣言」には「原発事故の潜在的リスクが最も高いのは老朽化した多数の原発が集中立地する若狭湾に近い滋賀県」とある。電力供給の恩恵を受けておきながら、原発立地自治体への配慮が不十分だ。
 滋賀県の利害のために国政に進出するとの発想も改める必要がある。嘉田氏は知事と党首との兼務が可能かどうか悩んだという。政党運営の経験がないだけに、両立には困難が伴うに違いない。
 小沢氏が名称にもこだわった政党をあっさり捨てても、驚くには当たるまい。党首として前面に出たくなかったのだろう。その分、未来の党の公約原案には小沢氏の従来の主張が反映されている。
 日本維新の会と連携できず、民主党離党組の党だけでは選挙戦で埋没する。クリーンイメージの嘉田氏を「表の顔」に担ぎ出して巻き返そうと考えたようだ。相変わらずの小沢流である。
 「決められない政治」で既存政党に対する国民の不信感が高まる中、急ごしらえの新党の離合集散が目立っている。だが、新党は、国政を担う能力に疑問符が付き、政策も大衆迎合色が濃厚だ。
 有権者はそのことを十分理解した上で、新党の真価を見極めることが重要である。
(2012年11月29日01時32分 読売新聞)

産経新聞 社説「サンケイ抄」 12月1日
(1/2ページ)
(2/2ページ)
 師走恒例の顔見世興行ばりに、大向こうから「いよッ! ご両人」のかけ声がかかりそうだ。1週間前には影も形もなかった「日本未来の党」が産声をあげたが、その立役者となったのが、小沢一郎元民主党代表と嘉田由紀子滋賀県知事のお二人である。
 ▼「剛腕」と「卒原発」の相乗効果は大きく、衆院選公示を目前にしたわらにもすがりたい面々が門前市をなしている。民主党から出馬が決まっていたのに突然、新党に走った前議員もあらわれた。
 ▼義理や人情は昭和の昔に絶滅し、離合集散は世の習いだからとやかくいわない。いわないが、永田町に政治家といえるヒトがめっきり減り、重度の落選恐怖病にかかった渡りドリだらけになってしまったのは嘆かわしい。
 ▼それにしても「小沢一郎」はしぶとい。秋波を送っていた橋下徹大阪市長との連携がうまくいかないとみるや、流行の反原発感情に目をつけたのはさすがだ。新幹線に飛び乗って女性知事を口説き落とした手腕は余人にはまねできない。
▼小欄も「いよッ! 壊し屋」のエールを送りたいが、民主党からの出馬を断念した鳩山由紀夫元首相をぜひ仲間に加えて衆院選に立候補させてやってほしい。未来の党の公約には、鳩山民主党が掲げた月2万6千円の子ども手当も最低保障年金も東アジア外交重視もすべて入っているのだから、入党資格は十分備わっている。
 ▼小沢、鳩山の二枚看板がそろえば、十数もの政党が入り乱れてぼやけかけてきた「民主党政権の総括」という争点がはっきりする。新党がかぶっている「卒原発」の甘い皮を一枚めくると、約50人もの元民主党議員がひしめく「本家民主党」であることが有権者によくわかるはずだ。

読売は、脱原発=国力衰退、原発なしでは電力の安定供給ができないことを大前提とし、「脱原発」を無責任だと糾弾しています。
しかし、原発事故により産業が大打撃を受け国力を衰退させている現実、原発が停止しても電力供給は可能であり、むしろ核廃棄物処理が確立していないまま原発を使い続けることで電力供給が成立しなくなる現実には全く言及せずに、有権者に判断を迫っています。
 
【参考】
○【原発関連情報】そもそも原発が止まっても”停電”も”電力不足”も起きない
○『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電10~計画通りに進まない“再処理”計画~
 
産経に至っては悪口の域を出ない内容を社説として掲げている状態です。
 
なぜここまで露骨な「脱原発叩き」に走るのでしょうか?
 
 
◆ ◆ ◆ 「『脱原発』批判」と「原発推進広告」の関係
この露骨な「脱原発叩き」は、複雑怪奇というよりも、極めてシンプルな構造ゆえに起きている現象だと言えます。

 全国紙は事故の直前まで、原発の広告を盛んに掲載し、原発マネーで潤っていた。その結果、原発の安全性を指摘する記事はタブーとなり、事故を未然に防げなかった。過去1年分の広告を調べたところ、なかでも読売新聞が全面広告だけで10回と、群を抜いて原発をPRしていたことが分かった。しかも、なんと読売は現役の論説委員まで広告に登場して原発を宣伝。さらに、電力業界からのカネで運営していることを隠すため、「フォーラム・エネルギーを考える」「地球を考える会」「ネットジャーナリスト協会」といったダミーのNPO法人らを複雑に絡ませ、一見すると市民運動であるかのように見せかけつつ原発を盛んに喧伝するという悪質な手法を多用していた。もはや読売は、国策推進のためのPR紙というほかない。
~中略~
◇原発全面広告・新聞ワーストランキング
 CM、雑誌広告に引き続き、新聞の原発広告に疑問を持った筆者は、実態を調べるため、図書館に向かった。調査対象は、全国紙の朝日、読売、毎日、日経、産経新聞の1年間分(2010年4月1日~2011年3月31日)の原子力発電所のことが前面に出ている原発の全面広告とした。「原発全面広告・新聞ワーストランキング」は、以下の順になった。
 順位  新聞  原発全面広告掲載回数
第1位 読売新聞 10回
第2位 産経新聞  5回
第3位 日経新聞  3回
第4位 毎日新聞  2回
第5位 朝日新聞  1回
~後略~
原発広告ワースト1の読売 編集委員も動員、ダミー団体で電力業界の“黒いカネ”隠す『MyNewsJapan』より

読売は社主であった正力氏が、初代原子力委員会委員長となり、日本テレビや読売新聞を駆使して原子力産業を推進してきており、現代に至るまで重要な資金源となっています。
つまり国力の衰退ではなく、自社の資金源の衰退を危惧しているのです。
 
【参考】
○正力松太郎とアメリカCIAとの関係(原子力発電に関して)
○アメリカ→中曽根→正力→原発派によるマスコミ支配の現状
 
産経新聞も広告を積極的に掲載するとともに、電通、博報堂などの広告代理店と並んで、ダイレクトに政府の原発安全性広告費を受け取る事業を請け負っており、原子力産業の衰退は自社の死活問題に直結するのです。
 
【参考】
○追跡 原発利益共同体「毎年税金60億円 電通・博報堂・産経新聞社など事業請け負い」
○原発推進に必死な産経と自民党の悲しいふところ事情
 
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
読売と産経は突出していますが、全国紙は程度の差はあれ、直接あるいは間接的に原子力産業を資金源の一つとしてきた利益追求団体であり、不偏不党のスタンスや、国民のために報道を行うのは、構造的に難しいのが実態です。
 
大手メディアからの情報は、そのメディアの立ち位置を判断する材料と認識するのが妥当です。
今回の選挙で、たとえ不完全でも、自分たちで事実を追求し、発信⇒共認形成に携り、判断していくことが、まっとうな政治体制を生み出す入口になると思います。

List    投稿者 aironGst | 2012-12-08 | Posted in V.2012衆議院選挙直前企画No Comments » 

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