2007-03-21

ダイオキシンって危険なの?(2)

前回に引き続き『ダイオキシンって危険なの?』を考えてみます。






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画像は国立環境研究所からお借りしました


今回は『ダイオキシン類はどこからどれくらい発生してるのか?』を取上げたいと思います。



環境中のダイオキシンを考える上では、次の2つをはっきりと区分しておく必要があります。

①現在、刻々と環境に出ているダイオキシン

②むかし環境中に出て、分解されずに残っているダイオキシン



まずは①についてみていきます。


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ダイオキシン類の発生源及び排出量













排出源内訳及び総排出量
焼却産業TEQ値
199794%6%7,400g
199891%9%3,500g
199989%11%2,700g
200088%12%2,200g
20011,800g

ダイオキシン類のほとんどはまずは大気に出ています(水に出るのはせいぜい0.1%台程度)。



1997年以前、日本ではダイオキシン類がどこから発生しているのかについては、’90年頃のラフな試算しかなかったが、’97年から環境庁(現:環境省)が調査を始め、’01年12月18日付けの報道資料に1997~2000年の見積もり結果が書かれています。

簡単にまとめるとともに、環境省が見積もった日本の総排出量(TEQ値)を概数にすると右表のようになります。



※なお、最新版として環境省より『ダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー)(平成17年11月)』が出ているので詳しくはそちらを参照してください。



つまり、ダイオキシン類のおよそ9割が焼却(主にゴミ焼却)から発生しています。

毎年、「焼却」は一般廃棄物と産業廃棄物が全体の8割以上を占め(ほかは小型焼却炉と火葬場)、「産業」の95%近くは金属工場が占めています。

(※なお、各国のダイオキシン排出源はさまざまではあるが、そのほとんどが「物の焼却」から大気に出ています。)





また、ダイオキシン類については「日本はヨーロッパに10年遅れていた」という声がありましたが、これはオランダやドイツなどのEU諸国が1980年代末から’90年初頭にかけて焼却施設の見直しを進め、数年間に排出量を大きく下げました。都市ゴミ焼却だけをみると、ドイツでは’91年の400gから’95年の50gを経て’97年の4gまで、オランダは’91年の380gから’95年の3gまで減らしたと言われています。



そして、これがゴミ焼却をひたすら問題視する日本のダイオキシン対策を加速しました




ダイオキシンは天然物

ダイオキシンは「天然には存在しない毒物」と誤認されている方も多いようですが、前回も述べたようにダイオキシン類は、炭素C、水素H、酸素O、塩素Clというありふれた四元素の化合物です。

四元素を含むものを高温(数百℃)にさらせば微量ならからず出来ます(800℃以上の完全燃焼ならゼロ)。どのような生物体もこの四元素を含み、例えば木を燃やすだけでもダイオキシン類は発生します。

(※ちなみにアメリカ国内の発生源内訳の試算(’98)では約24%を火事・森林火災が占めています。)

地球上に森ができたのはおよそ3億年前で、そのころから山火事は起こっています。つまり、ダイオキシン類は3億年も前から地球上に存在し続けている天然物のひとつと見て良いと思われます。



1トンの木を燃やした時にダイオキシンがいくら発生するのかは断定はしにくいが、過去の報告などからTEQ値でおよそ1~10μgになります。

世界で1年間に燃えるバイオマスの量は50億トンとも87億トンとも言われており、発生するダイオキシン類のは10~100kgになります。それが地表から3km上空のまでの大気にまんべんなく分布すると、1立方メートルあたりの量は0.01~0.1pgになります。



この値は、よく引用されるスウェーデン郊外の大気中濃度(’91年;0.013pg)や日本の「一般環境」の平均値(’00年;0.014pg)に近くなっています。

これらのことから推測されるのは、0.01pg/程度のダイオキシン類は3億年前から大気中に存在してきたのではないでしょうか。




ダイオキシンは有機塩素化合物の大量使用により増加






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琵琶湖・南湖の底質(堆積層)を分析している。水深5mの底質を深さ80cmまで採取し、スライスした層ごとに、年代測定とダイオキシン濃度測定をした結果、右図にようになっています。



一番古い試料の堆積年(1846年)は江戸時代であり、深さ方向の混じり合いがあまりなかったとすれば、ダイオキシンの量は現在の1/3程度になっています。もちろん、これはダイオキシンの分解がゼロであると仮定した場合のことであり、PCDDが徐々に分解するなら、江戸時代も現在と同じ濃度であった可能性もあります。



’50年代以降は、新たにPCDF(ポリ塩素化ジベンゾフラン類)が加わったほか、濃度が急増したのち、横這いか漸減の傾向をみせている。’30~’50年代からのダイオキシンの急増は他都市の環境試料でも見られ、その背景には有機塩素化合物(農薬、ポリマーなど)の大量使用があるのは間違いなさそうです。



また、日本のゴミの量は’80年代に大きく増えましたが、少なくとも’87~’93までの焼却率はほぼ一定(73~74%)だったことをから、ゴミ焼却量も急増しますが、グラフの結果がそのまま「ゴミ焼却量の変遷」を反映しているとは思い難い結果になっています。






ダイオキシンの増加には’50年代以降の有機塩素化合物の大量使用が大きく影響していることは間違いないようですが、これと焼却(ダイオキシン発生)がどのように関係しているのかはまだまだ調べてみる必要がありそうです。



長文にお付き合い頂きありがとうございました m(_ _)m



by 村田頼哉


<参考文献>

 ・ダイオキシン(神話の終焉)/渡辺正、林俊郎/日本評論社





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List    投稿者 yoriya | 2007-03-21 | Posted in K01.ダイオキシン1 Comment » 

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