世界のトイレ事情~下水道に頼らない『エコサン』とは?~
こんばんは かっし~です
ヤフーでこんなニュースを発見
リサイクル下水、飲むしかない…干ばつ豪、08年から
オーストラリアで干ばつによる深刻な水不足から、飲料水にまで影響 そのため、下水を飲料用にリサイクル処理した水を使用せざるをえないというものです
人々の反発は大きいようですが、飲料水ではなく、トイレで流す水が優先されるとは、矛盾だらけのように思います
ここでは、下水の質が問題とされていますが、今までのブログでも述べてきたように、現在の、生活雑排水を全て下水道に流して、下水処理施設で処理することは色々な面で問題点を抱えているということです 👿
今回は、いよいよ、下水道に頼らない、新たなウンチ・オシッコの行方のお話です
下水道ではない、かといって、日本古来の汲み取り式便所ともちょっと違う、処理方法に可能性はあるのか
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ところで、皆さん、日本ではつい最近まで汲み取り式便所が主流でしたが、諸外国がどのような処理方法を行っているかご存知ですか
実は発展途上国や北欧などを中心に下水道以外の方法が古来より用いられており、現在でも形を変えて使用されています 😀
これらの国々にとって、下水道や浄化槽というのは、先進国や国際支援を受けても、ごく一部の大都市以外には費用や技術面でも手の届かない難しいもの 😥
しかし、日本のような、いったん貯めてから汲み取る、いわゆるボットン式は、汲み取りの手間や習慣的な面(宗教的理由など)でも行われてきませんでした。
それに変わって古くから取り入れられている方法が、汲み取り式でもない、浄化槽・下水道方式でもない、日本人の知らない新たな方法、それがエコサン(エコロジカルサニテーション)なんです 😀
エコサンとは『生態系を考慮した衛生対策』を意味し、以下のように定義されています。
糞便の運搬媒体として水を利用しない
人のし尿を土壌改良および食糧生産のために再利用する
し尿は分離して収集する←病原体を完全に死滅させるため
伝統的に使われていた方法もあれば、それに改良を加えて新しく開発された技術や設備もあります。
中国や東南アジア、南米などで広く使われていますが、北欧やアメリカでも、数千台も普及している、新しく開発されたエコサンがあります
エコサンは、その処理方法によって、2つにわけることができます
以下、「エコロジカル・サニテーションの概念とわが国への応用について」、山田恵著よりご紹介です
脱水に基礎を置くシステム
尿と糞便を分離して収集し、糞便は加熱・換気・土や灰の投入によって、含水率を25%以下にするもの。これにより、病原菌は死滅し、臭いやハエの繁殖もしなくなります。
代表例
・並列貯槽脱水型トイレ(ベトナム)
(写真が少し見づらいですが・・・)これには2つの穴があり、それぞれ中には糞便専用のを貯蓄槽があります。尿がはこれとは別の溝にし、そこから尿を集める壺に流れこんでいきます。集積された糞尿はともに肥料としてつかわれています
特に、糞便は、トイレを使用する度に灰をかけ(水分吸収、悪臭・ハエの発生の防止)、1つの3/2までいっぱいになると、残る3/1に土を入れて蓋をし完全密閉します。
もう1つの槽を使用しているその間、蓋をされた方では肥料化が進むというわけです。これは、エコサンの古典例で、この概念は脱水を基礎と置くシステムの多くに用いられてきました
・WNエコローゲン(スウェーデン)
見た目は洋式トイレですが、
糞便と尿を分けて回収・処理すること(手前の受け口が尿、奥の黒い穴が糞便用)
尿を流す時だけ、洗浄水を流すこと(男性用公衆トイレと同じですね)
という点で異なります。尿はパイプを通って地下タンクに貯蔵され、肥料として使用されます
糞便とトイレットペーパーは便器の下の貯槽に別に回収され、いっぱいになった貯槽は6ヶ月ほど地下貯蔵所に保管した後、さらにコンポスト容器に移し2次処理や焼却処分されます
分解(堆肥化)に基礎を置くシステム
バクテリア、菌類、ミミズ、寄生虫などの生物を利用することによって有機物を分解し、堆肥化するというもの。そのためは、分解が行われやすい湿度(60%以上)と物質(窒素・炭素)を加える必要がある。湿気と窒素は尿(そのため糞尿の分離は行わない)、炭素はおが屑、野菜屑、麦わらなどを加えることにより適正環境を保つようにしています。
代表例
・Clibus Multrum(スウェーデン)
50年以上前にスウェーデンで開発され、北米やオーストラリアなど、一般家庭や公共施設に1万台以上普及していると言われています 尿・糞便・家庭の生ゴミをまとめて処理するタイプです。
下の堆肥化槽の構造は様々ですが、基本的には日本の家庭の庭でも見られる生ゴミコンポストと同じで、充分に堆積した糞尿と生ゴミの山の中で、上から貯まり、下の古いそうが時間がたつにつれ堆肥化していくので、下から堆肥化したものを取り出し、肥料や土壌改良材として利用されています このようにして作られる腐植土は一人当たり年間10~30リットル程度だそうです(意外と少ない気がしますが、分解が進むと塊は減量し、投入した量の10%未満にまでなるそうです)
・カルーセル(ノルウェー)
こちらもノルウェーで長年使用され、アメリカやスウェーデン、オーストラリア、ニュージーランドでも使用されています
(写真がお見せできないのが残念ですが・・・)な、なんと、トイレの下にある堆肥化槽が回転しちゃうんです
堆肥化槽は丸い大きな外部タンクとその中に少し小さい内部タンクがあり、さらに内部タンクは回転軸を中心に回転
内部タンクは4つに区切られており、1つが満杯になると回転し、次の槽へ・・・と糞尿が貯められていきます。すべての槽が満杯になるまで少なくとも1年はかかるように設計されており、その間に古い槽から徐々に堆肥化が進んでいくというものです。
これなら堆肥化が完了する前に使ってしまったという心配もありませんね
世界のトイレ事情を見てると、日本の肥溜めも含め、
何を肥料化するか(尿のみ、糞便のみ、全て一緒など)
どのように肥料化するか
の違いはありますが、全て『人糞を下肥として利用すること』が大前提となっています。
そこには、『下肥=危険、不衛生』という観念はありません
(人糞は危険か?!については、当ブログ・ヨネザワさん『コレラの流行も人間の排泄物が原因??』をどうぞ )
そしてこれらの地域は、経済的側面や自然環境の面から、エネルギーを浪費できない国々がほとんどです 🙁
『日本人はウンチを処理するために、石油を輸入している?!』でも述べましたが、下水処理は大量の石油を消費しています。そして、石油だけでなく水も同様です 👿
これらの水は、自然本来の循環系からは外れたところにあり、ただ浪費するためだけの水となります。これらの水を自然のろ過機能がもつ力と同様に綺麗にしようとすると、さらに大量のエネルギーを消費することになります
また、下肥を利用しなくなった日本や先進諸国では、変わりに大量の化学肥料や農薬が使用されていますが、これらももちろん、製造には多くのエネルギーを消費しているのです
発展途上国や自然環境の厳しい地域(北欧など)では、エネルギーを大量消費することができません(大量消費しようとすれば、オーストラリアの干ばつのような自体になりかねません)
だからこそ、自然の摂理に則った方法での自然エネルギーの循環のための技術が発達したとも言えます。
日本も、下水道が普及したのは、1970年の貧困の消滅以降のこと。そして今でも下水道=最先端の処理方法としてもてはやされています。
いくら水資源が豊富な日本とはいえ、河川のコンクリート舗装、上下水道の普及により、本来の循環系の水資源は少なくなってきています。
この状態が続くことにより発生し続ける大量のエネルギー消費→環境破壊に比べ、糞尿を水で流すことによって得られる清潔感はほんとに目先のことでしかないということが、世界のトイレ事情からもよくわかりますね
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コメント4件
にっしん | 2007.02.23 19:44
>更に、安全対策や廃炉対策などを含めると算出投入費は1.0に近づくだけでなく、割り込むことになります。
って、どういうことを示すのでしょうか?
賭けたエネルギーよりも得られるエネルギーが小さい。
・日本の国債みたいな感じ?
収入<支出・・・・いづれ借金まみれ
・日本の農産物みたいな感じ?
政府の補助なしでは収入=生活にならない。
うう~ん。イメージが付きにくい。
日本の原子力発電事業も実は赤字で、国の補助を得てやっと成り立っていると言うことでしょうか?
Honda | 2007.02.25 14:19
原子力発電は、石油を利用した火力発電よりCO2を多く出している。
原子力発電による電力価格は、国費の投入によって、やっと事業が成立するようになっている。火力発電に比べて、極めて効率の悪いシステムである。
これを、CO2発生量という視点から見ると、
>8-3 原子力発電
> 原子力発電については、室田武氏によって詳細な検討が行われている。室田氏の試算は、米国エネルギー研究開発局ERDAが行った100万kW級の加圧水型軽水炉の試算をもとに、実際の原子力発電所の操業実態を考慮した補正を行ったものである。ここでは室田氏の試算の結果だけを示す。詳細は原著を参照されたい(室田武著「新版原子力の経済学」日本評論社,1986年)註1)。
> 試算では、当該原発が廃炉までに産出するエネルギー総量は304億kWhである。熱量に換算すると26.1兆 kcalになる。この産出量に対する石油の投入量は78.3兆~510.3兆 kcalになる。ここに大きな幅があるのは、放射性毒物の保管期間をどう取るかによる。前者はプルトニウムの半減期である24000年、後者は半減期の10倍の240000年を保管期間としている。エネルギー(投入石油のエネルギー量に対する)の産出比は0.051~0.333≪1.0となり、石油エネルギーに代わって原子力発電が基本エネルギーになることはありえないのである。
> これに対して、直接石油火力発電で石油を燃やす場合、304億kWh(26.1兆 kcal)を産出するために必要な石油の投入量は、74兆~87兆 kcalになる(産出比=0.35~0.3)。試算によれば、原子力発電は石油の利用効率においても、石油火力発電よりも劣るのである。つまり石油は、原子力発電を行わずに、直接石油火力発電所で燃料として使用した方が石油の節約になるという結果になる。原子力発電は石油と資源を浪費するだけのシステムである。蛇足であるが、原子力発電は同一の発電量を得るためには、石油火力発電より余計に二酸化炭素を排出するのである。(リンク)
のように、まったく抑制効果が無い。あるのは、幻想価値を高めたシステムを販売(輸出・技術提供も含む)する側の利益と、軍事技術への転用くらいか?
メディカルテクニカ | 2007.02.25 16:19
はじめまして
mobanama | 2007.02.23 9:14
とりあえず
>1980年後半から世界の原発建設は止まったままになっています
ここの認識は誤っています。
特に昨今、欧州でも米国でも、原子力に目が向いてきていることをご存知ありませんか。