2014-01-28

放射能すら無害化する微生物反応のメカニズムを解明する2 ~微生物の群生による有機的な分解メカニズム~

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放射能すら無害化する微生物反応のメカニズムを解明する ~プロローグ~

プロローグでは、微生物の生体反応における効率的かつ効果の高い分解過程について事例をご紹介しました。微生物の生体反応のメカニズムを解明し、人体に影響の少ない処理システムの構築が切り拓かれる可能性があることを目標とし、追求をスタートしました。

gunsei01.jpg本投稿では、『微生物の分解メカニズム』を明らかにしていきます。微生物の多くは単細胞生物なのですが、その生物たちも単体で生存しているのではなく、柔軟な群生(ネットワーク化)によって適応していることが確認されています。
そこで、微生物単体の分解メカニズムに加え、群生という両面から分解メカニズムについて探っていきます。

画像はこちらからお借りしました。
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☆☆☆多種多様な微生物の進化の積層によって、あらゆる有機物の分解サイクルが成立
まず、微生物が誕生してから現代まで、どのような軌跡を辿ってきたのかを見ていきましょう。

☆始原生物の誕生と進化
地球が誕生したのは約45億年前、始原生物は約39億~37億年前に誕生したと言われています。かつての地球は窒素や硫黄、二酸化炭素に覆われており、始原生物はこの窒素や硫黄をエネルギー源として環境に適応しました。

gunsei02.jpg約25億年前、太陽光をエネルギーとする生物「シアノバクテリア」という生物の登場により、地球上の酸素が大幅に増加。窒素優位から酸素優位の環境へと劇的に変化しました。そして生物は、酸素に適応するため、ミトコンドリアと共存し、酸素をエネルギー源とできる細胞(真核細胞)へと進化したのです。さらに、微生物は共生⇒多細胞化という道を辿り、植物や私たち動物のような多様かつ複雑なエネルギー生成方法をもつ系譜がつくられました。

「シアノバクテリア」(画像はこちらからお借りしました。)

約20億年の間、生物は、上記のようなベクトル上で進化を辿りましたが、それまでの微生物がいなくなったわけではなく、環境変化に応じて適応を繰り返しながら、様々な微生物が今もなお存在しています。

☆過酷な環境に適応する微生物
gunsei03.jpg多細胞生物が生存できないような過酷な環境に適応した微生物も数多くいます。100度を越える高温環境でも生育する微生物が、火山や温泉や海中の熱水、油田などから発見されています。また、高濃度の塩を好む高度好塩菌や、メタンをつくるメタン生成菌なども存在しています。その他にも、強酸、強アルカリ、非常に低温の環境からも比較的容易に古微生物を発見することができるのです。
詳しくは、「微生物・細菌による環境浄化作用」(リンク①)(リンク②)を参照してください。

「メタン菌」(画像はこちらからお借りしました。)

参考
「古微生物(Wikipedia)」
「第三の生物・・・古微生物(ドクター・ヤマモトの楽しいバイオテクノロジー)」

このように、微生物は、環境変化の中で進化と適応を幾重にも積み重ね、無数の微生物が誕生しました。結果、地球上には、実に約40,000~400,000種もの微生物が存在していると言われています。これら様々な微生物により、地球上のあらゆる有機物が無機物へと分解・循環するサイクルが生まれているのです。

☆☆☆「群生」により、互いの機能を補完しながら外圧に適応してきた
では次に、微生物の外圧適応方法について見ていきます。微生物は、単細胞生物が多くを占めますが、単独で存在しているのではなく、“群”として存在していることが分かります。さらに、“群”の形成方法は、酸素をエネルギー源とする好気性微生物とこれを嫌う嫌気性微生物という、まったく異なる微生物同士が一つの共同性の中で互いに補完しながら適応しているという現象も見られるのです。

☆微生物の共同体「バイオフィルム」gunsei06.jpg
自然界の微生物のほとんどは、右のような「バイオフィルム」に集まって生息していることがわかっています。バイオフィルムとは、微生物同士や微生物が接している面と微生物をネバネバした物質で繋がっているものです。このネバネバした物質は、細胞外マトリクスと呼ばれており、水分を除くと主に多糖類、脂質、タンパク質、核酸から構成されています。

「バイオフィルムの様子」(画像はこちらからお借りしました。)

バイオフィルム内では、複数種類の微生物が集まって共存しており、他種類の微生物同士でお互いに代謝産物やエネルギー、情報のやりとりをしていて、遺伝子の交換もしているようです。これにより単独の微生物にはない機能を生み出すことができ、多種多様な環境変化に対応しています。

参考
「微生物から学ぶ生命の摂理」
「原初生物は群れ(集団)そのものが生命体だった」

☆微生物の「休眠状態」クマムシ
一方で、環境に大きな変化が起こった場合、微生物は外部環境の影響を完全にシャットアウトするため、「休眠状態(VNS状態;非増殖状態)」へ移行します。温熱環境や空気環境など自然環境の変化、栄養状態の変化など、生存環境の悪化を感知すると、微生物の一部は代謝を極端に落とし、休眠状態へと移行します。この状態では代謝、および生命活動も確認できない状態となり、すべての機能を停止するのです。

そして再び、微生物が適応できる環境になった場合には、群生する微生物のうち、覚醒誘導および増殖誘導因子を産出し伝達を相互に行い、再び通常の覚醒状態へと移行します。

「活動状態(上)と乾眠状態(下)のクマムシ」(画像はこちらからお借りしました。)

☆異種微生物による物質分解プロセス(微生物のエネルギー生成方法)
上記に挙げたバイオフィルムによる“群生”と、環境変化に適応する“休眠”によって、微生物群は異種同士での分解を可能としました。

一つの微生物にとって、エネルギーに変換できる有機物はいくつかの種類に限られています。そのため、リレーでバトンを受け取るように、異種の微生物の分解プロセスと連携しながら、互いに有機物の受け渡しを行います。さらに微生物の特性が相反する嫌気性微生物(酸素を嫌う微生物)と好気性微生物(酸素を好む微生物)さえも、共生し、お互いに補完しあっています。物質が少ない場合や環境に適応できない場合には、“休眠”状態で、時を凌ぐことができるのです。

ある微生物が必要とする物質が、他の微生物の分解により生成され、最終的には無機物(H2、CO2など)へ分解されていきます。例えば、セルロースの分解は、次のような分解過程となります。

gunsei05.jpg

これら微生物のあらゆる共存・共生によって、その役割や分解手順が変化したり、分解されるものが変化します。一見、単独に見える微生物も、非常にシステム化され、効率化された分解過程を辿っていることが分かります。

参考
「微生物の柔軟な共生・共存によって、地球上の有機物が分解されている」

☆☆☆まとめ
微生物は単細胞生物に属しており、その名前から単体で生きているように思われますが、初期段階から“群”として交信による外圧共有と適応を行っており、いわば、「集団で生きることが生命を貫く基本原理」と言えます。

その交信による外圧共有と適応は、バイオフィルムというネバネバした膜上にて“群生”し、同種微生物だけでなく異種微生物も共生しています。また、急激な外部環境の変化時には、“休眠”状態により生命活動を停止します。そして、環境が再びもとに戻ると、生命活動を再開するという高い適応方法を有しています。

この、様々な環境に耐えられる異種微生物の“群生”と“休眠”という2つの特性は、微生物群に大きな可能性を与えています。

たとえば、好気性微生物と嫌気性微生物も含む異種の微生物の共生は、単体微生物では繁殖できないよう環境にも適応を可能としました。ある微生物がエネルギーを取り出すために分解したあとの残渣を、別の微生物がエネルギーを得るために利用し、またその残渣を他の微生物のためにのこすというサイクルを繰り返しているのです。

また、エネルギーを取り出すための有機物の量に応じて繁殖種を変え、より広い対応を実現しています。その際に、自らの繁殖環境でない時期には休眠状態で待機することも可能になります。

この様に、微生物の共生は、多細胞生物の各部位の正確な連携で外圧適応していく機能に比べて、その正確さは劣りますが、その適応レンジが非常に幅広い広いことが分かります。それゆえ、多細胞生物が生まれるずっと以前から現在まで、大きな環境変化を潜り抜け、生きてこられたのではないかと思います。

この適応レンジの広さを、有効に利用することが出来きれば、放射線という特殊な環境にすら適応できる微生物の共同体さえ出来る可能性はあります。今話題になっている、微生物を用いた放射線の無害化の原理もこのような所にあるのでは無いかと思います。

次回の投稿では、動物のように食物を摂取してエネルギー生成する「異化代謝」と、植物のように太陽光(電磁波)によって生成する「同化代謝」のメカニズムと、その特徴について探っていきます。

List    投稿者 hasi-hir | 2014-01-28 | Posted in F02.代替エネルギーってどうなの?No Comments » 

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