2009-10-27
シリーズ新エネルギー⑤『消費を市場から共認による制御へ(バイオマス技術の可能性)』
イラストは東北大学工学研究科付属超臨界溶媒工学研究センターさまからお借りしました
新エネルギーシリーズは、今回からバイオマスについて連載してみたい。
まずはバイオマスをめぐる状況からはじめよう
バイオマスとは『植物資源でエネルギーとして利用できるもの』と考えてよいだろう。具体的には、植物を食べた家畜排泄物・生ゴミ・木屑・穀物・穀物の茎・草などの再生可能な有機性資源のことさす。これらは、植物が太陽エネルギー、水と二酸化炭素から光合成によって作ったものだ。
この原料を基に燃料としてバイオエタノール、バイオディーゼル燃料や有用化学品を製造することを『バイオリファイナリー』ともいう。リファイナリーとは精製所のことで、石油精製所の植物材料版を作って行くという意味だ。これらの製品のひとつにバイオプラスチックや工業用酵素がある。
この様な技術開発は、地球温暖化防止、循環型社会形成という世論に後押しされて、世界的な流れを形成している。アメリカでも、バイオテクノロジーの急速な進展を基とする産業化の強力な推進を図る国家科学戦略として位置付けされている。しかしこれは、アメリカが安全保障の必要からエネルギーを自給自足したい、という側面が強い。
そして、日本でも、農林水産省の『バイオマス・ニッポン』のように、すでにバイオマスの実用化についての研究開発が始まっている。この中には、地球温暖化防止、循環型社会形成のほかに、農山漁村活性化等の観点も含まれ、新工業製品を作り出すだけというアメリカ・ヨーロッパの戦略に比べて、新しい社会の構造そのものにも注目しているところが特徴だ。
このように、バイオマス利用技術の開発は進んでいるがその方向性に問題もある。とりわけ、アメリカ主導の技術開発の方向性には問題が顕著に現れている。そこで、どの辺りに可能性があり、どこに問題があるのか?を追ってみたい。