2022-07-11
世界を旅する写真家が体験した「万物との一体化」とは?1~極彩色のコンドルとの出会い~
人類は「万物と一体化」が出来る能力があります。
自身も山に登った時の自然と一体になる感覚やサウナでの「ととのう」感覚等、
一体化?に近い感覚を経験した事はありますが、
本当の一体化ではないのだろう、本当の一体化ってどういう状態なのだろう
、と以前から気になっていました。
そんな中、たまたま読んでいた旅する写真家、竹沢うるま氏の著作「ソングライン」で
南米大陸の奥地でシャーマンの儀式を受け、宇宙と一体化した体験が言葉化されているのを発見しました。
最終的には「快楽」の境地に辿り着く一体化ですが、その過程の苦しみも言葉化してくれており、
「万物との一体化」とはこういう事か、と生々しく追体験が出来たので、紹介します。
◇大切なのはすべてを受け入れること。
氏は、世界を巡る途中、南米の奥地で「ロヘル」という男性シャーマンの儀式を体験します。
この儀式はアヤワスカ※の儀式と呼ばれており、かつてインカ帝国の祭司たちは、この儀式で未来を予見し、現状を把握し、政治的な判断を得てきた、と言われています。
※アマゾン川流域に自生する蔓植物の一種。ケチュア語でアヤは精霊を、ワスカは蔓を意味し、「精霊の蔓」「死者の蔓」という意味がある。
夜9時。森に囲まれた小さな小屋。ろうそくの薄暗い灯り。森の中からたくさんの生き物の声が聞こえる。
そのような状況で、儀式は行われました。
ロヘルからのアドバイスは
「大切なのはすべてを受け入れること」
氏は、アヤワスカの入ったどろどろの液体を一気に飲み干します。
強烈なにおいが喉を流れ落ちていく。
どろりとした液体が喉の内壁にへばりつき、徐々に体の奥へと進んでいく。
まるで蛇が自分より大きな生き物を丸呑みしたときのような圧迫感が喉の奥に広がった。
やがて液体は胃に辿り着き、体内に存在する空っぽの闇を埋めていく。
胃が痙攣し、肉体が激しく拒絶する。
それは驚くほど濃かった。
苦しさのあまり吐き出しそうになるが、なんとかこらえていると、ろうそくの火が消され、あたりが闇に覆わる。
聞こえてきたのはロヘルの声。
恐れる必要はない。大切なのは、すべてを受け入れることだ
◇極彩色のコンドル
暗闇から聞こえてくる プスー、プスー、プスーというシャーマン独特の呼吸法。
不思議な呼吸音を聞いていると、
体は、無限の宇宙を構成する濃密な闇に浮かずひとつの星となって、無数の星々のなかに浮かんでいた。
闇のうねりに身をゆだね、ひとつの光となって億光年の旅路にあった。
無限の空間に浮かぶ自分自身は、存在しないも同然なほどに小さくなり、宇宙の一部としてそこに浮かんでいる。
このとき僕は、星になっていた。
星となり、宇宙の一部となっていた。しばらくの間、宇宙と一体化して、闇に浮かんでいた。
とある様に、氏は自分と宇宙が一体となる感覚に陥ります。宇宙と一体となり、闇に漂っていると、今度はロヘルの歌声が聞こえてくる。歌声に呼応して意識が少しづつずれはじめる。
そしてその意識=宇宙のゆがみのはざまに、何かが存在している気配を感じ取ります。
なんだろうか?
氏の目の前に現れたのは、極彩色のコンドル。
はたしてこのコンドルは何者なのか。
「ここから先の世界は、言葉で表現するのは難しい。」
そう書いている通り、衝撃的な体験であったことは想像に難くありません。
氏は、極彩色のコンドルが見える世界を
目で見るものでも、耳で聞くものでも、手に取って触れるものでもなく、ひとつの存在、もしくはエネルギーの集合体であり、
肉体を離れ、自分自身もひとつの精神的な存在と化し、その世界に一体となって、初めて捉えること出来る世界。
そう表現します。
極彩色のコンドルは、ロヘルのトーテム(守護神)であり、ロヘルの歌が視覚化された姿だった様ですが、頭で考えたのではなく、身体で感じた事が視覚情報として映像化される、そのような状態だったのでしょう。
目の前のコンドルとアヤワスカによる苦しむ、そんな状況の中、氏は肉体から魂が離脱する、幽体離脱の状態に入ります。
ふと身体が浮き上がるような感覚になった。
それまでの身体のしびれはなくなり、自由に動くことができた。
そして、目の前に浮かぶ闇に手を伸ばすと、掴む事が出来た。
体は起き上がり、コンドルについていこうとして前に進み始めた。
そして、ふと後ろを振り返ると、そこに苦痛の表情をして身もだえする僕が床に転がっていた。
僕は自分自身の肉体を俯瞰していた。
肉体が感じている苦しさ、痛み、熱。
そのひとつひとつの感覚が理解できる。
なのに、それを上から見下ろしていた。
この状態で、氏の目の前に様々なイメージが波のように押し寄せてくる状態になりました。
この事を、アヤワスカの儀式では「ビジョンの大海」と呼ばれています。
竹沢氏は「ビジョンの大海」で何を見たのでしょうか。次回②では、その中身に迫ります。
参考:「ソングライン」竹沢うるま著