2022-05-27

【地震のメカニズム】地震は、マグマに溶存した熱解離ガスによる水素爆発

地震予知は人類、とりわけ日本人の切なる願いの1つですが、いまだ実現していないのが現状です.

当ブログでも追求を重ね、あと一歩、というところまでは来ていますが、さらに追求が深まりそうな書籍を見つけたので、読み解きながら今までの追求と重ね合わせていきたいと思います。

読み解くのは「地震予知不能の真因」。著者は元鹿島建設の山留め系の技術者の方で

たくさんの命を一瞬で奪い取る地震を予知することは地震学の使命・役割です。これを「できません」と放棄するのは地震学の死滅であり、地震学者としての存在も失われます。

という志のもと、学会に無視されながらも、自費出版で研究を続けておられる熱い想いを持たれている方です。

◇定説に対する問題意識
まず、地震発生の定説に対する著者の問題意識は
・そもそも全く予知出来ていない
・100km~200kmもあるプレートが「へ」の字に曲がるという、ポンチ絵でも表現できない仮説をたてている。

・頻発する400~700kmという大深度地震については、まったく言及されていない

※プレートテクトニクス論については、過去投稿
【地震のメカニズム】2. プレートテクトニクスの成立過程・その1~大陸移動説から海洋底拡大説まで~ 等を参照

というあたりです。実感としても、今までの成果としても共感できる所ですね。

では、著者の理論を読み解いていきましょう。

◇海溝型地震のメカニズム
著者は「プレート」そのものの存在は認めています。ただし、プレートは弾性体ではなく「岩」の塊という事実からスタートします。

以下、その論点です。図と一緒にご覧ください。

①プレートは弾性体の1枚板ではなく岩。そして、その岩(プレート)は、その下にあるマントルの【熱対流】で引きずられている

②その為、【海のプレート】は日本列島を載せている【陸のプレート】に突き当たると岩と岩の隙間が縮まり、陸のプレート境界の上の方は岩がかみ合って固着する。

③下の方はマントルの熱対流により、海のプレート(岩)陸のプレート(岩)の下に入り込む。マントル内はドロドロなので、かみ合わせは弱くなる。

海のプレートの上面は陸のプレートにつっかえて目詰まりを起こすが、底の部分はマントルの熱対流で引きずられて流されるため、中間のプレートの中央部の岩はゴロゴロと回転しながら「隙間」が出来ていく。この現象を「ダイレタンシー」と呼び、出来た隙間にはマグマが入り込んでいきます。
※ダイレイタンシー:土がせん断力を受けたときの体積変化。例えば土の入った箱を繰り返し揺らすと、その密度によって土の体積が減ったり増えたりする現象。

⑤一方、海嶺で生まれたばかりのプレートはクラックの無い1枚板だが、海水で冷やされて数億年たつとクラックの幅や数が増え、そのクラックの中は、海水で充たされていく。
※クラック中の海水は、なんと海底より上部の海水の数倍もあるとのこと!

⑥隙間を埋めている海水が、陸のプレートにぶつかる手前の目詰まりゾーンの下に出来る「隙間」に入り込むと、海底に堆積しているプランクトンの死骸などで蓋をされてつぶされ、岩に挟まれて「高温高圧」になる。

⑦高熱高圧下では水が酸素と水素に分解(水分解)されることで「熱解離ガス」となり、岩の溶け始めたドロドロ溶岩に溶存していく。この時、岩の中にある硫黄やヨウドなどが触媒となって海水の熱解離現象を助けることになる。
※熱解離:温度が高くなることにより,分子が原子などのより小さな化学種に分裂する現象。温度が高くなると,化学平衡のうえでは,この現象が進むほうが安定となる。

⑧つまり、マントル熱対流によって生まれた岩の隙間には大量のマグマの中には「酸素と水素」が溶存している。

⑨酸素と水素が溶存しているマグマは周りの岩より軽くなる事で浮かび上がるが、その上には陸のプレートに行く手を遮られ、陸と海のプレートがかみ合っている事でプレートの岩の隙間は目詰まりしており、それ以上浮かび上がる事が出来ない。

⑩そこに次々と下から岩より軽い新しいマグマが溜まり、目詰まりの天井(岩)に席を譲ってもらおうと下から突っつく。その結果、どこかの地点で上部の天井(岩)が落盤する。

⑪この時、落盤の岩の上の隙間は「負圧」となり、マグマ内の圧力が下がる。この圧力が下がった時にマグマ内に溶存していた熱解離ガスが気体となり、酸素と水素ガスができ、これが結合し【水素爆破】が起きる。

⑫水素爆破は断熱膨張であることで急激に温度は下がり爆発で出来た空間を今度は「爆縮」することで元の体積に戻る。

★この爆発、爆縮が「地震」

⑬マグマ内の落盤あるいは地滑りは「ゴーッ」と地響きとなって、近い場合には聞こえる。海上でも、海震という現象が知られている。

⑭爆縮して熱解離ガスは水に戻るが、この水はまた高温高圧でマグマ内に熱解離ガスとして溶存することになる。しばらくしてこれがまとまるとまた、目詰まり岩盤を突っついて地震となる。これが「余震」

まとめると

・海のプレートの中間部は、上部が固定され、下部が移動することで岩がゴロゴロ転がり「隙間」が出来る。
・その隙間にマグマと海水が入り込むことで水素と酸素が溶存した岩より軽いマグマが生産。
・軽いマグマが上の岩を突っつくことでやがて上部の岩が崩壊。崩壊した結果、隙間が出来るため、圧力が下がり水素が水素ガスになり、酸素と結合して水素爆発ともとに戻ろうとする爆縮が発生。この爆発、爆縮が「地震」

という事です。(図版再掲します)

面白いのが、地震は物理現象ではなく「化学現象」である、と言い切っている点。地盤の専門家らしいディテールの追求で、説得力もあります。

次回は津波や直下型地震のメカニズム、火山のメカニズムについて読み解きます。

  投稿者 ko-yugo | 2022-05-27 | Posted in D03.地震No Comments »