2019-07-15

脳回路を解く(8)~・把握様式の進化と脳容量の拡張・~

前回の『(7)~・把握(認識)の二元化と類型化・~』

背景と対象に二元化したり、共通部を抽出して類型化したり、抽象化するのは、本能に備わった根元的な把握機能であり、カエルも、ネズミも、ネコも、無意識にそうしている。

とあるように、生物が生きていくためには把握機能は不可欠で、把握スピードで生死が分かれます。

眼が登場したのがカンブリア紀。この時代は、奇妙な形をした種が大量に発生した。その形態は、攻撃用の強いハサミや口を持った生物や、その攻撃から身を守る大きく堅い棘で覆われた形態などで、生物史上はじめての厳しい外敵闘争に対応するために多様な種へと進化した。
その時代の覇者の一つがアノマロカリスという節足動物で眼をもっていた。この眼は、現生の近縁種のヤドカリ・カニ・エビ・昆虫と同じ複眼だったと思われる。 複眼は、円錐状の筒の底部に一つの視細胞が接続されたユニットが、多数くっついて半球状になったもので、進化した単眼のように、網膜上に視細胞だけがつながって並ぶ形状とは異なる。そして複眼は、筒の軸上の光は入るが、軸から大きくずれると直接光は遮られて見えなくなる。それに対して、単眼は眼球内に入った光を網膜上で広く捉えることができる。また、視細胞の数も進化した単眼の方が圧倒的に多い。
この様な構造から、複眼の見え方は、光が入る部分と、遮られる部分の差異の認識が基本で、移動する物体を多数の複眼が順次その変化を利用して認識するのだと思う。また、視細胞同士連携も大脳が(ほとんど)無いためうまくいかず、機能的は極めて解像度が悪いものであったと思われる。そのため、複眼の数に分割された、変化するモザイク画像の様な認識しかできなかったのではないか。 その様な状況の中で、脊椎動物の先祖が誕生する。動きが遅く、柔らかい体しか持たない初期脊椎動物にとって外敵をすばやく察知し、逃げるのが第一課題になる。しかし、解像度の低い複眼様の映像と、極めて小さな大脳しか持ち合わせていないため、その限界を突破するために、『動くもの(敵)』と『それ以外』という二元化機能を獲得し、大脳の容量限界を突破しようとした。そのイメージは、モザイク映像の中の動く部分の塊を一括りにして、その中心付近を一つの点(丸い影)として類型化して適応した。
その後、目も脳も進化し単眼になり少し解像度が上がると、次に問題になるのが、外敵のうち最も危険な、攻撃を仕掛けてくる頭部の認識になった。この段階では、動く点(丸い影)の中の映像も、もう少し鮮明になってきたが、数ある外敵のすべての頭部(顔)を記憶できるほど脳容量は大きくないので、『二つの眼と一つの口』を三角形の各頂点にある点として類型化して、敵の頭部(顔)を判別することで適応した。この原理は、現代のデジカメの顔感知にも応用されているし、実際、三角形の各頂点を想定した3つ点を書いただけで、人間の場合でも顔に見える。
その次に獲得するのが、敵の大きさを感知する棒のような線であるが、これは、空間上にあらゆる方向で存在するので、より眼の解像度も、それを空間認識する脳容量も必要になるので、もっとあとになる。その進化の最先端にあるのが、サルや人類の立体視であり、網膜上に映し出された平面映像を、大脳の処理により立体として認識することができる。 『視覚の二元化・類型化機能の獲得過程』より

我々の脳は一体どのように進化してきたのでしょうか? (さらに…)

  投稿者 asaoka-g | 2019-07-15 | Posted in O.進化史, O01.脳回路No Comments »