2022-09-30
地球の元素は鉄が最も多いのはなぜ?
「鉄は人類文明にとって不可欠な 素材であるとともに、地球上の生物が進化し、生き続けるうえで欠かせない金属である」についての記事がありましたので紹介します
地球の中心に近い核の大半は鉄で構成されており、内核は個体である一方、周囲の外核は液体の状態であることなどがわかっています。そして地球の元素別重量構成割合は 鉄(35%)酸素(30%)ケイ素(15%)マグネシウム(13%)となっており、鉄の割合が一番多くなっています。当然、豊富にある物質を利用するのが最も自然の摂理に合致しています。
又、先日TVで鉄分不足が体調不良を起こす放送もあり、
「なぜ鉄が最も多いのか?」「“生物”も進化させる鉄」について調べました。
『鉄―137億年の宇宙誌』展について 』より一部転載します。
【なぜ鉄が最も多いのか】
鉄は全ての元素の中で,最も原子核が安定している そのため恒星の内部で元素が核融合を繰り返し,原子番号が大きな重い元素が作られていっても,鉄よりも重い元素は形成されない.つまり恒星の内部における核融合の最終到達地は「鉄」なのだ.鉄より重い元素は,超新星爆発など他の要因で作られるが,その量は鉄を超えることはない.
これは宇宙の中で鉄の存在度が高いことを,無理なく説明できる.そして,その鉄が多く集まった天体が地球なのであろう.さらに言えば,鉄は安定した原子核を持つために,26個という多くの陽子を獲得したが,それと釣り合うために26個もの電子をもつこととなった.ここで電子は好き勝手な軌道を取って原子核の周りに存在できるわけではない.鉄の持つ26個の電子の一部は,M殻と呼ばれるところ(特に3d軌道)に中途半端な形で取り込まれることになるのだ.これこそ,安定なエネルギーの状態が複数存在しうるなど,鉄が物理化学的に重要な特徴を示すようになった原因である.
その特徴を最大限に利用したのが生命体であり,人類であるのかもしれない.
鉄は最も安定した原子核を持つ特異な元素であり,それゆえ宇宙における存在度が相対的に高くなった.その鉄がある程度集まったからこそ,地球という星が生まれた.鉄は地球深部で溶融して磁場をつくりだし,そのおかげで地球表層が生命にとって安全な環境となった.そして地球表層で生命が生まれたが,ほとんどの生命は,鉄がその原子核に対応して持つ独特の物理化学的性質に依存している.鉄に依存した生命体の1種である人類は,その物理化学的性質を発展させ,現代文明を築いたのだ
【“生物”も進化させる鉄】
より転載します
人間にとって、ごく微量の金属元素は不可欠だ。それらの金属はタンパク質の中で、特定のアミノ酸と結び付いたり、さまざまな生化学反応の触媒として作用している。その一つが、タンパク質と銅、亜鉛、マンガンなど が結びついた「SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)」 と呼ばれる酵素だ。 生物にとって必要不可欠な酸素は、高いエネルギーを 生み出す一方で、あまり多いと細胞組織まで傷付けてしまう活性酸素の毒性は有名だ。活性酸素は、「SOD」に よってまず過酸化水素(H2O2)に分解され、さらに鉄とタンパク質とからできている「カタラーゼ」という酵素 によって水と酸素に分解される。鉄は、タンパク質と結びつくことによって酵素を形成し、鉄単体での100億倍も の過酸化水素処理能力を持つようになるのである。こうした酵素を多く持つほど、生物としての寿命も長くなる
生物の進化において鉄は、体内の酸素をエネルギーとして有効利用すると同時に、余分な活性酸素を無害化するといった、一見相反する2つの大きな役割を果たして きた。 有史以来、最初に人間は、酸化せず単体で見つけやすい「金」を発見し、その後、「銅」「鉄」という順番で道具として利用してきたが、生物の進化はその逆だ。鉄、 銅、マンガンという順番で体内に採り入れ、新たな機能 を獲得してきた鉄は人類文明にとって不可欠な 素材であるとともに、地球上の生物が進化し、生き続けるうえで欠かせない金属です。
以上です