2013-11-21

放射能すら無害化する微生物反応のメカニズムを解明する1 ~プロローグ~

☆☆☆ 生物の生体反応の可能性
巨大な化学プラント・都市下水浄化、それらを動かす膨大な基礎エネルギーである電力。これらのエネルギーは、現代の生活には欠かせないと思われています。しかし、もっと自然の摂理に適った生産システムがあれば、先の産業はもっとコンパクトになり、基礎エネルギーである電力も半減するのではないでしょうか。
そのような生産システムの可能性を追求する上で注目したいのが、『生物の生体反応』です。

なぜなら、生体反応には

画像はコチラからお借りしました

①常温、水という中性環境の中で、効率的な反応を行えること。
②同時並行の制御された複合反応で、余すことなく材料をエネルギーや有用な材料にかえ、無駄が無いこと。

といった特徴があり、現代の生産システムと比較しても非常に効率的だからです。

例えば、人間が化学合成を行う場合、反応を起こすために、材料を高濃度に濃縮し、ヒーターを使い高温環境をつくり、強い酸やアルカリ環境を準備して、反応を阻害する水を徹底的に排除するなど、膨大なエネルギー投入が必要になります。かつ、それで可能な反応というのは、単一かつ一方向の単純なものであり、非効率極まりません。
反対に、生体内で行われる化学反応は、低濃度、常温(体温)、中性の水の中で、複数の反応が秩序だって行われ、殆ど無駄がありません。つまり膨大なエネルギーを別途かけずとも分解・生成等が行われていることになるのです。

このような、生物の生体内反応を研究して、(微)生物と共存した生産や処理のシステムを科学的に構築することではじめて、近代科学の呪縛から解き放された新しい産業、社会形態が生まれてくるのではないかと思います。

このような技術として、長崎の原爆での放射能対策に、「味噌」が効果を示し、実績をのこしている事例リンク)や、チェルノブイリでも実績を残しているEM菌リンク①)(リンク②)などがありますが、一例として、環境微生物学博士の高嶋康豪教授が実践している『微生物の複合発酵を利用した浄化システム(EMBC工法)』を今回の記事では紹介したいと思います。

冒頭の「(微)生物の生体反応」のメカニズムを明らかにする検証材料として扱いながら、様々な方向から追求していきたいと思います。

 

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☆☆☆ 微生物の複合作用を利用した浄化システム(EMBC工法)の概要

☆ 反応が途中で止まる事無く、複合的かつ連続的に起こり、全てが安定的な物質になる!?

上下水道という都市集中管理の工法が近代インフラとして一般的ですが、「活性汚泥法」に代表される、これら現代の廃棄物処理方法は、
処理効率を求めるが故に、分解反応を促進する為、酸素を使って処理させる“好気性微生物のみの単一の微生物”を利用しています。その為、単一の(もしくは特定の)物質しか分解・生成されず、どうしても残留物(スラッジ・汚泥)が残ってしまいます。言い換えると、「分解・生成反応が中途半端な状態で止まっている」状態なのです。

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現在、これら残留物(スラッジ・汚泥)の処理は焼却する、もしくは埋立てるしかなく、これにより、さらに多大なエネルギー消費とコストをかけています。また、この焼却という方法は、どこまでいっても酸化法なので、“酸化反応という単一反応”によって大気に有害物質が生成されることになります。これが、わが国の一般的な上下水処理の実態です。

では、一方の微生物の複合発酵作用を利用した浄化システム(EMBC工法)では、「この微生物の反応が途中で止まる事無く、複合的かつ連続的に起こることで、全てが安定的な物質に生成される、つまり完全に浄化する」というものなのです。
一体どういうことなのでしょうか?原理を追求する前に、実際に導入している事例を紹介しましょう。

☆ 微生物の複合作用を利用した浄化システム(EMBC工法)での成果事例

①某地方自治体の終末処理場での事例
この自治体では、従来の活性汚泥法から出る汚泥・スラッジを埋立処分してきましたが、埋立が不可能になることに備えて、汚泥・スラッジの焼却処分場の建設を計画していました。しかし、焼却による二次公害の発生は不可避であり、住民の反対もあって、苦慮していたそうです。
こうした情勢を打開する為、平成7年11月から、微生物による複合発酵システム(EMBC工法)を導入し、施設の50%の規模を使って実施実験を行いました。すると、EMBC工法を用いた処理システムでは、汚泥・スラッジの引き抜きを一切行わず処理をし、余剰汚泥が一切出ないことを実証したのです。さらには、これまでの処理によって、余剰汚泥の不発生、悪臭の消失、及び水質の向上についても実証しました。

※某地方自治体の臭気データ        (平成7年12月12日)

 

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②化学処理プラントでの事例
半導体や現像処理水など一般的な処理では浄化が困難な為、それぞれの物質に対し、化学的に分類、中和、ろ過、脱水等を繰り返すことで処理するのが一般的で、化学プラントでは重金属など有害物質が必ずといっていいほど残り、環境汚染や莫大なコストがかかることになります。
ある石油化学製品プラントでは、従来「凝集浮上処理」+「回転円盤処理」によって処理を行っていました。このスラッジの発生量が非常に多い為(排出量3t/日)、凝集剤とスラッジ引取り、また水質安定の為に莫大な費用がかかっていました。
そこで、平成8年より同システムを導入したところ、「臭気の防止」、「石油化学製品の廃液の分解消失」、「水質の向上」、「スラッジの分解消失」も認められたのです。

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③放射能処理での事例
2011年の福島第一原発事故以来、この国の最大の廃棄物問題は放射性廃棄物の処理でしょう。しかし、未だに処理については、「清掃」や「剥ぎ取り」など、放射能をどこかへ、たらい回しにするだけで、上記の一般廃棄物と同じ状況に止まっています。
そんな中、2011年10月福島県川俣町で行った複合発酵の実証実験では、実験開始以前に比べて、放射性物質(セシウム137)の濃度がなんと2ヶ月半で1/40にも減少したというのです。(ちなみに放射線量そのものの量も、3日間で約5割減少、2ヶ月半で7割減少しています。)
セシウム137の半減期は約30年なので、通常の自然崩壊で濃度が1/40にもなるには、約150年もかかるのですが、複合発酵法による土の浄化方法だと、その約600倍もの早さで無害化されることになります。
未だ理屈は明らかになっていませんが、事実としてそうなっているのです。

☆☆☆ 今後の追求課題 ~微生物の代謝反応とは?

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一般的な下水処理の方法では、“好気性微生物のみ”を利用した処理方法ですが、微生物の生体反応にはもっと広く複雑な代謝反応があり、大きく上記のような反応に区別されます。この微生物の複合発酵(EMBC工法)での説明では、
「全ての好気性微生物と嫌気性微生物を共存、共栄、共生させ、発酵―分解―合成の有効作用に導き、発酵合成の生態系を生じる複合発酵法」
とありますが、非常に抽象的で、原理が分かりにくい部分も多くあります。

そこで、上記の微生物の生体反応を丹念に調査し、概念の意味や関係性などを整理していくことで、微生物の生体反応が織り成す浄化システムを解明していきたいと思います。
以下のような切り口で、今後追求を重ねていきたいと思いますのでお楽しみに。

※上記図中の数字が該当する関係性
①好気性微生物と嫌気性微生物の共存作用
②異化代謝と同化代謝(分解反応と生成反応)
③微生物の働きの共通原理:酵素の働き
④放射能を無害化する微生物の働きとは?

参考文献
・蘇生回帰の科学/高嶋康豪
・微生物が放射能を消した!!/高嶋康豪

List    投稿者 tutinori | 2013-11-21 | Posted in I01.エントロピー則からみる自然の循環構造No Comments » 

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