2008-06-05

水が危ない!?③・・・・・地下水の枯渇

氷を除いて地球上に存在する淡水の大半(1,053万Km3)は地下水として存在し、容易に使える地下の淡水は1/3程度といわれています。私達は世界の年間取水量3,937Km3(2000年値)の2割を地下水に依存しています。
地下水の多くは数百年~数千年で循環し、毎年の涵養量(蓄えられる量)を超える取水を続ければ、いずれ使える量は毎年の涵養量に落ち込み、殆ど水が補給されない化石帯水層では枯れ果ててしまう有限な資源でもあります。

■涵養量を超える地下水を取水している国々
worldmap.gif
(「水の世界地図」を参考に作成)
地図の赤い各国(アメリカ、アルジェリア、モーリタニア、リビア、イスラエル、エジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、パキスタン、インド、中国)では涵養量を超える地下水が揚水されており、地下水の枯渇が地下水位の低下、井戸の枯渇という形で顕在化しています。
世界では毎年160~180Km3もの涵養量を超えた地下水が過剰揚水されていると推測され、地下の淡水の1/3の量と比べれば2万年程度もつ量ですが、現実には水も人間の活動も偏在している為、場所によってはすでに枯渇し始めているのです。
代表的な国の地下水枯渇の概要を見てみます。

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先の地図のアメリカ・中国・インドは3国で世界の穀物の半分を生産している農業大国です。
アメリカ (過剰揚水量:13.6Km3)
○オガララ帯水層
大穀倉地帯の8州に跨る化石帯水層。水量は4,000km3(琵琶湖150杯分)ですが、涵養水量6~8Km3/年に対し、 揚水量は3倍の22.2Km3/年。ここ数十年で水位が20~30m低下し、使い尽くした地域もあり、耕地の減少に繋がっています。
○セントラルバレー
 カリフォルニア州の南部にあたる半砂漠の穀倉地帯。ダムの灌漑用水では足りず、恒常的な水不足地域で水利会社に水利権を持たない農地は、地下水で灌漑をしています。その為、地下水位は年々下がり、水位が-200mを越える場所も出ています。
中国 (過剰揚水量:30km3)
○華北帯水層
北京の南側に位置し、帯水層が跨る華北平原では国内の穀物の40%が生産されています。一帯は北京と天津の2大都市にも水を供給しているため、農工業~生活水まで、揚水量は急増し、北京でも’65年から60m近く地下水位が低下しています。
華北平原の水位低下も近年毎年3m程度まで加速し、広大な範囲で揚水による地下水の逆流など生態系に影響する事象までが観測され、水不足による穀物収量の低下に伴い、備蓄穀物の切り崩し、穀物輸入へ舵を切っています。
○南部
中国は水資源の8割が南部にあり、農地の7割は北部に存在する為、南部は水資源に恵まれていましたが、近年旱魃が頻発しています。それに伴って井戸が枯渇し取水制限も行なわれていることが今年に入って報道されています。(レコードチャイナ
インド (過剰揚水量:104km3)
インドでは「緑の革命」を契機に高収量品種の小麦が導入され、’70年代後半にほぼ穀物自給を達成し、米を中心とする輸出国に変貌しています。しかし、当初は地表水中心だった灌漑は、地下水灌漑が全灌漑面積(全耕作地の43%)の半分以上を占める状況になっています。
国土の全般に地下水位の低下が見られ、有数の穀倉地帯であるパンジャブ州、ハリアナ州では毎年1mずつ地下水位が低下し、近く穀物生産が2割程度落ち込むことも予想されています。
その他
上記の他サウジアラビア(過剰揚水量6Km3)は砂漠農地化計画で30年の内に地下水を使い切るとされ、北アフリカの国々(過剰揚水量10km3)は中東の国々とともに水資源不足から穀物需要量の4割~5割といった高い率で穀物を輸入に依存しています。
前述の国々の涵養量を超えた過剰揚水量の合計160km3だけでも、穀物1.6億t(世界の穀物生産量の8%程度、4億8千万人分)の生産に必要な量に相当します。
また、同じ水を工業に使うか農業に使うかでは経済効率に50~70倍の差があり、発展途上国では工業用水量も増大し、経済発展は生活用水量の増大をもたらします。水資源の少ない国や地域ではその使用量の増大は地下水への一層の依存や、取水限界を迎つつある灌漑用水の転用を意味し、更なる食糧生産の低下に繋がっています。
地下水の枯渇に絞って見ましたが、それだけでも、並べてみると思っていた以上に現状は破綻しつつあること、発展途上国が経済格差を縮めようと躍起になるほど水資源を巡って自縄自縛の状態に陥るだろうことが見えてきます。
改めて、現状を前提とした持続可能性の模索や、更なる開発による水資源確保⇒市場拡大に活路を見出そうとする限り、水資源は枯渇していると言っても良い状態に来ているのではないかと感じました。

参考:world watch institute 
   :インド農業における水事情と課題について 
   :レコードチャイナ 

List    投稿者 basha | 2008-06-05 | Posted in 未分類 | 4 Comments » 

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コメント4件

 finalcut | 2008.10.16 9:49

植物が上に伸びるのは、「光を求めて・・・」と単純に納得していましたね。
本質的にはそうなのかな?でも光がなくても上に伸びていく・・・確かに、不思議です。
適応の仕組みは2重3重に塗り重ねられているようですね。

 パンツぱんくろう | 2008.10.18 19:37

重力屈性、面白い性質ですね。
観葉植物で植木鉢をつるすと枝葉やツルが、下に垂れるものもあると思いますが、あれも重力にを感じているってことなんでしょうか?
また、宇宙などの、無重力空間では、植物はどの様に育っていくのでしょうか? 気になります...

 fwz2 | 2008.10.18 22:09

finalcutさんこんばんは!適応の仕方は2重3重に塗る重ねられている、とは確かにそうですね。「塗り重ね」とは思いつきませんでした。
ところで、この重力屈性の始まりは、もともとは胞子を遠くへ飛ばせるように上に伸びたと見えるふしもあるようです。それが、そのほうが光もゲットしやすいということで、「光屈性」は「重力屈性」へと委ねられ、塗り重ねられていったようです。(このへんはまだ仮説です。)

 fwz2 | 2008.10.18 22:28

ぱんつぱんくろうさん。藤棚なんかでも、巻きつく先が無いとびよーんと横向きにつるが延びたりしてますね。
つる植物は、巻きつく先の植物などがあることが前提となっているので「重力屈性」も一般のそれとは違ったものなっていそうです。実際、巻きつく先があれば、そこから上に向かって巻きついていくと思いますが、無ければ、巻きつく先の「何か」に達するまで横向きに(或いは下方へ)伸びていくようです。

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