2022-10-11
栄養減少が進む野菜・果物・穀物~その実態と原因について~
食品ロスと飢餓の矛盾、増加する栄養失調者と…食べ物に関する課題が多い現代。
そもそも野菜や果物の栄養そのものが近年低下しているということが指摘されている。今回は、その実態に迫りたい。
■栄養分が減少している野菜・果物・穀物の数々~50%もの栄養低下もみられる~
多くの野菜や果物、穀物において、たんぱく質・カルシウム・リン・鉄・リボフラビン・ビタミンCなどが数十年前に比べて「少ない」ということが複数の研究で示されている。
学術誌「Journal of the American College of Nutrition」の2004年12月号に発表された論文では、米テキサス大学オースティン校の研究者らが、1950年と1999年に公表された米国農務省の栄養分データを用いて、アスパラガス、インゲン、イチゴ、スイカなど43種類の作物に含まれる栄養素13種類の変化を記録したが…
これらの野菜・果物では、タンパク質やカルシウム、リンの減少が見られたほか、全身に酸素を運ぶ鉄分、脂肪や薬物の代謝に不可欠なリボフラビン、さらにはビタミンCレベルも低下していた。
栄養素や作物の種類によってさまざまだが、概ね6%(タンパク質)から38%(リボフラビン)の範囲での減少。中でも目立ったのは、ブロッコリー、ケール、カラシナでカルシウムが減っていたこと、キュウリ、カブの葉で鉄分が減っていたこと。アスパラガス、コラード、カラシナ、カブの葉でも、かなりの量のビタミンCが喪失していた。
その他、学術誌「Foods」2022年1月号に掲載された研究によると、オーストラリアで栽培されたスイートコーン、赤ジャガイモ、カリフラワー、インゲンなどでは、鉄分含有量が30〜50%低下。
2020年に学術誌「Scientific Reports」に掲載された論文によると、小麦に含まれるタンパク質は1955年から2016年の間に23%少なくなっており、マンガン、鉄、亜鉛、マグネシウムも顕著に減少。
ということがわかってきている。これらの影響は、もちろん、栄養価の少ない牧草や穀物を食べる牛や豚にも波及していく。
■栄養低下の原因は「土壌の劣化」にある
いくつもの要因が絡んで起きている現象ではあるが…大きくは「収穫量を増やすために特化した現代農法+土壌の劣化」。
現代農法は、多くの場合「農家が得る報酬は“作物の重さ”によって決まる」ため、作物の栄養は考慮させれず、「より大きく・より早く育てる」ことに特化する傾向にある。
結果として、土壌からの栄養分は多くの作物に分散され、土壌の栄養が回復する前に次の作物が育てられることで土壌から作物に供給される栄養分そのものも減少してしまっている。
本来、土壌は土壌の性質改善に役立つ堆肥・有機物と化学肥料を上手く組み合わせていく必要がある。
しかし、実態は水田も畑も堆肥の施用量は標準を下回り、有機物含油量・土壌養分とも減少。
加えて、圃場整備や効率のよい大型農機導入により農作物の根を張るための表層は薄くなり、土壌も固く・密になってしまっている(耕盤化)。結果として、水も、空気も通りにくく、排水性が低下、根張りも悪い土壌が増加。
食品ロスと飢餓の矛盾、増加する栄養失調者のことを考えても、農業プロセスさらには、それらに最も影響を大きく与えている評価(価値の付け方)そのものを見直す局面であることを、多くの人が認識する必要のある時代になったと言えるでしょう。
磁力の発見の歴史(近代)⑧~ロバート・フック:重力と磁力を事実上同一視していた
ロバート・フックは、イギリスの自然哲学者、建築家、博物学者であり、王立協会フェローに所属した。特に実験と理論の両面を通じて科学革命で重要な役割を演じたことで歴史に名を残している。
〇ロバート・フック(1635-1703)
フックの初期の仕事としては、真空ポンプを制作して空気と大気圧についてのボイルの研究を助け、気体の圧力と体積についての「ボイルの法則」の確立に寄与したことが知られている。
フックは重力を原理的な(還元不可能な)作用として認めている。それは、全ての物質は無性質で不活性で受動的とみる機械論の原則からの明白な逸脱であった。
デカルトが慣性の法則を正しく定型化して以来、惑星の公転にとって必要なのは、ケプラーのような軌道接戦方向への推進力ではなく、中心物体(太陽)の方向に軌道を曲げさせる力であることが既に明らかになっていた。その力に対してフックは、宇宙空間に充満する流体媒質の密度勾配という機械論的近接作用モデルと中心物体の性質としての引力という遠隔作用モデルの両論を併記している。機械論の原則的な立場からすれば、後者のモデルは退けられるべきものであるが、フックは必ずしもそうは見ていない。フックがデカルト主義と機械論の原則に教条的にとらわれることなく柔軟に思考できたのは、ギルバードの「磁気哲学」とベーコンの「実験哲学」の影響を強く受けていたらであった。フックは己の科学の方法を「機械論的・実験哲学」と称し、デカルトとベーコンの両方の顔を立てている。