2017-08-13

数学的思考を身につける2~分数と割合

比や割の原点に等分という考え方がある。その思考は、エジプト、シュメール、ギリシャといった古代文いずれにも姿を見せていたことが明らかになった。今回は、この等分に起因する分数や割という思考がその後、どのように発展していったのかをみていく。

前回に続いて三重大学上垣渉氏による「分数の起源に関する私的考察」http://miuse.mie-u.ac.jp/bitstream/10076/4864/1/AN002341990470002.PDF からである。

古代ギリシアにおけるエジプト式分数は実用的な計算術(ロギステイケー)において用いら
れたものであり、その概念は基本的に≪等分割≫ を基礎におく流儀のものであった。これに対して、数論(アリスメーティケー)におけるギリシア式分数はまったく異質の概念であった。では、その後、分数はどのように発展していったのだろうか?ギリシアの分数のその後をみてみよう。

ユークリッド『原論』第Ⅶ巻には23個の定義が置かれているが、その最初の2個が上の問いに答えているのである。

定義1.単位とは存在するもののおのおのがそれによって一とよばれるものである。
定義2.数とは単位から成る多である。

つまり古代ギリシアにおいては、「数」とは、一と呼ばれる≪単位≫の集合体(多者)なのであるが、その≪単位≫ は分割不可能とされていたのである。単位すなわち一が分割不可能な
らば、一より小なる分数は存在しないと考えざるをえない。著名なギリシア数学史家A.サボーは次のように述べている。「もちろん、実生活ではどんな単位も分割できるし、ギリシアの商人や技師たちも果てしない遥かな昔から分数による計算は当然していたのだが、ただこの古い学問(数論)だけがそうしなかったのである。ギリシアの数論においては、1より小さい数としての分数は存在しないのである。しかし、ギリシアの数論学者は《数の比≫という概念を分数に相当するものとして使用したのである。これが今日「割合分数」と呼ばれているものである。

(さらに…)

  投稿者 tutinori-g | 2017-08-13 | Posted in B01.科学はどこで道を誤ったのか?No Comments »