2014-07-08

【O-157は先進国でしか流行っていなかった!】科学を身近に☆NewStream

旬の話題から自然の摂理が学べる!科学を身近に☆NewStreamです。

今週の科学ニュースを紹介します。

o157graO-157 (写真はこちらからお借りしました。)

 1996年に日本全国で話題となったO-157を覚えていますか?

当時、学校給食にて発生したことや連日に及ぶ食中毒発生によって全国で話題となり、約1.5万人の感染者がでました。これは、WHO(世界保健機関)でも「桁違いの記録的な患者数」という事態に驚きを示しました。

2006年にはアメリカでホウレン草による食中毒が発生し、全米の20州以上で約150名がO-157に感染し、発症しています。

 

なぜここまで流行ったのでしょうか?そもそもO-157とは大腸菌の1つであり、O抗原が157番なのでこう呼ばれています。一般には、腸管出血性大腸菌O157:H7(Escherichia coli O157:H7)と言います。ベロ毒素と呼ばれる強い毒素をつくる病原性大腸菌で、100個程度の少量の菌で発症し、感染症・食中毒を起こします。(Wikipedia 病原性大腸菌O157とは参照)

ほかにもカナダ・ドイツ・イギリス・オーストラリアなどでも発生したそうです。なぜ、このような先進国でしか発生しなかったのでしょうか?その原因を日本の事例から追究してみましょう。

 

以下、今さら聞けない勉強室ねもはも版より抜粋、引用(一部中略)します。

 

■なぜ学校給食で

1996年の食中毒事故で大規模なものはいずれも学校給食が原因でした。学校給食の調理が不衛生であったり、原因菌の多い食材を使っているわけではありませんが、学校給食のしくみそのものが食中毒を大規模化させました。岡山県邑久町の場合、学校給食センターで一括してつくっていたこと、大阪府堺市の場合、各学校に調理場がありましたが、献立や食材購入は市全体で行っていました。これらはコストを下げるために行われていることです。

食中毒事故は大規模化すると、地域の医療体制が追いつかず、被害を拡大させたり、死者を出すことにつながります。

この病原性大腸菌O-157による食中毒事故を受けて、文部省(当時)は、学校給食食品衛生マニュアルを作成します。それに対応するため、生野菜に過剰な次亜塩素酸ナトリウム消毒を行ったり、生野菜を出さず、また、ジャムを煮返したり、中心温度を高くするため加熱しすぎの料理を出すなど混乱を招きました。しかし、本質的な問題である大規模、低コスト体制には手を付けられず、潜在的なリスクは高いままです。

そして、現在でも、多くの学校給食現場では過剰な殺菌や生野菜を出さないなどの現場対応で食中毒を防ぐことを最優先にした給食づくりが行われています。

(中略)

■腸内細菌と無菌思想

病原性大腸菌と一般の大腸菌に大きなふるまいの差はありません。人間の腸の中ではさまざまな腸内細菌が細菌群となっており腸内細菌叢と呼ばれます。便(うんち)の固形分半分から3分の1がこの腸内細菌やその生成物です。菌には酸素が好きな好気性菌と酸素が嫌いな嫌気性菌があり、腸内での主流は嫌気性菌です。大腸菌は好気性菌です。

腸内細菌叢は、300種類ともいわれる多様な菌で構成され、腸内でバランスをとっています。

腸内細菌叢のバランスがよければ、病原性大腸菌が入っても、ただちにその菌ばかりが繁殖することは難しいようです。

ところが、たとえば抗生物質などの抗菌剤を飲むと、一時的に腸内細菌叢が壊れてしまいます。一時的であれ腸内を「除菌」してしまうからです。そんなところに感染力の強い、繁殖力の高い菌が入ったらどうなるでしょう。一気に増殖し、発症するかもしれません。

病原性大腸菌O-157をきっかけに「常識」となった過剰な除菌・無菌思想は、腸内細菌叢や身体の表面にいる皮膚常在細菌などと共生して健康を保っている人間の生命のあり方そのものと矛盾しているのです。

 

■食のあり方から考える

1996年の病原性大腸菌O-157の流行原因は分かっていません。しかし、おおもとが家畜である牛由来であることはわかっています。合成抗菌剤などを多用し、過密に育て、餌も本来の粗飼料(牧草など)だけでなく、穀物や動物性のものを与える育て方の中に問題があるのではないでしょうか。

家畜の餌のほとんどは輸入です。また、日本人の食料の過半数が輸入品です。堺市の原因食材として最初に上げられ、その後、違うとされたカイワレ大根も、その種子がアメリカ産だったために疑われました。世界各地からの輸入食料に頼ることもひとつの問題です。そこにきて過剰な除菌・無菌思想が加わり、1996年の流行を引き起こしたのではないか、そんな風に思えてなりません。

もちろん、原因は明らかにならないままです。

しかし、その後、家庭では生野菜が食べられており、レバ刺や、魚の刺身も元のさやに戻りました。あのパニックはなんだったのでしょう。その後に起こった様々な食品事件のたびに、ひとつひとつ食材が一時的に食べられなくなり、いずれまた元に戻っています。ただ、そのたびごとに、除菌・無菌思想だけが強力になっています。

%BB%D2%B6%A1%A4%CE%BC%EA%A4%CB%A5%B9%A5%D7%A5%EC%A1%BC(写真はこちらからお借りしました。)

いかがでしたでしょうか。

先進国の過度な除菌や清潔志向が、食中毒やアレルギー体質の発生を招いてしまっているのだと思います。しかし、衛生管理の行き届いた先進国では、バイ菌は悪いもので抗菌処理しなければ商品を買ってもらえない、という事態になってしまっています。全ての菌を処理することで身を守るよう思い込んでしまわずに、まずは食物繊維の豊富な食物で腸内環境を整えてみてはいかが?

※参考投稿

病原性大腸菌O157とは

ヘルスメディアネット

  投稿者 tutinori-g | 2014-07-08 | Posted in W.科学NewStream, W01.科学NewStream1 Comment »