2011-11-27

【自然災害の予知シリーズ】-7-~VHF電波の乱れで地震を予知する~

前回のVAN法は地震発生前に現れる地電流の乱れを計測することで、地震の発生を未然に予測すると言うものでした。
 それに対して今回紹介する地震予報の手法は、地震発生前の上空の電磁波を測定し地震を予測すると言うものです。
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 この手法の発案者は八ヶ岳天文台長の串田嘉男氏です。もともとアマチュアの天文家だった氏が発案した、地震予報の手法とその実績および問題点を紹介したいと思います。
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◆◆◆電磁波で地震の予兆を観測する
◆電磁波って何?
 電磁波は電気の波です。私たちの身近なところでは光も電磁波の一種です。電磁波その波長の長さで、長いほうから電波、マイクロ波、赤外線、可視光線(光)、紫外線、X線、γ線と分類されます。
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 地震予測で用いる、電磁波は上記のうち特に「電波」と呼ばれる領域の電磁波です。
◆電波の種類
 電波もその種類によって波長の長いほうから超長波(波長100km)~ミリ波(波長1mm)まで存在します。電波は私たち人間の通信手段に使用されており、波長毎にテレビ、ラジオ、携帯電話など様々なものに使用されています。
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◆VHF電波を利用した天体観測
特にVHF電波はラジオ放送に多く使われている領域の電波です。そしてこの電波を利用した天体観測の方法があります。
VHF電波は電離層で反射します。送信局から発信した電波は、電離層で反射して受信点へ到達します。
このとき電離層付近で、彗星のチリが流星となり地球に降り注ぐとこの電波が、一瞬だけ乱れて、特有の波形を示します。
アマチュア天文家達は、この電波を夜な夜な計測し、肉眼では見えない彗星などを観測するのです。串田氏もこの手法で天体観測を行なっていました。
 阪神大震災の時、天体観測ではあまり見られない波形を観測しました。それは一定の間表れ、消えるのです。そしてその次の日には余震が起こるのです。
 氏はそれが地震発生前の前兆現象だと確信しました。そして八ヶ岳天文台を閉鎖し、地震予報の研究に没頭していくのです。
◆◆◆なぜ地震前兆は電波の波形として現れるのか
 なぜ地震の前兆は電波の波形として現れるのでしょうか?ここでは串田氏の仮説を紹介します。
 地震は発生する前に、地中では岩盤に大きな圧力が加わる。そしてここで岩盤に圧電効果(ピエゾ効果)が働き、地電流が起こる。その影響で地表面がプラスに帯電する。一方上空は地表面の電荷に引っ張られる形でマイナスに帯電する。というのが大きな流れです。
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 しかしここで疑問として残るのは、地電流を発生させるピエゾ効果の電圧は、せいぜい数ミリボルトといった世界。それが上空まで影響を及ぼすとは正直考えづらいと言う感じです。
 ここは今後さらに追求する必要があるテーマですね。
◆◆◆地震予報の手法
 ではここから、具体的にどのような方法で地震を予報していくのかを紹介したいと思います。
◆モニター領域の決定
 まずモニター領域を決定する必要があります。モニター領域は、電波の送信局と観測点の関係で決まります。1つの観測点であっても、電波送信局を何箇所かに設定すれば、(仙台、札幌、沖縄という感じに)日本全国をモニターすることが出来ます。
 また距離だけでなく、同一の送信局であっても、電波の出力が異なれば、モニター領域の広さも変わります。
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◆モニター領域と震央の位置関係で前兆波形が異なる(位置と規模の予測)
次に観測した地震波形は、モニター領域と震央(震源地)との位置関係で、異なる形を示します。何点かで観測することで、震央の位置を特定することが出来ます。
 また地震規模によっても、地震波形は変わるので、これで規模を予測することが出来ます。
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◆前兆波形から地震発生までは、特有のパターンを示す(時期の予測)
 地震の前兆波形は、弱く現れだしてから、段々と極大期になっていき、その後静穏期(前兆波形が消える)となり地震が発生するという一定のパターンを持っています
 そして前兆波形発生期間、極大期から地震発生までの期間、そして静穏期にはある比率が決まっている。(下図参照)
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 このパターンを利用して、発生時期を予測します。
 以上のような手法で地震発生時期と場所、そして規模を予測するのです。
◆◆◆予知精度と弱点
 ではこのような手法での地震予知の精度はどの程度なのでしょうか?
 下に1997年~1999年期間の地震発生予測結果を示します。
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 このようにかなり精度は高いです。しかし一方、発生日時に極端に誤差が発生しているケースがあります
 これはなぜなのでしょうか?
 発生場所、規模に関しては地震の前兆波形に現れるのに対して、発生日時のみは前兆波形の発生期間に依拠します。
 震源地の場所によっては、前兆波形が極端に減衰して、極大期しか観測できない場合があります。その場合正確な前兆波形発生期間を捉えることが出来ず、発生時期を予測するのが難しくなるのです。
 ここがこの手法の課題です。
◆◆◆まとめ
1.電磁波での地震予測の手法は、VHF電波(ラジオ放送の電波)を利用した地震予測である。
2.地震の規模及び場所は、モニター領域と震源地の関係から前兆波形に現れる。
3.地震の発生時期は、前兆波形の発生期間と、極大期、静穏期の関係から予測できる。
4.予測精度は高いが、発生時期に関しては、前兆波形を捉えそこなうと大きく誤差が生じる恐れがある。
 この電磁波による地震予測の今後の課題は、減衰する前兆波形をどのようにして漏れなく捉えるかといったあたりになりそうですね。

List    投稿者 daichi | 2011-11-27 | Posted in D05.自然災害の予知No Comments » 

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