電気を食べてメタン(天然ガス)を作る微生物~電気をガスとして貯蔵
残念ながら電気は保存できません。最近の停電騒ぎでもあったように、電力会社は必要な分だけを発電します。電力の貯蔵は、過去から蓄電池等の開発、最近では水を電位分解して水素として貯蔵、揚水式発電等etc様々な研究がされていますが、まだまだコストも高い。
前回、電気を作る微生物の研究を紹介しました。今回は逆に、電気の貯蔵に着目し電気を食べてメタンを作る微生物の研究を紹介します。微生物の力を借りて電気とCO2から天然ガスを作ろうという研究です。電気をメタン(天然ガス)の形に変えてエネルギーとして貯蔵できれば、必要な時に必要な量の発電がいつでもできる。この中でCO2も吸収している。
天然ガスの製造では、脱炭素の圧力を受けて「メタネーション」という技術も進んでいますが、これは、クリーンな電力からつくられた水素(グリーン水素)とCO2をもとにメタン(天然ガス)を作ります。CO2も吸収するため、省エネルギー庁でも脱炭素のメニューとして研究・実用化へと進んでいます。しかしこのグリーン水素を作るのに莫大なエネルギーが必要となります。
その点、微生物の力を借りてメタンが作れれば、もっと低コストでエネルギー貯蔵が可能です。
電気を食べる微生物は、前回の電気をつくる微生物と同様に、嫌気性の環境の中にいるようです。電気をつくる微生物は、深海熱水噴出孔でした。電気を食べる微生物は、地球の地下圏の地下水の中に生きているとのこと。
以下、「電気を食べてメタンを作る微生物? 何ですか、それは?」
高知コア研究所より紹介します。(画像もここから、お借りしました。)
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電気は保存できない、ならば微生物を使って電気をメタンに換えてエネルギー保存しようというのですね!
石井:その通りです。さらに、このような微生物が住む地下圏の地下水は、無酸素で還元的な環境である事が多く、この嫌気的な地下水を用いてCO2を固定してメタンを作る事を考えています。酸素に満ちた「酸化的」な地表の世界で、CO2を固定する「還元力」を作るのは非常にコストや手間がかかります。しかし、無酸素の地下環境やそこから湧き出てくる地下水を利用すれば、コストをかけずに、地球そのものの「還元力」を使うことができます。まさに、地球の力と電気の力、そして、微生物の可能性を最大限に応用する試みなのです。
地下水をもとにしたメタン生成の実験
さらに発展させて、嫌気的な地下水の汲み上げが行われている現場で、汲み上げ直後の地下水を連続供給して、より産業応用に近い実験しようと準備を進めています。また、NanoSIMSを使ってこの微生物がどのようにCO2を固定しているかも分析する予定です。
産業応用までには、どんな残された課題があるのでしょうか。
課題は大きく2つあります。電気を食べてメタンを作る微生物にも様々な種類があり、その中から特に優秀な微生物を見つけ出すことが必要です。
また、反応を促進する触媒としては、微生物は複雑な反応をこなせる一方で時間がかかります。触媒として微生物をうまく機能させるためには、触媒技術を持つ企業の力も必要だと思っています。
●まとめ
電気をつくる発電菌等の微生物、電気を食べてメタン(天然ガス)を作る微生物。
現在、脱炭素の流れの中で、世界的に様々なグリーンエネルギー技術の研究と実用化へと動いています。ただ、どの技術を見ても、脱炭素のグリーンエネルギー構築のために、莫大なエネルギー消費とお金が更に必要な状況です。
日本にとっては、脱炭素とは別に「エネルギー資源をいかに確保するか?」という重要課題があります。最近では、新たにロシアから天然ガスの圧力がかかってきました。
今回紹介した微生物の可能性を含み、自然の摂理をもとにしたエネルギーがかからない新技術の実用化を期待したいと思います。同時に私たちの生活そのものも、よりエネルギーがかからない方向へ見直す段階に入っているのかも知れません。
現在、省エネルギー庁を中心に各企業が研究を進めている「メタネーション」とは?
参考:ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術 :経済産業省・省エネルギー庁
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