あらゆる自然現象、生命を貫く「螺旋」
「30億年もまえの“原初の生命体”の誕生した太古のむかしから、そのからだの中に次から次へ取り込まれ蓄えられながら蜿蜿(えんえん)と受け継がれてきたもの」
これは、解剖・発生学舎である三木成夫(みきしげお)が『胎児の世界』で述べている内容ですが…
小さいながら人間の形をとっている赤ちゃん。それは受精卵が分裂を開始してから胎内にいる期間に、地球の生命進化という壮大な記憶を超高速でたどってきた結果であるということだそうです。
そして…あらゆる生命に貫かれて「螺旋」という構造が見てとれるということも興味深いところです。
今回は、「螺旋」という構造について、追求を深めていきたいと思います。
■螺旋とは、あらゆる自然現象・生命を生み出す情報・力の軌跡
そもそも、螺旋とはどのような形なのか。
螺旋は、DNAの二重螺旋、人のつむじ、巻貝、動植物の形態やパターン、 さらには渦潮や星雲、待機の流動(雲、台風、竜巻、煙等)と、自然界の至るところに見て取れるもの。あらゆる現象や物質を起こし、それらを循環させる力を持つ力の流れのようです。
情報が均質化したところには、現象も物も発生しません。一方で、異なる情報が存在すると、それらの境界の歪みから新たな動きや流れが生まれます。それは直線ではなく、曲線となり、その延長として螺旋が生まれていく。つまり、螺旋は、情報や力の流動の軌跡や痕跡と見なすことができるのではないでしょうか。
■螺旋は、自然との一体化するための形状として古来を用いられてきた
古来から人々は、渦巻や螺旋のパターンを重視しています。縄文やケルト、アイヌなど、世界各地でみられる螺旋。いずれも世界の根源的な流れやシステムをとして感知し、文様とすることで、自然への畏敬や祈りをあらわしてきたものばかり。直線的・進歩史観的な時間(クロノス)ではなく、自然のリズムに沿って循環し、反復する時間制(カイロス)に基づいているようです。
自然を注視するなかでで、螺旋という形状が多く存在し、その形状が最も自然との一体化を図ることのできると捉えていたのでしょう。
■安定と変異の往還が美しさ、創造性を生み出す
そんな螺旋は、今、絵画やアートなどの美術品、新たな価値を創造する思考法でも注目されています。
ある問題に対して、直線的に解決しようとするのではなく、そもそも本当にそれは問題なのかという問いから始める。見ている問題ではなく、もっと潜在的な問題があるのではないかを解きほぐす。その後、絞りこむ段階があり、解決策を見出していく。その解決策を検証し、また問題に立ち返って、果たしてその解決策が問いに正しく応えているか検証する。そうしたループを描きながら思考を繰り返すというもの。
あらゆる要素が複雑に絡み合い、多くの要素を越境しながら統合していくことが求められる現代で求められる思考法として、有効であるとされています。
あらゆるものは繋がっている、そしてそれらを貫く形である「螺旋」
だからこそ、その「螺旋」を用いることが、美しさを、創造性を、生み出すことに繋がる。
学び、農業、建築…あらゆる分野において「螺旋」という生命原理に基づいた形状を活用するには、どうするかをさらに追求していきたいと思います。
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