関電の組織ぐるみの贈収賄スキャンダルの発覚が示唆しているは?
関電の会長、社長以下役員クラスの計20人が、長期間にわたって「裏金」を受け取っていたという、前代未聞の組織ぐるみの贈収賄スキャンダルが明るみに出た(リンク)。
その実態が表面化するにつれ、関西を代表する「大企業」関電は、およそ「原発」という危険な事業の担い手として失格であることがハッキリした。
この件は昨年3月の税務調査で発覚している。いずれ表面化することは不可避だったが、関電経営陣は動かず隠蔽工作に走るのみだった。それに痺れを切らした何者かが、今年3月に「告発文書」を各方面にばらまき明るみに出た。
今回明らかになったのは、地元の有力者であった元助役の故森山氏が、原発誘致とそれに伴う各種事業を差配し、その見返りとして原発受け入れのために「地元合意」の取りまとめに尽力した。その「潤滑油」として、各段階で巨額の金品のやり取りが存在し、その一部が関電の役員クラスに流れたという。
「告発文書」を入手した「週刊朝日」によると、「吉田開発の脱税」、「森山氏への利益供与」に加え、「関電の大罪」を次のように列挙している。
1.利益供与された金が、八木会長はじめ会社幹部に還流していた。
2.利益供与の原資は、協力会社への発注工事費として渡されていた。
3.その原資は、コストとして計上され、ほかならぬ、私たちの電気料金で賄っている。
4.原子力事業本部で開催された倫理委員会なるものは、実質、隠ぺい工作のための作戦会議場としてしまった。
5.官憲(国税、地検)まで手籠めにとり、官憲と共謀して闇に葬ろうとしている。
●10/2に関電会長・社長会見が行われた(リンク)。会見の要点は以下の通り。
1.元助役(故人)から「預かった」金品は、億単位の現金や数千万円の商品券、それに米ドルのほか、金貨・小判・金杯・高級スーツ仕立券など。
これらは返そうとしたが、「家族の安否が心配されるほどの『恫喝』を受け」、やむなく会社の金庫や個人で預かっていたが、国税の査察を機にようやく返却できた。元助役は地元の実力者で、原発誘致をはじめ地元対策に協力してもらい、「機嫌を損ねたくない」という思いもあった。
2.送られた金品の原資がどこから来ていたのかは関知しない。地域対策として、地元企業に各種工事を優先的に発注してきたことは事実だが、その際の発注手続きに瑕疵はなかった。
3.本件は、特異な人物による「自己顕示欲」の現れ。対応を個人に任せるなど、組織としての対策に不適切な点はあったが、違法性はなかった。
4.第三者による検証を行い再発防止に当たる。現経営陣は、その実行に全力を上げたい(=辞任は考えていない。外部団体の役職も今までどおり)。
「悪いのは地元の有力者、元助役。こちらは被害者だ」――記者から、「『死人に口なし』としか聞こえないが」と指摘されると、「第三者委員会を設けて調査・検討して頂く」と逃げの姿勢。そして、「再発防止に全力を尽くすのが使命」と、居座りを正当化する。
●会見の数々の疑問・疑惑
1.「恫喝」「脅し」「罵倒」などという言葉が繰り返し使われたが、事実とすれば、関電ともあろう大組織がそれに屈した理由が分からない。
逆に関電がマル暴を雇い、原発反対派を押さえ込んだとでも言うのなら納得できるのだが、逆だと言う。
2.金品の授受も逆流しているように見える。
「地元工作」費用やその謝礼であれば、関電から元助役へ支払われるのが筋だろう。
3.考えられるのは、関電から発注される各種工事を、「地元特定業者」に受注させるシステムの構築。
関電としては「地元対策」の趣旨を含め、リベートを上乗せして特定業者に発注する。業者からは実力者に相応の「手数料」が流れる。そして、このシステムを永続的に保障させるために、関電の歴代幹部・担当者を金品で篭絡してきた、ということではないか。
4.そもそも、原発事業には莫大な利権構造があり、地方の「助役上がり」に果たして独り占めを許すだろうか。これまでのところ舞台には「主役クラス」が姿を見せていない。「原子力ムラ」の長やその周辺=政・官人脈である。政治家や官僚たちが、ふんだんに溢れるこの甘い汁を見逃すとも思えない。
★「原子力ムラ」に群がる利権構造に対する告発の背後は?
一番の疑問は、長年にわたる企業ぐるみの贈収賄が、なんでこのタイミングで発覚したのか。
関電の組織ぐるみの贈収賄スキャンダルの発覚は、何を示唆しているのだろうか?
「原子力ムラ」の力学構造、東電・関電など「電力会社間」の力学構造、そして背後にいる「金貸し」の力学構造。ここにどんな変化があるのだろうか?
そして、今回の件は、人びとの意識に何らかの変化をもたらすのだろうか?
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