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電磁波の生体への影響1 ~プロローグ:生物は進化過程で電磁波を経験しているから問題無いと言えるか?~

 新しいシリーズを始めます。
電磁波です。
当ブログでも、過去、電磁波の危険性について扱って来ました
電磁波って危険!?その3~電磁波がもたらす影響って? [1]
が、電磁波が身体に悪いというそのメカニズムまで追求し切れていません。
一体、電磁波の何が生体に影響を与えるのか、どの程度の強度で危険になるのか、納得できる文章は、ネット上でも中々見あたらないと思います。
 さらに、生体への直接影響だけでなく、電子レンジによる食品加熱も問題であると言われていますが、一体、水分子の運動による加熱の何が悪いのか?
 このシリーズで、これらのモヤモヤを解明していく予定です。
◆◆◆電磁波の種類
◇ 放射線~紫外線(電離放射線)  3000GHz以上
原子を電離させるエネルギーを持つ電磁波、いわゆる放射線です。生体にとって非常に危険ですが、太陽からやってくる放射線は大気のバリアによってブロックされ、地表にはほとんど届きません。人工的に発生する放射線も、法律でも厳しく制限されています。放射線が危険であることは、はっきりしていますので、今回は扱いません。 
◇ 可視光線~赤外線        3000G~300GHz
 地球大気をつき抜け、最も大量に降り注ぐ電磁波が可視光線です。地表に届く電磁波では、最もエネルギー量が大きく(だから太陽発電出来るし、植物は光合成する)、定常的に存在します。逆に言えば、だからこそ生物はこの電磁波を使ってセンサー(視覚や明暗反応など)を発達させたと言えるでしょう。だから「可視」光線となったのであり、これより周波数の低い電波になると我々には感知できないのです。
◇ 電波              300G~10kHz
 問題の中心部分です。人工的に作られている電磁波の多くがこの部分であり、生体との関係で問題視されているのは多くがこの帯域です。
非常に帯域は広く、波長にして300kmから1mmまでの幅があります。ですから、一概に、電波全てが良いor悪いと言えるものでは無いでしょう。これから少しずつ、その電波の中身を検証していきます。
◇ 電磁界             10kHz~
電波であるともされますが、電波法の範囲よりも低い周波数帯の電磁波はかなり性質が異なります。一般的に良く問題にされるのが、送電線から発せられる電磁波で、50Hzだと波長は6000kmにもなります。ここまで長いと、波の性質は見えてきません。宇宙規模で見ないと波の波長が見えないのですから。そのため、電磁波を電界と磁界に分けてその影響を見ることになります(電磁波とは、電界と磁界が交互に発生している波)。それらがどの程度の強度なら生体に影響するのか?この部分も電波と合わせて検証していきます。
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◆◆◆ 自然界にある電磁波は?
一般的に、電磁波を使っている側のサイトでは、太古から自然界に電磁波は存在し、その中で生命は進化してきたから、電波くらいの電磁波は問題無いと書いています。
本当でしょうか?シリーズのプロローグである今回は、そのあたりを調べていきます。
自然界には雷を発生源にする電磁波(~電離層内で共振してシューマン共振となる:後述)や地殻内部から発生している地電流による電磁波などがありますが、強いものでは無く、圧倒的にエネルギーの大きな電磁波は太陽からやってきます。
下図の実線のカーブが地表に届く電磁波で、点線と点線の間が可視光線です。赤外線から周波数の低い(波長の長い)電磁波は大気に吸収されてほとんどやってこないことが解ります。
 では、これより周波数の低い電波帯域は宇宙からやってこないのでしょうか?
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画像はhttp://www.unit-mse.co.jp/demo/yamamotolab/archive/weather/article09.html からお借りしました
実は大気には周波数帯によって電磁波に対する透明度が異なり、可視光線は「光の窓」と呼ばれる非常に透明な帯域からやって来ています(ブロックされていないということ)。そして光の窓以外に「電波の窓」が大きく開いているのです。
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波長数ミリあたりからずっと、電磁波が降り注ぐことができるのが解ります。考えてみれば、この窓が無ければ、人工衛星との通信もままならないことになります。
この帯域は、電波の呼び方で言うとマイクロ波、UHF、VHF以上の帯域となります。
これは、ちょうど、携帯電話の電波など、生体への影響が取りざたされている帯域と重なります。つまり、生物は進化過程でこれらの電磁波を経験しており、無経験ゆえに悪影響があるということは言えないのです。
 物質による電磁波の吸収→
【地球のしくみ】23~大気編(9) ~宇宙からくる「紫外線」「隕石」「放射線」を守るシールド [2]
【地球のしくみ】24 ~大気編(10)~紫外線を吸収する大気のメカニズム(酸素⇔オゾンの循環サイクル)~ [3] 
しかし、図で見て解るように数ミリ以下、赤外線までの帯域と、数10m以上の帯域は、大気にブロックされているのです。つまり、この帯域に強い人工電磁波があるのなら、生物は経験していない訳ですから注視する必要があることになります。―①
◆◆◆自然界の電波は人工の電波と比べて強いのか?
 自然界に電磁波が存在することは解りました。ではその強度は、人工の物と比べてどうなのでしょうか?
 太陽の発する電波はどれほどの強さなのでしょう?
天体の発する電波の強さを表す単位をJy(ジャンスキー)とするそうです。これは、天体の電波が非常に微弱なゆえ作られた単位で、1Jy=10-26J/s㎡Hzという小さな単位です。この単位で太陽は、104Jyだそうです。人工電波は、放送局から10wの送信電力、5MHz、5km先の受信点で6.4×1011Jyとなるそうです。つまり、太陽電波の7桁差!
このように、強度においては、自然電磁波と人工電磁波は、桁違いに人工電磁波が強いようなのです。ここに、電磁波の危険性を検証するポイントの一つがあります。いったい、その強いと言われる携帯の電波は生体に影響を与える程度なのか?―②
ところで、電波の強度とは何から決まっているのでしょうか?
周波数が高い(=波長が短い)ほどエネルギーが高いのはご存知ですね。電波より可視光線が、可視光線より放射線の方がエネルギーは高い。そして、周波数だけでなく、波の振幅が大きいほうがエネルギーが高い。同じ周波数でも、振幅の大きい電磁波はエネルギーが高い。波を正弦波で描いたとき、波の形が囲う面積が大きい方がエネルギーが高いわけですね。
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◆◆◆ 強度以外に違いはないのか?
 その上、人工電波はここ数十年での増加です。地球上で発電される量は、20,000,000GWhにもなり、電磁波は電流あるところに必ず発生していますから、それまで全く無かった種類の電磁波が、それだけ増加していることになります
また、電波の性質には違いが無いのでしょうか?例えば、最近の電波は多くがデジタル波になっており、そのオンかオフだけの信号は自然界に存在しません。アナログ波とデジタル波の違いなど、電波の性質の違いも検証する必要があります。違いがあれば、生物進化史上浴びたことのない種類の電磁波を大量に浴びていることになります。―③
◆◆◆ 共振という現象
 共鳴とも呼ばれますが、物質の持つ固有振動に近い振動を外部から与えられると、大きく振動する現象を「共振」と呼びます。振動の波長が重なり、打ち消し合う部分が無く、振幅が大きくなるからです。
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図はhttp://www.toa.co.jp/otokukan/otomame/theme1/1-6.htmからお借りしました
 生体と電磁波の関係にも、このことが当てはまる可能性があります。生体のどの部分かはこれからの追求ですが、生体の持つ固有振動に近い電磁波を受けるとすれば、増幅されている可能性があるということです。―④
以上、
① 大気にブロックされている帯域がある、
② 強度は桁違いに違う、
③ 性質に違いがある、
④ 共振現象が考え得る、
と、いくつかの点で、「自然界に元々電磁波はあるから問題無い」とは言い切れないでしょう。
次回から、まずは、自然電磁波と人工電磁波の性質について調べていきます。

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