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【地球のしくみ】30(総集編3/4)~万物は融合し組織化・秩序化する方向に進化を塗り重ねる~<生物の進化編>・・・後編

【地球のしくみ】29(総集編3/4)~万物は融合し組織化・秩序化する方向に進化を塗り重ねる~<生物の進化編>・・前編 [1]

  の続きです。
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(※図は当サイトで作成したものです。)

前回の前編の記事で、生命のエネルギー代謝は、
①(自然由来の)有機物「発酵」 ⇒【原始生命】
②無機・有機「複合体発酵」 ⇒【超好熱菌】
③原始的ながらも細胞膜の電子伝達系を使う「化学合成」 ⇒【嫌気性呼吸細菌】
④太陽光利用の「光リン酸化」と有機物生成「カルビン・ベンソン回路」 ⇒【嫌気性光合成細菌】
「水利用」と2段階の光励起を行う「光化学系Ⅰ・Ⅱ」 ⇒【好気性光合成細菌】
⑥酸素を利用した呼吸「トリカルボン酸回路(クエン酸回路)」 ⇒【好気性呼吸細菌】
の流れで進化してゆくことを見ていきました。

後編の今回は、この原核生物の時代に完成したエネルギー代謝システムを基盤に、真核生物~多細胞の時代における生物の進化です。
ここのポイントは、『捕食』『変異と安定の役割分化』、そして『酸素呼吸による適応放散』です。
そして、真核以降の生物の進化においても、生命は「逆境(⇒どうする)⇒進化」の繰り返しであり、その実現態の塗り重ねの歴史であることを理解できることです。

では、生命の初期進化、その後半の歴史をみてゆきましょう。


         

H. 真核生物 ⇒ 捕食融合 ⇒ 多細胞生物 

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(※図はコチラ [2]からお借りしました。)

◆ 真核生物の誕生(従属栄養細菌)

繁殖する好気性光合成細菌(シアノバクテリア)が廃棄する猛毒の酸素に取り囲まれた逆境の中で、嫌気性の細菌(※超好熱菌→原始嫌気性呼吸細菌から直系の古細菌)のなかから、酸素の解毒酵素を開発し、さらに核内に遺伝情報のDNAを包み込むことで猛毒の酸素から最も重要な種保存の遺伝情報機能を守る生命が登場する。
遺伝情報細胞を分離することで体を大きくする可能性が開かれたその生命は、『捕食』を行うことに可能性収束する。
他の細菌を自らに取り込み解糖(発酵)する(“食べる”)ことにより大きなエネルギーを得、さらに自らを大きくしてゆく。これが21億年前に誕生した我々の祖先である「真核生物」の始まりで、17億年前に誕生する多細胞生物へ繋がってゆく。

◆ ミトコンドリアの誕生 

嫌気性の真核細菌にとって、呼吸を行い高いエネルギーを生み出す好気性の呼吸細菌(αプロメテオ)は栄養価の高いエサだった。しかし、すぐ食べてしまうより、取り込み、そのエネルギー生成の効率の良さを利用する生物が登場する。これがミトコンドリアの始まりとなる。
ここに嫌気性細菌の時代から引き継ぐ「発酵回路」と、好気性呼吸細菌(αプロメテオ)から引き継ぐ「呼吸回路」が融合し、一つの生命のように見える共同体を形成した。

◆ 葉緑素の誕生 

同じようにシアノバクテリアを取り込み共生した真核生物が現れる。
動物にはミトコンドリアはあるが葉緑素が無く、植物には全てミトコンドリアも葉緑素も含まれていることから、シアノバクテリアの取り込みは、ミトコンドリア誕生後である。

I. 雌雄分化

◆「雌雄分化」は、嫌気性細菌と好気性細菌の共生が実現基盤

★I-1 
【地球のしくみ】20~大気編(6)~「有性生殖」とは、20億年前の嫌気性細菌と好気性細菌の共生の再現である [3]

 
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(※図はコチラ [4]からお借りしました。)

前回の前編からここまで見てきたように、エネルギーの代謝機能を塗り重ねることで生物は進化してきた。そのなかでも、エネルギー代謝革命となる(電子伝達系を使う)「化学合成」と、独立栄養の可能性を切り開いた「光合成」は生命誕生に次ぐ大進化であるが、それに次ぐのが「雌雄分化」である。
生物が雌雄に分化したのは、原初的には大腸菌のような原核生物が遺伝子の交換を行う“接合”に見られるが、はっきりとした雌雄性を持つのは真核生物の藻類の段階になる。
それ以降、雌雄に分化した系統の生物は著しい進化を遂げて節足動物や脊椎動物を生み出し、更に両生類や哺乳類を生み出した。
しかし、それ以前の、雌雄に分化しなかった系統の生物は、今も無数に存在しているが、その多くは未だにバクテリアの段階に留まっている。

雌雄分化はどのようにして生まれたのか?

人類も含めて動物は、20億年前に嫌気性の真核細菌が好気性の呼吸細菌(αプロメテオ)を捕食し共生したことによって、原始嫌気性細菌由来の「発酵(解糖系)」好気性細菌由来の「呼吸(ミトコンドリア系)」の2つのエネルギー生成系を作動させている。
瞬時にエネルギーを生産する場合は細胞分裂を繰り返す「嫌気性の発酵回路」、それに対し、長期に安定してエネルギーを生産する場合は細胞分裂が少ない「好気性の呼吸回路」の反応になる。
この嫌気性細菌と好気性細菌(→ミトコンドリア)の劇的な共生が、その後、細胞の役割分化⇒多細胞生物の機能進化を進める土台になった。

20億年前の「嫌気性細菌と好気性細菌(⇒ミトコンドリア)の安定的な共生」を可能にしたのが、ミトコンドリアの「分裂抑制物質or遺伝子」である。
その共生の実現を基盤にして、細胞の機能分化⇒多細胞化を進めることができた。
その一つである精卵分化(性システムの進化)においても、
  
【嫌気性細菌(発酵=解糖系、細胞分裂を繰り返す=変異 「精子」
  
【好気性細菌(呼吸=ミトコンドリア系、細胞分裂が少ない=安定 「卵子」
 のように、両者の共生が実現基盤になっている。
こうして生物は、「変異」と「安定」という二大課題を分化し高度化させることに成功し、これがDNAの多様性⇒生物の適応可能性を高め、その後のカンブリア大爆発etc.生物の大進化に繋がっていく。
こうした進化の塗り重ね上に存在する我々も、新しい子孫を作り出す度に、20億年前の「嫌気性細菌と好気性細菌の共生」という劇的な進化を再現している。

J. 海から陸上へ

◆「酸素呼吸」による生存域の拡大、多様な適応放散 種間圧力の上昇

★J-1 
【地球のしくみ】21~大気編(7)~生物は酸素のエネルギーを獲得し、その生存域を拡大した [5]
★J-1 
【地球のしくみ】22~大気編(8)~生物の多様な適応放散には、「酸素呼吸」の進化が深く関わっている [6]

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(図は当サイトのコチラ [7]から転載)

強大な繁殖力を持った藍藻(シアノバクテリア)が海の生物界を席巻していくに従い、夥しい量の酸素が排出され、海中で飽和した酸素は徐々に大気中に出ていき、大気の上層に生物にとって有害な太陽からの紫外線を吸収するオゾン層を形成する。その結果、地表に浴びせられる紫外線が和らぎ、生物は海から出て陸に上がる可能性が開かれる。
また、藍藻(シアノバクテリア)の代謝系はそっくり植物に引き継がれ、大量の有機物が合成される道が開かれたため、植物が光合成した有機物を資化して生育する従属栄養性生物(好気性細菌や動物)が再び繁殖する環境が整っていた。

DNAの多様性を実現する雌雄分化 
植物が光合成で生成した豊富な有機物 
莫大なエネルギーを得る酸素呼吸 
この3つが相まって生物は、4.5億年前カンブリア期に一気に爆発的に適応放散し、多種多様な種が登場する。そしてその結果、これまでの自然圧力に加え、(生物同士の圧力である)「種間圧力」が急激に高まる。
この種間圧力に適応するために、莫大なエネルギーを獲得できる酸素呼吸にさらに可能性収束し、酸素をより多く取り込む「呼吸システムの進化」と「そのエネルギーをどこに使うのか」というのが、生物の大きな課題に移行する。そして、
オゾン層が形成されたことも相まって、莫大な酸素エネルギーをダイレクトに空気から摂取できる陸上に進出し、その摂取量を飛躍的に増大させる。

その結果、3億年前の昆虫は、高濃度の酸素環境下で躯体を巨大化させ、時代の制覇種となった。
また、2.5億年前の低酸素濃度の環境下では「気嚢+肺」という最も高度な呼吸システムをつくり制覇種となった生物が恐竜だった。
しかし適応戦略が「躯体の巨大化」だったため、環境の変化(特殊寒冷期)に適応できず絶滅する。
一方、鳥類は、恐竜の呼吸システムである「気嚢」を受け継ぎ、その酸素エネルギーを「運動機能=飛ぶ」ということにあて空の制覇種となり、特殊寒冷期にも長距離移動により生き延びてきた。
そして、哺乳類は、酸素エネルギーを「生殖機能」にあて、体内で酸素濃度をコントロールする「胎盤機能」を作り出し、それは特殊寒冷期にも子孫を残すことが可能だったため、恐竜がいなくなった特殊寒冷期後に陸の制覇種となり、現在の人類に繋がっていく。

◇ ◇ 
【(前回記事の)前半 [8]+ (今回記事の)後半 = まとめ】
◇ ◇  

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(※本文の通し番号は、図中の文字番号を示しています。

原初の生命は、海底熱水噴出孔の鉱物の場で、自然由来の有機物からエネルギーを得る「原始有機物発酵細菌」
ただし、限られた環境の中で自然由来の有機物の枯渇とともに消えてゆくことを繰り返していた。

有機物枯渇の外圧に晒された原始有機物発酵細菌(※①)のなかから、代謝機構の前躯体である鉱物の結晶(鉱物による非生物学的な化学合成エネルギー代謝)を取り込み、有機物以外の無機物からエネルギーを獲得する「最古の化学合成エネルギー代謝を有した超好熱菌」が誕生する。
ただし、その生命は、原始化学合成と発酵の協調作業で「無機・有機複合体発酵」であった。

最古の化学合成エネルギー代謝は、無機・有機複合体発酵と呼べるもので、化学合成機能としては端緒についたレベルであった。
また、発酵の仕組みでは、有機物を酸化してATPを得るため、細胞質内が次第に酸性化することが避けられず、無機・有機複合体発酵でATP生成機能を上昇させた超好熱菌(※②)は、体内が酸性化することがより一層重要な課題となる。
そうすると、超好熱菌(※②)のなかから、原始的ながらも海中の水素から電子を取り出し細胞膜での「電子伝達系」を使った化学合成の呼吸法を開発して、体内の酸性化を解消し、ATP生成機能を上昇させる「嫌気性呼吸細菌」が誕生する。

しかしながら、電子伝達系を使った化学合成エネルギー代謝を有したとはいえ、エネルギー源となる硫化水素などを獲得する熱水活動域は限定的で、かつ熱水噴出も不確定なため、海水の温度が低下してくると、生存環境に大きな影響を与える。
また、水素から電子を取り出し電子伝達系を使ってATPにするにはまだ効率も低かった。
そうすると、原始嫌気性呼吸細菌(※③)のなかから、太陽光エネルギーを利用することで、細胞膜の電子伝達系の回路を応用してATPを生成する「光リン酸化」と、解糖系の発酵回路(EMP回路)を逆転させて自らの体内で有機物を生成する「カルビン・ベンソン回路」をもつ、「(嫌気性)光合成細菌」が誕生する。

そしてさらに、その(嫌気性)光合成細菌(※④)のなかから、硫化水素ではなく海中に無尽蔵にある水を利用し、2段階の光励起回路(光化学系ⅠとⅡ)を開発して、安定して効率よくATP獲得する「酸素発生型の光合成細菌(シアノバクテリア)」が誕生する。
そしてこのことが、地球環境を全く違う世界に大転換させることになる。

すると、シアノバクテリアが廃棄する有毒な酸素により、生物は史上最大の生存危機に晒されることになる。
そうすると、(嫌気性)光合成細菌(紅色細菌)(※④)のなかから、光合成のカルビン・ベンソン回路を逆転させて酸素を利用する「トリカルボン酸回路(=TCA回路=クエン酸回路=クレブス回路)をつくり、酸素呼吸によってエネルギーを生産する「好気性呼吸細菌(αプロメテオ)」が誕生する。

そしてこの時点で、生命のエネルギー代謝システムが完成する。
(※ここまでが前編の記事)

一方、その生物史上最大の外圧の中で、嫌気性の細菌(※③)のなかから、酸素の解毒酵素を開発し、さらに核内に遺伝情報細胞のDNAを包み込み分離することで、体を大きくして“捕食”を行うことを戦略とする「(嫌気性)真核生物」が誕生する。

その(嫌気性)真核生物(※⑦)は、好気性細菌(αプロメテオ)と共生→「ミトコンドリア」、光合成細菌(シアノバクテリア)と共生→「葉緑素」など、様々な細胞内小器官を備えていく。
この(嫌気性)真核細菌と好気性細菌(⇒ミトコンドリア)の安定的な共生を可能にしたのが、ミトコンドリアの「分裂抑制物質or遺伝子」で、その共生の実現を基盤にして、細胞の機能分化⇒多細胞化を進めることが可能になる。

そしてその機能分化の一つである「精卵分化(性システムの進化)」においても、嫌気性細菌(変異)→精子、好気性細菌(安定)→卵子の共生が実現基盤になっている。
こうして生物は、「変異」と「安定」という二大課題を分化し高度化させることに成功し、これがDNAの多様性→生物の適応可能性を高める。

一方、植物が光合成した有機物を資化して生育する従属栄養生物が再び繁殖する環境が整っていた。
「DNAの多様性を実現する雌雄分化」、「植物が光合成で生成した豊富な有機物」、それに「莫大なエネルギーを得る酸素呼吸」が相まって、動物は、カンブリア期に一気に爆発的に適応放散し、多種多様な種が登場する。

その結果、これまでの自然圧力に加え「種間圧力」が急激に高まり、この種間圧力に適応するために、莫大なエネルギーを獲得できる酸素呼吸にさらに可能性収束してゆく。
そして、オゾン層が形成されたことも相まって、莫大な酸素エネルギーを空気から摂取できる陸上に進出し、その新たな環境に適合させるべく酸素呼吸システムを進化させることで、昆虫、恐竜、鳥類、哺乳類など多様な動物へ進化を推し進め、人類に繋がってゆく。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

初期生命は、エネルギー代謝機能を進化させることで進化を遂げていったが、その原動力は、限られた海底熱水環境、有機物の枯渇、体内の酸性化、猛毒な酸素環境、種間圧力の上昇、特殊寒冷期などの過酷な「逆境」であり、その外圧に晒されるなかで、エネルギー代謝を進化させ適応態を実現してきた。
そして、新たな外圧に直面するたびに、それまでの外圧適応態の機能を取り込み、そこに新たな機能を塗り重ねることで進化してきた。

生命の初期進化の歴史は、逆境のなかから我々の祖先は生まれ、生命はその逆境に適応した実現態の「塗り重ねの進化積層態」である、ということを教えてくれます。
そしてこれは、生命の進化は、「万物は融合し組織化・秩序化する方向に進化を塗り重ねる」という自然の摂理に則っています。

      

前編と後編に分けた「生命の初期進化」は、ここまでです。

生命進化が大きな影響を与えたこともあり、地球は他の惑星にない環境を有しています。
そして、その環境をつくり持続させているのは、生命も含め様々な要素が複合的に絡み合い、そこに秩序を形成しているためですが、そのなかで他の惑星にはない海と大気は大きな要因です。

【地球のしくみ】シリーズのラストでもある、次回の総集編の最終回は「地球大気の進化」です。

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