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環境問題のパラダイム転換2 ~『二酸化炭素による地球温暖化仮説』から導き出された政策をどう評価するのか? 日本編~

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地球温暖化に本気で取り組んでいる国なんて、日本も含めてないのではないかと感じます。
取り組んでいたとしても、それはパフォーマンスであって本音は“経済拡大>温暖化抑制”だと思います。今の地球温暖化論はビジネスのネタであって、地球温暖化なんて起こらないという説もありますが、本当のところはどう思われますか?


kuwacchonさん [1]『yahoo知恵袋』より

☆☆☆地球温暖化対策の政策への違和感
この質問が表しているように、多くの人々は、工業生産を活性化させ消費を促進する「経済対策」と、環境破壊を食い止めるための「環境対策」が同時に成り立つのか?という、違和感を持っています。

日本は、2020年までにCO2排出量を1990年比で25%削減する目標を明記した「地球温暖化対策基本法」を制定しようとする一方で、CO2の排出量を削減するために、主に以下のような政策を進めています。

①グリーン家電(地上デジタル放送対応テレビ、冷蔵庫、エアコン)、ハイブリッド車などのエコカー、太陽光発電設備などの省エネ製品の普及を目的とした補助金制度
②CO2を排出しないとされる原子力発電・太陽光発電などの開発促進
③環境対策の財源確保のため、環境税の導入

例えば自動車の生産を取ってみると、環境にやさしいという触れ込みで、エコカーやハイブリッドカーの売り上げを大きく伸ばしていました。最近では、エコポイントなどの補助金政策もそれを助長しています。これは、薄型テレビも同じです。その結果はどうだったのでしょう?

『環境問題のパラダイム転換1 ~CO2地球温暖化仮設を題材にして』 [2]に続き、今回は日本で取られている地球温暖化対策について、具体的な政策の実態を見ていきます。

 

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☆☆☆「環境保護」製品の購入への補助金
☆家電の消費を促進するエコポイント制度
エコポイントとは、省エネルギー性能に優れた「グリーン家電」を購入するとポイントをもらえる仕組みで、1ポイントは1円に計算され、商品券や省エネ商品の購入などに利用できる制度のことです。「グリーン家電」とは、一定の省エネ基準を満たした「地上デジタル放送対応テレビ」、「エアコン」、「冷蔵庫」の3つの家電製品のことです。

このエコポイント制度は、何を目的としているのでしょうか。環境省・経済産業省・総務省による「グリーン家電エコポイント事務局」のHPでは、以下のように書かれています。

家電エコポイント制度とは、地球温暖化対策、経済の活性化及び地上デジタル対応テレビの普及を図るため、グリーン家電の購入により様々な商品・サービスと交換可能な家電エコポイントが取得できるものです。

『グリーン家電促進事業 エコポイント』 [1]

ここでは、地球温暖化対策と同時に、地デジ放送対応テレビなどの家電の消費増大による「経済活性化」を目的に掲げています。省エネ家電が普及すれば、電力消費は低く抑えられますが、エコポイント制度により、「グリーン家電」の販売台数は増加しています。

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薄型テレビの販売台数は年間約1000万台で推移してきた。5月にエコポイント制度が始まった2009年は1390万台に増え、今年は2500万台に達する見込みという。特に、11月の販売台数は例年の年間販売台数の6割程度にあたる600万台まで拡大したとみられる。

(2010年12月15日 読売新聞) [3]


2010年10月第1週~12月第1週のエコポイント対象商品の販売台数推移を見ると、軒並み前年同月比を大幅に上回っており、11月第2週には薄型テレビの売れ行きが約500%にも跳ね上がっています。12月第1週には前年同期比30%以上の減と大幅に落ち込んでいますが、これは対象商品を購入した際にもらえる家電エコポイントが12月1日からほぼ半減する直前に、駆け込み需要が発生し、その反動があったためです。

エコポイントの財源には、関連予算が約6000億円組まれています。さらに、追加の補正予算措置で、約1500億円の上積みが見込まれています。

☆自動車販売を促進するエコカー補助金
ハイブリッド自動車・電気自動車・天然ガス自動車・燃料電池自動車・水素自動車を購入した際に申請すれば、一定額(5万円~25万円)の補助金が交付されます。

このエコカー補助金制度のによる効果は、2010年の乗用車販売台数ランキング1位の、トヨタのプリウスが順調に販売台数を伸ばしたように、2010年1月~11月までの新車販売台数が、前年比128.1%の134万1,955台になったことに現われています。

エコカー補助金制度の財源には、「環境対応車普及促進対策費補助金」で、平成21年度の補正予算で総額5837億円が計上されています。

こうした補助金の財源である予算のほとんどは、国債発行でまかなわれています。

☆原子力発電や太陽光発電の推進による大企業の優遇
原子力発電や太陽光発電は、CO2を排出しないクリーンな発電、石油資源枯渇に対する切り札、などと言われています。

実際のCO2排出量の削減効果がどうなのか?というと、たとえば原子力発電では、エネルギーを取り出すときはCO2を排出しませんが、原発の建設および、解体の際には、大量のCO2だけでなく、放射線をはじめとする様々な有害物質を出すことになります。

また、発電効率が悪いために、発電設備の開発を進める大企業に補助金が交付されるなど優遇されて、利益が上がる構造になっています。しかも、国内での原発増設には大きな抵抗があり、他の先進国と開発途上国への原発輸出を競い合っているのが実態で、日本国内のCO2削減には繋がっていません。

一方、太陽光発電システムを家庭などに設置する場合には、費用を一部負担する補助金が交付されます。平成22年度の太陽光発電システム設置補助金予算は401億円です。

こうした政策は、「省エネ製品」を開発・販売する大企業を優遇することになります。

☆環境税の導入
今年の5月14日に衆院環境委員会で、「2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減する目標」を明記した「地球温暖化対策基本法案」が、与党の賛成多数で可決されました。その後、この法案は通常国会の会期切れで廃案になっていますが、民主党政権は今回の臨時国会で法案を再提出しています。

基本法案には25%削減の具体策として、暮らしに新たな負担を求める「地球温暖化対策税(環境税)」の導入を明記したほか、企業に温室効果ガスの排出削減を義務づけた上で削減量の過不足を売買する「国内排出量取引制度」を施行後1年以内に創設することなどが盛り込まれています。

政府・民主党は18日、環境対策の財源とする地球温暖化対策税(環境税)を2011年度から導入する方針を固めた。石油や石炭などの化石燃料にかかっている石油石炭税を増税して、環境税に衣替えさせる。増税は最終的に5割(2500億円規模)を想定しているが、経済界は大幅な負担増に難色を示しており、初年度は数百億円規模となる見通しだ。

(2010年11月19日6時14分 朝日新聞)

導入が検討されている環境税は、「環境対策の財源に使う」とされています。

☆☆☆物的生産に偏った経済対策では、環境破壊と社会活力の衰弱が進行する
☆環境破壊を招く環境政策
豊かさを実現した1970年以降の日本は、物的飽和状態にあり、物的生産は縮小していきます。また、社会が必要としていない物的生産に携わる人々の活力も上がりません。したがって、物的生産をリードしてきた大企業は、今の時代の流れに適応できなくなり、自力で生き残っていくことが困難になっていきます。

それにも関わらず、縮小する市場へのカンフル剤として、国家が借金を重ねて資金を投入し続けます。

環境を考えるには構造認識が不可欠!『潮流3:’70年、豊かさの実現と充足志向』 [4]
環境を考えるには構造認識が不可欠!『潮流4:輸血経済(自由市場の終焉)』 [5]

さらに90年以降は、CO2地球温暖化仮説によって導かれた「環境対策」への補助金のばら撒きが加わることになります。

家電や自動車の省エネ化を進めていく「環境対策」によって、エネルギー消費を数%程度抑えることはできます。しかし、実際には、補助金をばらまくことで、「環境にやさしい」という付加価値をつけた新商品の生産≒消費を増大させる「経済対策」としての効果の方が強く、CO2だけでなく様々な有害物質の排出量が削減できず、かえって環境悪化を招く矛盾した政策になっています。

☆社会活力の衰弱を招く経済政策
物的飽和によって、構造不況業種となった物的生産への補助金の注入をやめて、他の人々に期待される業種、たとえば農業に支援金を回せば、人々の充足を生み出し活力も上がっていきます。しかし、現在の経済政策は、これとは逆の状態になっています。

一部大企業だけが利益を上げることになる「環境対策」への補助金のばら撒きは、工業生産を担ってきた大企業の延命策でしかありません。

この様な誤った経済政策に使われる補助金の財源確保のために、積み重ねられる国債の利払いや、環境税の導入による増税で、消費による充足に代わる人間関係の充足=活力を求めて、農業などの業種に携わる人間から、可能性を奪ってしまいます。

行き詰った工業生産に拘り続ける「経済対策」は、人々の期待からずれたものであり、社会活力の衰弱が進行していくことになります。

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