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『次代を担う、エネルギー・資源』バイオプラスチックの可能性3~バイオプラスチックの種類~

前回のエントリー『次代を担う、エネルギー・資源』バイオプラスチックの可能性2 ~バイオプラスチックとは~ [1] では、石油由来の「プラスチック」に変わる「バイオプラスチック」への転換期待が示されました。
    
「バイオプラスチック」は文字通り「バイオマス」を使うことで、化石燃料に頼らないという将来転換を見越した重要なポイントがあります。
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      「地球の未来・循環図」  日本自然工業㈱ [2]からお借りしました。
  
         
そしてその製造方法も、すでに幾通りかが実践されているのです。
例えば、トウモロコシなどのデンプン系のものは生分解性が高く、「生ゴミ袋」等として利用されています。
綿花や木材繊維を元にしたセルロース系は古くから生産されており、酢化度に応じて「包装用途」、「射出成形用途」、「繊維」、「塗料」として利用されています。
また新しい試みとして木材樹脂を元にしたリグニン系なども実践されています。
バイオプラスチックの種類を製造課程で分類すると、
        
 1.穀物・デンプン系で作られるもの・・・・・・ポリ乳酸(PLA)
 2.繊維・木質系で作られるもの・・・・・・・・・セルロース系(CA)
 3.樹脂・木質系で作られるもの・・・・・・・・・リグニン系
 4.微生物で作られるもの・・・・・・・・・・・・・・微生物系(PHA)

     
の4つに分類することができます。
では、次に「バイオプラスチック」の種類と、それぞれの特長と問題点を紹介します。
その前に ポチッと応援お願いします。
     


以下の内容は
・『バイオプラスチック材料のすべて』 日本バイオプラスチック協会編集
バイオマスプラスチックQ&A [3] 社団法人日本有機資源協会 
から引用させていただきました。
    
     
1.穀物=デンプン系で作る ポリ乳酸(PLA)
      
●特長
トウモロコシなどの植物澱粉を原料として、乳酸発酵による乳酸の重合により生成される。
     
  でんぷん → グルコース → 乳酸 → PLA
      
透明性、弾力性に優れています。また、ガラス転移温度が57℃と低いが、無機フィラー複合材料やケナフ繊維等を利用することにより120~130℃程度まで耐熱性を高めることが可能である。
製品としては、ごみ袋・レジ袋、包装用フィルムなどが作られている。

     
●問題点
現状、ポリ乳酸は飼育用のトウモロコシ(デントコーン)のデンプンを原料に生産が行なわれている。
バイオエタノール生産の為の穀物需要増加による食料高騰という問題が生じたのと同様、ポリ乳酸の原料としても、食べられない(非可食)バイオマス原料への転換が迫られてくるものと思われる。
食料問題とも関連することから、今以上に増産するのが困難な状況が生じる可能性が高い。   
     
     
      
2.繊維=セルロースで作る セルロース系
     
●特長
酢酸セルロースは、稲わらや茎、木材、綿などのセルロースのエステル化、及び生成したエステルの加水分解の二段階の反応を経て製造される。
     
  木材、綿(セルロース) → エステル化 → 酢酸セルロース(CA)
     
透明性、対衝撃性、成形リサイクル性、曲げ弾性率に優れている。
繊維や映画フィルム、録音テープのベース材として利用されている。

   
      
●問題点
セルロース系の硝酸セルロース(セルロイド)は、歴史上最も古い人工の熱可塑性樹脂であるが、極めて燃えやすく、摩擦などによって発火しやすく、耐久性がないという欠点があった。
セルロイドは、しばしば火災の原因となり、日本では消防法などで規制対象物に指定され、製造・貯蔵・取扱いが厳しく定められている。
代替品として不燃性の酢酸セルロースが作られるが、プラスチック類の代替品素材が目覚しく進歩し、ほとんど使われなくなった。
       
        
        
3.樹脂=リグニンで作る リグニン系
           
●特長
リグニンはセルロース、ヘミセルロースとともに、木材に約25パーセント含まれる有用な接着成分です。 
         
  木材  → セルロース、 リグニン 
        ↓
       エステル化(→酢酸セルロース)
 
                 
バイオマス原料のなかで、最も利用が難しいとされている。
   
[4]
          <リグニンの構造式例>  
    
●問題点
バイオマス原料のなかで、最も利用が難しいとされているのが芳香族構造を持つリグニンである。リグニンは芳香族環をもつフェニルプロパノイドが複雑に架橋結合により3次元網目構造をした巨大分子である。
またリグニンが多く含有されている木材では、セルロースやリグニンのセルロースと複雑な複合体を形成しており、純粋なリグニンを取り出すのは難しい。
しかし、パルプ生成における黒液にみられるように、エネルギーとしても大きな可能性を秘め、また強固な接着性能をもっていることからも、次代に期待したい素材である。
現状、市場で流通するまでには至らないのは、まだ研究課程であるという側面と、抽出するためのエネルギーやコストがかかることがその要因であると考えられる。
      
      
      
4.微生物=で作る  微生物産生ポリエステル(PHA)
     
●特長
PHAは、グルコースを炭素源として、微生物の体内で形成される樹脂である。
    
  植物性バイオマス → グルコース・植物油 →(微生物体内培養)→ PHA
硬質プラスチックで、生分解性、剛性、耐水性、ガスバリア性に優れている。
一方で、結晶性が高いため衝撃に弱く、単体ではフィルムやシート成型品には不向きである。
    
  
●問題点
結晶性が高いため衝撃に弱く、脆いという欠点があるため、単体ではフィルムやシート成型品には不向きである。
別の成分モノマーを導入してさまざまな共重合ポリエステルが開発されている。
可能性はありそうなのですが、微生物関連に関しては、藻から石油に転換していく技術に期待したいと思います。
            
       
          
5.バイオプラスチック普及の現状
     
バイオプラスチックの種類をみてきましたが、現状ではデンプン系から作る「ポリ乳酸」以外は、なかなか生産量を多くして流通するまでには至っていないのが実情であるようです。
      
セルロース系もセルロイドは古くからありましたが、燃えやすい欠点と石油系プラスチック類の代替品の進歩により、普及量も減少していきました。
      
石油資源を考えると、石化燃料に頼らない、バイオプラスチックの普及が期待されるところですが、 バイオプラスチックは、石油製品に取って変わるまでには至っていないのが現状のようです。
     
             
次回はバイオプラスチックの普及に向けて、新しい技術開発による可能性をとりあげてみたいと思います。

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