マグネシウムの燃焼
写真はこちら [1]よりお借りしました
『マグネシウムエネルギーは次代のエネルギーになり得るか?第3回~マグネシウムのエネルギー量』 [2]に続き、シリーズ第4回目。
今回は、マグネシウムエネルギーをどのようにして利用するのかを、矢部孝教授の著書である『マグネシウム文明論』を参照しながら、紹介していきます。
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まず、マグネシウムからエネルギーを取り出す方法は大きく分けて2つあります。
①マグネシウムを燃やす
②マグネシウムを電池の燃料として使う
①は、文字通り石炭のようにマグネシウムを燃やして使うというもの。現在火力発電所で燃やしている石炭の代替品として使うなどの使い途があります。
石炭との違いは、燃やしたマグネシウムを再びマグネシウムに還元して再利用出来るという点です。
(海中に無尽蔵にあるとことを前提としている点も、大きな違いですね)
②は、マグネシウムの他の物質との化学反応エネルギーを直接電気エネルギーに変える、というもの。
電池というと、多くの人はリチウム乾電池などがすぐ頭に浮かぶのではないしょうか?
乾電池や充電池というのは、その本体中に電気を蓄える性能を持っています。それに対し、ここで紹介する『燃料電池』は、燃料を入れると化学反応によって発電を行う、一種の発電機のような性能を持つと考えてよいでしょう。
矢部教授が提唱するのは、金属の酸化反応時の化学反応エネルギーを電流に変換する、『金属空気電池』です。
この電池は、
①爆発の危険性の高い水素を発生させずに電気を取り出せる
②正極活物質が金属である燃料電池に比べ、空気電池は正極活物質が空気中の酸素であるため、エネルギー密度を高めることが出来る
という特徴があります。
一般的な電池と、金属空気電池を図式にあらわすと、以下のようになります。(『マグネシウム文明論』を参照)
[3]
マグネシウム空気電池の反応式
負極:2Mg → 2Mg2+ +4e- (-2.363V)
正極:O2+2H2O+4e- → 4OH- (+0.401V)
全反応:2Mg+O2+2H2O → 2Mg(OH)2↓ (起電力:2.764V)
画像はこちら [4]からお借りしました
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一般的な電池では、マイナス極の活物質(電気を起こすもとになる物質)が電子を放出(酸化)し、プラス極の活物質がその電子を受けとって還元されます。一方、空気電池では、プラス極の活物質として空気中の酸素を取り入れて使います。プラス極の物質が必要なくなりますから、従来型の電池に比べて圧倒的にエネルギー密度を高められるのがおわかりでしょう。
マグネシウム空気電池において、マイナス極の活物質として用いられるのは、当然マグネシウムです。
プラス極の酸素とマイナス極のマグネシウムが反応すると酸化作用が起き、電気エネルギーを得られます。あとに残るのは酸化マグネシウムです。
(『マグネシウム文明論』より引用)
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マイナス極に使うマグネシウムを交換可能にすることで、空気電池が燃料電池になる、というわけです。
ちなみに、マグネシウム空気電池における『電子を受け取っている電極』の正体は、残念ながら明かされていません。
矢部教授はこの電池のさまざまな利用法を提案しています。
まずは自動車。マグネシウム空気電池を使って、例えばガソリンを入れるのと同じ感覚で、マグネシウムを燃料として入れ換えながら走る自動車がつくれます。
矢部教授の試算では、20キログラムのマグネシウムの搭載で300km程度走ることが可能とのこと。そのほか、現在電気や石油を使って動いている交通機関は、すべてマグネシウムを燃料源に置き換えられる可能性があります。
たとえば、鉄道は、現在は送電線から供給された電気によりモーターを動かしていますが、これをマグネシウム空気電池に置き換えます。すでに鉄道網の構築された都市では、火力発電所の燃料をマグネシウムに換え、その電気によって走らせるということになります。
また、船舶にもマグネシウム空気電池を搭載することが出来ます。矢部教授のアイデアでは、太陽光励起レーザーを人工衛星を経由して航行中の船を狙い撃つことで、マグネシウムを積み換えることなく長距離の航海を可能にするといいます (但し、現在の日本では大気中で大出力レーザーを照射できないので、法律の整備が必要です。)
もっと小型の電子機器
にも利用できます。
金属マグネシウムをカートリッジ状にして入れ換えられるようにし、電池の販売店で酸化マグネシウムを引き取って再利用するというサイクルが可能です。
マグネシウムの可能性を、さらに感じて頂けましたか?
金属空気電池は、マグネシウムのほかに、亜鉛、アルミニウム、リチウムなどを用いた研究が進められています。リチウム自体のエネルギー密度はマグネシウムよりも高いため、リチウム空気電池が実現できたとすれば、マグネシウム空気電池よりも高出力が得られるのは確かです。
この点について、マグネシウムは海水中に無尽蔵にあること、レーザーを用いて低コストで再生できることなどを総合して、リチウムに比べ優位性があると矢部教授は述べています。
実際に燃やすこと・電池として使われることを考えた場合にも、やはりマグネシウムを利用する主なメリットは、
◇海水中に潤沢に存在すること
◇太陽光励起レーザーによって還元し、再利用できること
の2点に絞られそうです。
また、地球温暖化問題の真相は別として、二酸化炭素を排出しないことも、化石燃料との違いとして挙げられます。
では、このシステムの要となる太陽光励起レーザーとはどのような仕組みなのか?ベースエネルギーとしての実現性も、この技術にかかってきそうです。
次回、いよいよレーザー技術について、詳しく見ていきましょう