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日本人は何を食べてきたのか? 第三部 part4 ~野菜~

第三部では「ごはんと共に食されてきた副食、おかず類」について追求しています。
漬物 [1]」「梅干 [2]」「海苔 [3]」・・・とこれまで、ごはんと友好関係にある「おかず」をとりあげてきました。これらは単体の素材であり、そのまま料理でもあるたいへん優れた(便利な)食材です。それぞれが日本の食事を表す記号でもあります。
しかし、おかずといえば、日本人は実に多種多様のおかずを発明してごはんをよりおいしく食べてきた民族です。諸外国ではそもそも主食副食という概念がないので「おかず」という世界はあまり重要視されないのかもしれません(日本人は何を食べてきたのか 第二部 part1 [4]を参照ください)が、ごはんという主食を生かすために日本では「おかず(料理)」が著しく発達しました。
日本の「おかず」のバリエーションの豊富さは変幻自在の素材=野菜の存在を抜きにしては語れません。
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画像は類農園 [5]さん 「高原の朝露セット」 [6]です。
調べてみると、日本原産の野菜ってすごく少ないのです。
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日本原産の野菜って数えるほどしかない
はたして日本原産の野菜っていったい何があるのでしょうか?
 ※原産=太古からその地に自生していたもの。
日本原産とされる野菜で、確実なのは、フキ・ミツバ・ウド・ワサビ・アシタバ・セリぐらい。現在、日本国内で栽培されてる野菜は150種あまり、そのほとんどすべてが外来種です。
野菜茶業研究所 [7]さんのHPに「日本における野菜の種類」 [8]の図があります。
ダイコン、ハクサイ、ネギ、キュウリ、ダイズは中国周辺。
タマネギ、ニンニク、ソラマメ、ニンジン、ホウレンソウは中央アジアから中近東。
キャベツ、レタス、アスパラ、セロリ、カブは地中海沿岸。
カボチャ、サツマイモ、インゲン、トウガラシ、トウモロコシ、ジャガイモ、トマト、ピーマンは中南米。
オクラや豆類、ゴマがアフリカ。

古い時代に伝来したのもあるけど、栽培するようになったのは多くが江戸時代以降。
外来種がその土地独自のものを駆逐していく歴史は近世以降、特に市場経済が発達した近代以降猛烈に加速したようです。
【参考】野菜の歴史 [9]
日本人はみんな品種改良技術者だった。~伝統野菜の定義から~
とはいえ、外来の種も日本人は地域に合うように改良して土地に根付かせて、ふるさとの野菜はこれ!という地域資源を生み出してきました。これがいわゆる「伝統野菜」といわれるものであり、日本は野菜王国となったのです。
 現在、日本各地で栽培され、食用として利用されている野菜には、古くから日本の野山に自生していた植物を食用とし、その中から栽培に適した種類を選抜し栽培化したものと、縄文・弥生時代から奈良・平安時代、鎌倉・室町・江戸時代を経て明治・大正・昭和・平成に至るさまざまな時代に諸外国から導入されたものとがあります。
 南北2000km に及ぶ日本の地理的条件は、野菜の種類を豊富にしました。現在栽培されている種類はおよそ150 種。アメリカの約100 種、フランスの約130 種と比較しても、日本の野菜の種類の豊富さが際立っています。
 これらは日本各地の重要な食糧として栽培され、地方の生活文化を支える役割を果たしてきました。野菜の地方品種は、まさに文化の所産であり、遺伝資源としても重要な意義を有しています。
何百年にも亙る日本人のたゆまぬ努力が現在の日本の豊かな食生活を生み出したのです。
しかし現在、その成果が無に帰してしまう危機に直面しているのです。
市場が生み出した野菜=「F1植物」の脅威
 昭和20 年代から30 年代にかけての一代雑種品種(F1種)の登場で、野菜の実用品種のほとんど大部分が循環生産されない一代雑種で占められるようになりました。その結果、地方の生活文化と密接に結びついて発展してきた地方品種は衰退し、中には消失してしまった品種も数多くあります。
現在の野菜、果物、園芸植物にF1植物が驚くほど普及していて、私たちは意識せず(自然の恵みと思い込んで)、F1種の野菜を食し、F1種の花をめでています。
 世界中で、種子会社(米・モンサント社他)による種子支配が進行しているのです。農産物の種子は、種子会社が管理し供給します。このことは、私たちが種子会社の利益を優先した販売戦略のなすがままにされることを意味しています。 
詳しくはるいネット「市場が生み出した野菜=「F1植物」の脅威」 [10]をごらんください。
ミネラル、ビタミンを野菜から摂取する⇒伝統野菜という資源
市場原理の申し子「F1種」 から、それぞれの土地で古くから生産、消費されてきた「伝統野菜」への回帰を推進しようという動きがあります。日本食への回帰を促し、その地で長年にわたって循環生産されてきた品種の持つ遺伝的な多様性、豊かさを再認識しようというものです。
以下「伝統野菜ネット」 [11]に掲載されている
「日常茶飯の伝統野菜(大阪府立食とみどりの総合技術センター 森下正博)」 [12]という文章を転載します。

昭和40年ごろから周年安定生産、消費という目標に向かって、野菜の大部分が在来品種から「F1植物」に代わっていった結果、生産性の向上にともない合理的、科学的、社会科学的にも優れた食の部分を担うことが可能となり、食の安定化に貢献してきたといえる。
 しかし、一方で食の洋風化により動物性蛋白、脂肪の摂取過多と野菜不足から生活習慣病が増加し問題となっている。近年のこれらの問題に対して、伝統野菜の持つ遺伝的な多様性をそのまま受容する必要があると考えられる。そして、地名などの付いた伝統野菜の「素材のもつ豊かさ」を市民に味わってもらいたいとの願いから、各地域で復活が始まっている。
 現在は食の洋風化、料理に要する時間が十分持てないなど様々な制約はあるが、簡易な調理法などを開発し、地域の人々が、地元にもこの様に美味しい伝統野菜があったのかと知ること、食べてみたい、栽培したいという気持ちが高まることを願う。そして、これらの活動が、自分の住んでいる地域に対する愛着を生み、郷土愛の発展と自分自身の健康維持につながり、地域の人々との輪となり広がっていくことを望む。
 伝統野菜という資源については、それぞれの地域の存在実態に即した出口の開発が求められる。ただの郷愁だけでは今後の展開は難しいことから、「こんなに豊かな野菜なのか」という出口を市民にアピールし、それを達成するために生産、流通、販売、消費、調理、食べる、全ての分野の人々が一致団結し「各地域でふるさと野菜」のルネサンスという位置づけで取り組むことが重要である。
 われわれ人間の生態型にあった米を中心に、いもと麦を加え、たんぱく質として豆、魚、ミネラル、ビタミンを野菜から摂取するいわゆる日本型食生活を見直し、健康維持に努めなければならない時を迎えた。このような食習慣を目指す点で、全国で芽生えかけている伝統野菜の復活は大きな意味を持つとともに、このすばらしい地域資源と食文化を次代の子どもたちに伝えることが緊要の課題である。

[13]  [14]  [15]
 舞鶴産万願寺甘とう     泉州産水なす            加賀太胡瓜
画像は楽天市場 [16]さんから拝借しました。
野菜は「旬」を待ちこがれるからおいしい
現代の野菜は、昔と比べて栄養価が減っているというのはよく聞くお話で、るいネットでもたくさん投稿されています。(rるいネットmsg:180436[野菜がスカスカ!?] [17]ほか)
現在は一年中同じ野菜を食べられるようになりましたが、旬の時期に取れた野菜と旬ではない時期の野菜(自然の摂理に反して栽培された野菜)の栄養価の違いは歴然です。
現在の生産者は自分で値段を決められません。たいへんな労働の割には利益が少ないのです。
高齢化、後継者不足の問題を抱えつつ生産性を追求した結果として、年間を通じて同じ品目を安定して供給できる方法を実現してきました。こうした生産・流通の技術発展のおかげで、私たちは安くいつでも食べたい食物が手に入ります。
しかし、私たち消費者は「いつでも何でも揃う」事を求めすぎてきたのではないでしょうか。食物が「いつでも揃う」のは有り難いことですが、旬を待ちこがれる楽しみは失われてしまいました。
「待つ」ことは、美味しくいただくための最高の調味料で、高い栄養価を得るためにも必要なこと だったのではないでしょうか。

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