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微視的な環境変化を感知する「皮膚」が、自然界の波動をキャッチする高性能センサーか

全生物の体内と外部環境の境界に存在する「皮膚」。
生物進化の歴史は、 アメーバなどの単細胞生物から始まります。単細胞生物には行動を判断する脳がありませんが、 それでも自らがおかれた環境を知覚判断し、環境に適応してきました。たとえばワラジムシは湿度が低くなると動き出し、高いと止まる性質を持っています。より生存しやすい湿度の高い場所を目指すためです。
単細胞生物がどこで周囲の環境を知覚し、判断しているのかというと、それは「細胞膜=皮膚」だといえます。皮膚は自己と環境を隔てる境界としての役割をもっており、 自己の内部の状態や、外部環境を知るセンサーとしての役割を発達させてきました。

 

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そんな皮膚が担う「触覚」は他の感覚器官とは違う性質を持っています。
視覚や味覚などは、感覚器官が感知した感覚を複数の情報に分解して脳に送り、連合野で統合することで判断していますが、触覚は感知した情報を細分化せず、ほぼそのままの状態で脳に届けています。

また、触覚の持つ微細な感知機能として「アクティブタッチ」と「パッシブタッチ」があります。
言葉の通り、自分の意思で対象に触れて感知しようとするのがアクティブタッチで、他者から触れられるのがパッシブタッチです。
この2つの触覚は、どちらも「皮膚で触れる」ことには変わりありませんが、脳の反応に違いがあります。アクティブタッチでは、パッシブタッチの際には反応しない前帯状皮質が活性化します。
前帯状皮質は社会的認知に関する判断を担っており、自己に関する判断他者の感情を想像することができます。

パッシブタッチで代表的なものに「くすぐり」があります。自分で自分をくすぐってもくすぐったくないことからもわかるように、くすぐったさは「他者性」が強い感覚です。
ここである実験を紹介します。
いろいろな月齢の赤ん坊を、それぞれの母親にくすぐってもらう実験です。 赤ん坊は生後7〜8ヶ月ごろを境に「くすぐったさ」を感じるようになるそうです。なぜかというと、生後間もない赤ん坊は漠然と「自分と母親は同じ人だ」という認識をもっており、 母親からくすぐられたとしても 「自分で自分をくすぐっている」感覚を覚えます。しかし皮膚感覚を通じて「自己」が確立されると触覚に他者性が生まれ、くすぐったさを感じるようになるのです。
このように触覚は、スキンシップを通じて自己と他者を判別するものであり、さらには他者の感情や状態を感知する感覚になっています。

 

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もうひとつスキンシップに関する面白い実験があります。
他者との触れ合いで皮膚が擦れることで双方の皮膚が振動しますが、この時の振動が「1/fゆらぎ※」という自然界に満ちている振動になるそうです。
※1/fゆらぎ:パワー(スペクトル密度)が周波数 f に反比例するゆらぎのこと。
 (例)人の心拍の間隔、炎の揺れ方、水のせせらぐ音、蛍の光り方、金属の電気抵抗など

この1/fゆらぎは「C触覚線維」という全身の毛根にからみつく神経線維を伝って脳に刺激が瞬時に伝達され、リラックス効果とともにオキシトシンを分泌します。
オキシトシンは、信頼感や愛情にも関わる物質であり、スキンシップによって生まれる振動がこれらの脳内物質と連動していることで、信頼感や安心感を同調させることもできそうです。
また、自然界に満ちる1/fゆらぎを感知できることで、ヒトは無意識的に自然環境とも同調しているのかもしれません。

以上のように、皮膚を通じて感知される触覚は、非常に繊細で微視的な変化を感知する感覚器官であることが分かりました。
この高性能センサーである皮膚が、他者との共感自然界の波動エネルギーの受容に対して何かしらの役割を担っていることはほぼ明らかになったのではないでしょうか。

参考文献:桜美林大学 山口創「皮膚と心」
     傳田 光洋「皮膚は考える」

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