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黒潮大蛇行にみる自然の摂理

今年もまた火山活動や季節外れの台風等で、自然災害の多い一年であったが、ここ最近になかったのが黒潮蛇行だ。大気の動きにおいて偏西風蛇行が、近年の異常気象に大きな影響を与えていることはよく知られてきたが、今年は海洋世界においても海流の蛇行がみられたのだ。そしてこの黒潮大蛇行によって今年の冬は豪雪となる可能性があるので注意が必要だ。

 

https://news.yahoo.co.jp/byline/nyomurayo/20171201-00078685/ [1]

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気象庁と海上保安庁は9月29日に、暮らしを直撃する黒潮大蛇行が12年ぶりに発生したと発表しました。8月下旬から黒潮が紀伊半島から東海沖で大きく離岸し、東海沖で北緯32 度より南まで大きく離岸して流れる状態が続いているので、平成17 年(2005 年)8 月以来12 年ぶりに大蛇行になったという内容です。

 

黒潮の大蛇行が最初に発見されたのは昭和8年(1933年)ですが・・・その後、昭和28年(1953年)、昭和34年(1959年)にも黒潮大蛇行が発生しています。

 

大蛇行の原因については、今でもはっきりしたことはわかっていませんが、大蛇行が頻繁に発生する年代と、あまり発生しない年代があります。そして、はっきりとした周期ではありませんが、ほぼ10年に一度くらい発生し、一年以上続いています。

 

黒潮大蛇行が起きると、黒潮に乗って日本近海にやってくるイワシやカツオなどの回遊魚が沿岸から遠く離れてしまうため、例年の漁場ではとれなくなりますし、遠くなった漁場に向かうには時間と漁船の燃料がかかります。

 

また、当面心配なのは、これからの雪です。

 

黒潮の大蛇行が起きると、黒潮の一部が分離して、関東から東海の沿岸を東から西へ流れ込むようになって渦をまきます。この渦は、低気圧が中心部で気圧が低く周囲で気圧が高くなるように、中心部で海面が低く、周辺で海面が高くなります。このため、沿岸潮位が10~20センチ上昇し、低地は浸水の可能性が高まります。また、低気圧が中心部で上昇量があるように、海の渦の中心部には下層から上層に向かって海水が動いています。海は、下層ほど温度が低いので、冷たい水があがってきて冷水塊となります。

 

黒潮は多量の熱を運んでくれますが、この冷水魂によって気温が下がるため局地的な気候変化が考えられます。関東地方のまとまった雪は、本州の南岸を通る、いわゆる南岸低気圧によって降りますが、冷水塊があると南岸低気圧の進路が少し南を通るようになるという調査があります。つまり、南岸低気圧が通過するとき、暖気があまり北上しないことから、「大蛇行の年は雪の降る回数が増える」ということになります。

 

過去の記録的な「豪雪」は、ほとんどが黒潮大蛇行の期間と重なるか、その前後です。つまり、直近の大蛇行 5回のうち4回は、黒潮本流とは関係がない日本海側で豪雪が発生しています。

 

昭和38年豪雪  通称「三八豪雪」(気象庁命名) 大蛇行の最中(大蛇行期間1959~1963)

昭和52年豪雪  大蛇行の最中(大蛇行期間1975.8~1980.3)

昭和56年豪雪  大蛇行が始まる(1981年11月)8ヶ月前

昭和59年豪雪  大蛇行の最中(大蛇行期間1981.11~1984.5)

豪雪なし      (大蛇行期間1986.12~1988.7)

平成18年豪雪  大蛇行が終わった(2005年8月)4ヶ月

 

黒潮大蛇行が発生している今冬は、太平洋側も日本海側も大雪に警戒が必要です。

 

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では、この黒潮大蛇行どのようにして引き起こされているのだろうか?どうも大気の動きと海洋の動きは連動しているらしい。

 

https://www.spf.org/opri-j/projects/information/newsletter/backnumber/2014/323_2.html [2]

 

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現在では、擾乱(渦)がひきおこす黒潮流路変動の予測可能性期間は、2カ月程度であることがわかっている。これは、高・低気圧のうつりかわりによって生じる空の天気予報の予測可能性期間が1週間程度であることに対応する。海の場合は、海流や関係する波の速度が大気の場合に比べて小さいことと関係し、「天気」の変化も空に比べて緩やかなのである。・・・さらに興味深いことに、引き金蛇行を生じさせる暖水渦と冷水渦は、それぞれ北太平洋中央部の大規模な海上風変動によってその生じやすさが変わるのである。また日本南岸でいったん生じた大蛇行は、下流(黒潮続流)側からやってくる大小様々な渦との相互作用によって不安定になる傾向があり、下流側が安定しているかどうかがその安定性に影響する。こうした下流部の安定性も、北太平洋中央部の大規模な海上風変動によって決まる。

以上3点に留意して、黒潮大蛇行の生じやすさを決める因子の時系列をつくると、過去に生じた大蛇行の発生時期はその因子でほぼ説明できる(Usui et.al., 2013)。黒潮大蛇行は北太平洋全体からみると小さな現象であるが、まったく偶然に生じる現象ではなく、北太平洋全体の気候変動のある種の指標になっているといえる。

 

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上術されているように海上の風の変動が、時間をかけて海流の蛇行を生み出していく。その周期はこれまでは安定していたが、近年のように大気の蛇行が続くとどのようになるのだろうか?黒潮は日本の漁業に大きな恵みを与えてきたが、今後、大気の蛇行が続くようになれば、黒潮の蛇行も恒常化し、それがさらに大気の蛇行を加速させることにならないだろうか?

 

今後とも気候変動の仕組み、大気と海流の相互循環について、なにかあればみていきたい。

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