前回の最後の疑問は、以下のものでした。
>なぜ肉食に適応した人類が肉食で病気になるのか?という疑問が出てきます。
チャイナレポートは肉食こそが癌の原因というものでした。確かに、動物性たんぱくと脂肪の大量摂取は癌への近道であるというのは実感としても理解できます。
しかし、人類の進化史からすると、なぜ?、となります。肉食を中心とする雑食に適応してきたのなら、なぜ、肉食が体を蝕むのか?
そこで、肉食か、菜食かという比較だけではなく、もっと他の傾向が出てこないか、全世界に視野を広げ、国別の癌死亡率がどうなっているのかを見てみます。
All Cancers Death Rate Per 100,000 Data Source: WHO 2011から
http://www.worldlifeexpectancy.com/cause-of-death/all-cancers/by-country/ [1]
Age Standardized(年齢補正)となっており、「長寿命=癌になりやすい」ことを補正しているようです。
グレーの部分は未調査ではなく、癌死亡率の低い地域です。平均寿命が短くとも癌で死亡すればその比率を考慮しているわけですから、平均寿命が短い地域は軒並み比率が上がりそうなものですが、アフリカ中央部、インドなど南アジアは、癌死亡率が非常に低くなっています。
これは、一般的に、癌が先進国病であることを示していると思います。
国別の表にしたものが以下です。
もう少し詳しく、国別にみると、必ずしも先進国=癌になりやすいとはなっていません。単純には、先進国病というのは正確ではありません。赤色の癌死亡率上位国は東欧、中央アジア、しょ島国家などが多くなっています。
もう一つ、一人当たりの肉食量の多さを国別に表した地図があります。 赤い色の濃い方が肉食量の多い国です。(ただし、シーフード・魚はこの肉食には入っていませんから、動物性蛋白でくくると、少し変わってきます。今回は、チャイナリポートで直接的原因とされている肉食をターゲットとして見ていきます。)
これを見ると明確ですが、肉食量の多さと、癌死亡比率は完全には合致していません。大きな色の濃淡では傾向が一致していますが、肉食こそが癌の原因なら、アメリカ、スペイン、オーストラリア、アルゼンチンなどが、上位にくるはずですが、そうもなっていません。つまり、この表と地図を見る限り、癌の第一原因が肉食であるとは言い難いのです。
ではどこに原因があるのでしょうか?
癌死亡率の高いとなっている国は、アメリカ・西ヨーロッパなのど最先進国ではなく、近年、豊かになり経済発展を遂げている国々という共通項が見えると思います。つまり、市場化が進み食のグローバル化、現代食化が急激に進んでいるが、先進国病・成人病への対応はまだ出来ていない~そんな国々ではないでしょうか。
原因の一つに現代食というのがあるでしょう。この世界地図のグレーの範囲のように貧しく、古くからの伝統食のみが食事であるような地域以外は、世界中が市場化された現代食に犯されて来ています。
現代食の問題は、
①バランス :それぞれ民族の伝統食ならば、生き続けるために追求されてきたの食様式があるのですが、それを無視してしまっているのが現代食です。
②化学物質 :近代化に伴い、あらゆる部分で自然の摂理に反する弊害。市場化された食にはつきものの物質です。
③量 :栄養が少なく偏っていても、大量の食事を安価に供給するシステムが市場化です。
の3つくらいが考えられると思います。
この内、①②は、間違いなく癌と関わりがあると思われます。癌とは体内の毒素が固まったようなもの(癌とは何か?は別のシリーズとして扱う予定です)ですから、この2つは必ず悪影響を与えているはずです。
そして、癌のイメージと「量」は直接的に結びつきませんが、現代食を考えるときに避けて通れないのが、過食の問題です。そもそも、成人病に至る要因として、脂肪やコレステロールの過剰摂取が言われますが、結局、量が問題になっているのではないのか?
癌の第一原因は肉食か、食べる量か。次回から、このあたりを見極める調査をして行こうと思います。