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【気候シリーズ】何故、今年の夏は太平洋側は猛暑、東北と山口・島根は集中豪雨となったのか?(前編)

東北地方及び山口・島根を襲った集中豪雨。
諏訪湖花火大会を襲った集中豪雨。
その一方で最高気温を更新した四万十等。
気象の変化の激しい夏となりました。まだまだ猛暑は続きそうですが、この夏の気象を整理しておきましょう。
まずは、ニュースサイトから「東北地方及び山口・島根を襲った集中豪雨」について
こちらの記事では「積乱雲次々と発達し延々降り続くバックビルディング現象」が起こったとしています。
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図解は朝日新聞WEBから


http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130810/dst13081008080003-n1.htm 
日本列島の広い範囲が太平洋高気圧に覆われ、各地で最高気温35度を超える厳しい暑さとなった。その一方で暖かく湿った風が東北北部を直撃する形になり、秋田県付近で継続的に積乱雲が発達した。湿った風が上昇気流に乗ると積乱雲が発生する。通常、積乱雲は雨を降らせると消えるが、風上側の同じ場所で次々と積乱雲が発生して風に流されると、ビルの背後に別のビルが並ぶように積乱雲が1列に並び、風下では雨が降り続ける。 これが「バックビルディング」という現象で、局地的豪雨の原因となる。7月28日に山口、島根両県で発生した豪雨の原因とされ、今回も同じ現象が起こっていたとみられる。
さて、では何故、「バックビルディング」現象が起こったのでしょうか?原因は日本海上に停滞した寒冷渦にあるようです。
●日本海上に停滞した寒冷渦が引き起こした「バックビルディング」現象→東北と島根・山口の集中豪雨
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130728/dst13072822530010-n1.htm 
山口、島根両県で発生した記録的な豪雨について気象庁は28日、「予想を超える大雨となった」と説明。日本海の上空5千メートル付近に、移動速度が遅い「寒冷渦」と呼ばれる低気圧が発生し、中国大陸からの暖かく湿った空気が、低気圧の周囲を回り込むように流れ込んだのが要因という。気象庁によると、寒冷渦は上空の偏西風が南に蛇行し、切り離されて停滞。大陸からの湿った空気は反時計回りに中国地方に流入、山脈にあたるなどして急激な上昇気流が発生したと考えられる。気象庁は東北地方の豪雨も、日本海上の寒冷渦が原因と分析。
この太平洋高気圧と寒冷渦の全体をうまく説明した気象士さんのブログhttp://blog.livedoor.jp/kasayan77/archives/29995987.html からアニメーション図解を紹介しましょう。
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http://livedoor.blogimg.jp/kasayan77/imgs/1/2/1279a5b7.gif 
このように偏西風蛇行から切り離されてできた寒冷渦が日本海上に停滞し続けたことで西側と東側で太平洋高気圧から湿度の高い空気が供給され、集中的に上昇気流が次々と発生し、集中豪雨になったということです。他方で太平洋側は渦に沿って大気が東へ流れていくことで、晴天が続き、大雨の西日本・晴天の東日本という昨年とは好対照な天気が続いたわけです。
ちなみに去年の夏の天気の特徴はこちらの過去記事をお願いします。
http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2013/01/001267.html
●偏西風の大蛇行からブロッキング現象による気圧配置の固定→晴天続きの太平洋側と雨続きの東北
では、日本海側に停滞し続けた寒冷渦はどうして作られたのでしょうか?以下の気象士さんのブログでは、北極の寒冷渦を中心に偏西風の大蛇行と寒冷渦とブロッキング高気圧が交互に発生している状況が見て取れます。
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http://ameblo.jp/oyamano-kenki/entry-11577105171.html 
キーワードは寒冷渦とオホーツク海高気圧です。日本付近はシベリア東部のブロッキング高気圧(H)、寒冷渦(L)、サブハイ(H)と交互に並んでおり、反対側の欧州もバレンツ海付近のブロッキング高気圧(H)、大西洋の寒冷渦、そしてその上にあるアゾレス高気圧(これも亜熱帯高気圧の一つ)と規則正しく並んでいます。極渦を挟んで見事に並んだこの配置には、何らかのテレコネクション(離れた場所に及ぶ相互関係)が働いている。
以前から当ブログでも問題にしてきたブロッキング現象です。偏西風が大蛇行すると、偏西風の流れから切り離された高気圧と低気圧の渦が交互に現れるのですね。そしてこの偏西風の流れから切り離された高気圧と低気圧の渦は偏西風に流されることなく、ひとところにとどまって渦を巻き続けます。こうして気圧配置が固定されてしまうことをブロッキング現象と呼びます。
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http://dil.bosai.go.jp/workshop/01kouza_kiso/reigai/f2.htm 
普通、偏西風が西から東へ大気を動かしてくれることで、雨が降ったり、晴れ間が現れたりと、天気は変動し続けてくれます。そして、そうであれば、晴天も雨天もほどほどで流動していきますから、今年のような集中豪雨とか異常高温にはなりません。ところが偏西風の蛇行が大きくなり、偏西風の流れと切り離された寒冷渦、ブロッキング高気圧が停滞し続けると、雨が降り続くところと、晴天が続くところが固定され、極端な差となってあらわれます。
今年の場合、日本海上に寒冷渦が停滞、オホーツク海上にブロッキング高気圧が停滞したことで、朝鮮半島部分と東北に前線が固定されてしまいました。これによって、太平洋側は晴天続き、山口・島根と東北が雨続きという状態に至ったわけです。
(続く)

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