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【地球のしくみ】23~大気編(9) ~宇宙からくる「紫外線」「隕石」「放射線」を守るシールド

みなさん、こんにちは。
【地球の仕組み】大気編シリーズ(5)~(8)では、生物の代謝系の進化を追ってきました。様々な逆境が進化を生み、生物は、化学合成⇒光合成⇒酸素呼吸と代謝機能を高度化してきました。
約35億年前に光合成細菌が生まれ、それ以降、酸素濃度が上昇していきました。(下図)
そして、約4.億年ほど前に太陽からの有害な紫外線をバリアするオゾン層が完成したことによって、生物が陸上へと進出していきます。そこで、生物たちは、酸素をより多く取り込める呼吸システムを進化させるとともに、取り込んだエネルギーによって様々な機能を特化させていきました。
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これから、生物が陸上へ進出する上で欠かせなかった「オゾン層」について扱っていきます。今回は、宇宙からくる「紫外線」「隕石」「放射線」を守るシールドついて調べてみました。


◆ ◆ ◆ 地球史のなかで塗り重ねられて形成された大気

%E3%82%AA%E3%82%BE%E3%83%B3%E2%91%A1.JPG [1]大気の密度は高さとともに小さくなって宇宙空間につながっているので、ここが大気の上限という明瞭な境界面はありませんが、高さ80km程度まではほぼ同じ組成をしており、その組成をもった気体を空気といいます。
その空気の組成は、窒素(N2)78.08%、酸素(O2)20.95%、アルゴン(Ar)0.93%となり、この3種類だけで99.9%になる。あとは二酸化炭素(CO2)0.035%、その他にネオン(Ne)、ヘリウム(He)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、メタン(CH4)などが0.01%程度になっています。ただし、実際の空気は上記に加え、水蒸気を0.1%~0.2%、多いときには2%程度含んでいます。
次に、地球の大気の温度は高さと共に変化しており、高さとともにどのように気温が変化しているかで、以下の4つの層に分けられます。

 ・熱圏(Thermosphere:高度約800キロメートルまで)
  (↓ここまでが空気↓)
 ・中間圏(Mesosphere:高度約80キロメートルまで)
 ・成層圏(Stratosphere:高度約50キロメートルまで)
 ・対流圏(Troposphere:高度約10~17キロメートルまで)

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現在の大気の特徴として、対流圏において地球規模での大気の循環、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)の大気⇔海の循環などにより、地球の熱環境を安定させるはたらきをしていることがあります。

そして、次の成層圏>中間圏>熱圏において、宇宙から降り注いでくる紫外線>隕石>放射線から地球の生物を守るシールドを形成していることは、他の惑星と異なるより重要な特徴です。
そして、このシールド形成に重要な役割を果たしているのが、約27億年前からのシアノバクテリア→約4億年前頃からの陸上植物、つまり“生物起源”により大気中に増加した酸素分子(O2)です。

それでは、それぞれの層について詳しくみていきましょう。

◆ ◆ ◆ 対流圏

%E3%82%AA%E3%82%BE%E3%83%B3%E2%91%A2.JPG [2]大気の一番下層部で、高さとともに気温が下がっている層で、この対流圏には地球の大気の全質量の約75%、また、温室効果に最も影響する水蒸気のほとんどが含まれています。
対流圏の高さによる気温の下がり方を気温減率といい、その割合は平均するとおよそ0.6℃/100mです。つまり、地表の気温が20℃だと、その上空1000mでの気温は14℃、2000m上空では8℃程度になっていることが多いです。
地表付近のまわりよりも暖められた空気の塊ができると、その空気塊の密度はまわりよりも小さくなるので上昇を始めます。上昇した空気塊は断熱膨張することによって気温が下がり、また上空で熱を放射して冷えたり、また含んでいた水蒸気が凝結することによって気温が下がり、冷えた空気塊は下降します。
こうして対流圏の空気ではその名の通り対流が生じます。また、対流に伴って風が吹いたり、雲ができたり、雨が降ったりという気象現象を起こし地球の熱環境を調節しています。

◆ ◆ ◆ 成層圏(~オゾン層)

%E3%82%AA%E3%82%BE%E3%83%B3%E2%91%A3.JPG [3] 対流圏の上の成層圏の最下部はほぼ気温が一定ですが、高さ20kmから高さ50km程度では高さとともに気温が上がっています。これはこの付近に存在するオゾンが太陽からの紫外線(エネルギー)を吸収しているためです。
このオゾンが生物にとっては有害で危険な紫外線、とくにDNAを破壊する波長250nm~270nmの紫外線を効率的に吸収するという重要な役割を果たしています。特に、高さ20kmから45kmはオゾンの密度が高いです。ただし、オゾンが多いといっても、地表付近の密度で換算するとその厚さはわずか3mm程度でしかありません。
対流圏と違って上空ほど気温が高いので対流も生じにくく、これに伴う気象の変化がありません。つまり安定しているので、長距離を飛行する大型ジェット機はこの成層圏(の最下部)を飛行しています。
成層圏に気は大の全質量の約17%が含まれています。だから、対流圏と成層圏で92%の大気が含まれることになります。

◆ ◆ ◆ 中間圏

成層圏の上、高さ50km(気温は約0度)からは再び高さとともに気温が下がり、高さ80kmでは気温は約-80度~-90度になっています。この間を中間圏といいます。
中間圏の大気の密度は地表付近の大気の1万分の1程度でしかありません。しかし、この密度でも地球に飛び込んでくるいん石にとっては大きな密度で、大気との摩擦熱で発光します。また高緯度では、宇宙から飛び込んでくる細かい粒子(宇宙塵)のまわりに氷が付着して、横から太陽光を受けると光って見える夜光雲が見られることもあります。
中間圏までの大気組成はほぼ同じで、この組成を持つ大気(気体)を空気といいます。だから、空気の上限は高さ80kmということになります。

◆ ◆ ◆ 熱圏(~電離層)

%E3%82%AA%E3%82%BE%E3%83%B3%E2%91%A4.JPG [4]高さ80km以上からはまた高さとともに気温が上昇し、高さ400km以上では1000度、800km以上では2000度にもなっています。中間圏よりも上を熱圏といいます。
熱圏になると、大気の組成は空気の組成とは異なってきて、分子よりも原子(窒素原子や酸素原子)の形で存在します。この原子が太陽の紫外線やX線を吸収して高温になっています。また、紫外線を吸収することによって、原子は電離して(イオン化して)、電子とプラスのイオンになっています。この電子やプラスのイオンの密度が高い部分を電離圏(電離層)といいます。
オーロラは熱圏の最下部(高度90km~130km)で、大気の原子に太陽から飛び出した荷電粒子(水素原子核(陽子)や電子)が衝突して発光する現象です。
熱圏では大気の密度は大変に小さく、高さ450kmで地表の1兆分の1、高さ800kmでは100兆分の1でしかありません。このように密度が小さいので、「気温が高い」といってもエネルギーは小さいので、熱をしては感じられないでしょう。だから、高さ300km程度を飛んでいるスペースシャトルそのものや、あるいはスペースシャトルから外に出て船外活動をしても平気なわけです。

さて、ここで疑問がわいてきます。
「気温が高くても、エネルギーが小さいと熱が感じられない」とは、どういうことでしょうか?
そもそも、「温度」とは何なのでしょうか?
◆ 物体が温かい、または冷たいということを数値で表したものが温度
火に手をかざすと、私たちは温かいと感じ、水に手を入れると冷たいと感じます。ところが、同じ温度の水でも、暑い日と寒い日では、まるでちがう感じがします。
そこで、どのような条件下であっても、誰もが共通のことばで温かさ、冷たさを伝えあうために、数値で表すことが考えられました。温かい、冷たいという感覚的な表現のかわりに、数値で表現したのが温度です。
◆ 温度は熱エネルギーの状態を数値化したもの
すべての物体は、原子や分子によって構成されています。物体が熱くなるのは、この原始や分子の運動が活発になるからです。一方、冷たくなるのは原始や分子の運動が不活発になるからです。この運動を物理学では熱エネルギーと呼んでいます。つまり、物体の温度は、熱エネルギーの状態によって高くなったり、低くなったりしているのです。
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具体的には、物質を構成する分子運動のエネルギーの統計値を用います。例えば、摂氏では1気圧での水の氷点を 0度、水の沸点を100度として、その間を100等分したものを1℃として表します。
つまり、温度というのは、あくまでも分子の平均運動量によって定義されるものなので、その分子の濃淡によって、私たちが体感する感覚は全く違うものになります。
熱圏の気体は、太陽からの短波長の電磁波や磁気圏で加速された電子のエネルギーを吸収し、かなり活発に運動していますが、その密度は、高さ450kmで地表の1兆分の1、高さ800kmでは100兆分の1しかありません。分子レベルでみると超高温ですが、空間(=熱圏全体)としてみると、その熱さを感じられるわけではないのです。

◆ ◆ ◆ 磁気圏

磁気圏は、熱圏のさらに外側にあります。
地球は磁場を持っており、まるで地球の中に1本の棒磁石があるような形をしています。地上で方位磁石を用いたとき、常にN極が北方向を指すのはこのためです。磁気圏とは、宇宙空間の中で地球が持つ磁場の勢力が届く領域です。地球には、もともと図2のような形の磁場がありますが、太陽系内においては太陽風が吹いているため、その影響から、磁気圏は図3のように、太陽方向で潰れ、夜側に向かって引き延ばされた形をしています。
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図は、こちら [6]からお借りしました。

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このように、地球は「オゾン層」「電離層」「磁気圏」という3層のシールドに守られており、生物を生かしてきました
次回は、オゾン層が紫外線を吸収するメカニズムに迫ってみたいと思います。

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