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【2012衆議院総選挙直前企画!】7~自然エネルギーでどこまで可能なのか?

2012衆議院総選挙直前企画第7弾!原子力発電に替わる代替エネルギーの可能性を探るシリーズ2本目。今回は、過去の記事から自然エネルギーが持つポテンシャルを探ります。
 
日本は四季に恵まれた自然豊かな島国です 😀 しかしその一方で、日本は太古の昔より、台風や地震、そして火山の噴火などの自然外圧に晒されてきた島国でもあります。しかし見方を変えれば、これらの自然外圧とは地球の巨大な運動エネルギーそのものでもあるのです。
 
その自然外圧=自然エネルギーを資源として有効利用することできれば、日本のエネルギー資源の可能性は大きく開かれます。
 今回の総選挙において、未来の党、共産党、社民党、新党大地、新党日本が脱原発を掲げ、その流れで自然エネルギー、再生可能エネルギーの活用を掲げています。
しかし、マニフェストを見ると各党ともお題目が並ぶだけで、ほとんどが具体的な政策とはなっていません。
新党日本がオーランチオキトニウム(藻から作る石油)実用化を上げているくらいでしょうか。
脱原発に消極的な意見を見ると、経済性や技術的問題で自然エネルギーは原発よりも現実性が低いという評価になっています。
 本当にそうなんでしょうか?
 今回はそのあたりを見て行きます。
 
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続きが気になる方はポちっとね♪ 


◆◆◆藻から作る石油
 まず、公約にも上げられている「藻から作る石油」について、どれくらいの可能性があるのでしょうか?
2010年04月19日
『次代を担う、エネルギー・資源』水生圏の可能性 6.藻から生産する油脂(エネルギー)の生産性を評価する [1]

(1)日本人一人当たりに対する年間消費エネルギー量について
それではまず、日本における年間消費エネルギーから押さえてみましょう。
2004年の日本エネルギーバランスフローは、経済産業省の統計によると、
・石油や原子力などの一次エネルギー国内供給量は、年間23,060×10の15乗ジュール
・日本国内の最終エネルギー消費量は、16,024×10の15乗ジュールです。

日本の人口は、平成17年国勢調査によると、約1億2800万人となります。
一人当たり、最終エネルギー消費量は年間125×10の9乗ジュールとなります。
(2) 藻から生産する油脂の生産量について

では、日本の最終エネルギー消費量を全て賄おうと考えた時にどれ位の面積が必要になるのでしょうか?
結果は6.7万平方キロメートルとなります。つまり、日本の国土面積の37.8万平方キロメートルの18%が藻の栽培に必要となり、流石にこれは現実的ではありません。
一方、日本の未利用水田30万haを藻の栽培に利用すると考えると、最終エネルギー消費量の4.5%が賄えることになります。

 
◆◆◆小規模水力発電
 次ぎに水力発電です。
大きなダムを増やさなくても、現在あるものを有効に使うだけでかなりの発電量増加が見込めます。
そして、注目するのは小規模水力発電です。
2011年02月07日
『次代を担う、エネルギー・水資源』水生圏の可能性、水力エネルギーの活用13.水力比率37%に向かうロードマップ [2]

【1】2万箇所1500万キロワットの小水力発電所で電力自給37%を目指そう

前回のおさらいですが、電力需要の37%を水力で賄うためには、
・既存の(大規模ダムなど)水力発電所の稼働率を上げる(39%→64%)
・中小水力発電所を全面的に作って行く。1530万キロワット、既存一般水力の70%相当。

の2点を実現していくことになります。
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これが実現できれば、将来の電力需要の37%を賄えます。具体的に以下に計算して見ます。
・ 一般水力は、今後つくれるものも含めて発電能力2,460万KWとし(現状2074万KW)、稼働率は64%とします。(1955年の実績が61%ですから、可能でしょう。) 
・ 揚水型は、現在の能力のままで稼働率8%と設定します。(1995年の稼働率が6.5%ですから、可能な稼働率でしょう。) 
・ 中小水力発電所は、環境省の試算を元にして、発電能力1,530万KWとします。地域密着型でメンテナンスもこまめにできることから、稼働率は75%とします。 
⇒この結果、水力発電全体で、年間、2,564億KWhの発電ができます。現在の発電量777億KWhの3.3倍にもなります。 
 
一方、必要電力供給量の方は、現在の70%(30%縮小)程度と想定します。この結果、水力発電で、電力供給の37%が賄えることとなります。 
そして、これを実現するための課題は①全国に2万か所の中小水力発電所をつくること②これまでつくってきた大型発電所の稼働率を上げることの2点になります。

◆◆◆地熱発電
 最後に地熱利用です。
2011年02月13日
『次代を担う、エネルギー・水資源』水生圏の可能性、水力エネルギーの活用<番外・予告編>.火山列島・火の国日本の可能性~高温岩体発電・マグマ発電が国産エネルギー資源の切り札!~ [3]

★地熱資源って?
地熱資源とは、深さ約3km程度ぐらいまでの、比較的地表に近い場所に蓄えられた地熱エネルギーを資源として利用するものです。これには、地熱発電のほか、温泉(浴用)、暖房・熱水利用(家庭用、農業用、工業用)といった用途があります。
 
★地熱資源にはどんな種類があるの?
 
地熱資源は、地下深部からの熱の輸送メカニズムによって、2種類に大別できます 。
① 地下深部から上昇してくる蒸気や熱水によって熱が運ばれる「対流型地熱資源 」
② 熱水の上昇がないので熱伝導によって熱が運ばれる「高温岩体型地熱資源」

 
現在商業規模で地熱発電が行われているのは、①の「対流型地熱資源」です。資源量的には、②の「高温岩体型地熱資源」の方がはるかに多いので、この利用技術が現在さかんに研究されています。 
 
 
★地熱発電って?
地熱発電とは、火山活動による地熱を用いて行う発電のことです。主に地熱によって生成された天然の水蒸気により蒸気タービンを回して機械的エネルギーに変換し、発電機を駆動して電気を得ます。タービンを回して発電するのは、水力発電や火力発電と同じです。簡単に言うと火山の水蒸気を利用してタービンを回して発電するというのが地熱発電なのです。
★第二世代の地熱発電が実現!
高温岩体発電
天然の熱水や蒸気が乏しくても、地下に高温の岩体が存在する箇所を水圧破砕し、水を送り込んで蒸気や熱水を得る高温岩体発電の技術も開発されており、地熱利用の機会を拡大する技術として期待されています。 既存の温水資源を利用せず、温泉などとも競合しにくい技術とされ、少なくとも38GW以上(原子力発電所40基弱に相当)におよぶ資源量が国内で利用可能と見られています。既に多くの技術開発は済んでおり、また現在の技術ならばコストも9.0円/kWhまで低減できると見込まれています。

さらに、「地熱発電」の能力は、公表値でみても「原子力発電」の半分もある! [4]といった報告もされています。
◆◆◆ポテンシャル合計
 これら藻、水力、地熱、以外にも風力、潮力、太陽光といった可能性のある自然エネルギー利用があります。この自然エネルギー利用は、各地域で限定的に、その地域に合った方式を選ぶことになります。今後、エネルギーは、ますます小型化、分散化していくことになるでしょう。その方が環境負荷が小さいということなんだと思います。
そして、以上のエネルギーポテンシャルをまとめると、
「藻から作る石油」は休耕田全て使って4.6%。今後、食料自給率を引き上げる必要性も出てくると思われます。が、広い水面さえあれば可能ですので、その半分弱、2%ほどならば現実味もあるのではないでしょうか。藻の生育に欠かせない有機物を地域の廃棄物で賄うといった循環型のシステムも考えられます。
「(小規模)水力発電」は最も可能性があると思われます。記事の中の計算=37%は将来のエネルギー消費量を70% で見た上ですから、現在の消費量比に直すと26%ほどになります。
「地熱発電」はシミュレーション出来ていませんでした。現在の利用度が0.6%ほどなので、少しでも上げて、やはり2%程度は可能だろうと考えます。
 ということで、太陽光や風力発電を除いた①②③でも試算合計が30%、日本の原子力発電比率(今はほとんど発電してませんが)29%ですから、少なくとも原発分はほぼ賄うことが出来る数字です。
 多くの脱原発批判派の言う経済性ですが、原発の安い発電コストには核廃棄物の最終処分費用や、いずれ訪れる廃炉の費用は見込まれていません。作りっぱなしの費用なのです。改めて「原発やめたら電気代が上がる」のウソ [5]
 各党のマニフェストは、社会の雰囲気を反映し、どの党も将来的には原子力縮小を謳っています。しかし、今まで政治家のやってきたことを振り返れば、マニフェストなるものがいかに言葉だけで終わったか、みんな知っています。
 ここは、主要メンバーの立ち位置が、日本国民の側なのか、既得権益・官僚の側なのか、国際資本の側なのか、を読み解いていくしか無いでしょう。
参考→国際情勢から政局を読み解く2 [6]国際情勢から政局を読み解く4 [7]
 自然エネルギーの利用は夢物語でも何でもなく、日本の技術力を持ってすれば、今後10~20年以内には現実的な政策となるはずです。そのためにも、今すぐ国を挙げて取り組むべき課題であるのは間違いないはずです。政党の軸足がどちらを向いているのか、今回の選挙では、しっかりと見て行く必要があります。

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