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【地震のメカニズム】10.解離水爆発説~化学反応エネルギー(爆発)が地震の原動力~

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画像はこちら [1]からお借りしました。
 
前回紹介した岩漿(マグマ)貫入説では、地殻内間隙へのマグマの急激な貫入による衝撃力が地震を起こす原動力であるとされていました。(前回記事 [2]参照)
 
しかし、地震を引き起こすエネルギーはより大規模であると想定し、化学反応エネルギー(爆発)に着目したのが解離水爆発説です。
 
今回はこの解離水爆発説を紹介します。
 
 


◆解離水爆発による地震発生メカニズム

地下内部の水はライブラリー10 [3]12 [4]に示したように、熱水状態を過ぎると超臨界状態となりますが、それを超えると、酸素と水素に熱解離し始めます。この限界の層を解離層と呼んでいますが、この層は温度と圧力の変化に応じて、地下内部で上下するはずです。解離層内部では温度や触媒物質の存在と共に解離度が高くなっていきます。
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1、通常は解離層内の結合水は安定しています。
2、圧力の低下、あるいは周辺温度の上昇によって、解離層の位置が上がり、解離度が増加します。急激な上がり方をすると、マグマ溜りの内部では、解離した水素ガスと酸素ガスの混合気体(解離水、理科の実験では爆鳴気とも呼ばれている)が蓄積されて、圧力が増大します。これが岩盤にマイクロクラックを発生させ、地震の前兆現象を起こす可能性があります。
また、プラズマ状態の解離ガスが高速度で移動すれば、MHD発電 [5]が起こり、その地中電流が電磁気的な前兆を起こしている可能性もあると思われます。
前兆には、地電流の発生とか、電磁波による異常、発光現象等が考えられます。解離反応は熱を奪う反応ですので、マグマ溜りの周辺温度はこの時には局部的に低下していきます。
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3、解離が終了すると、今度は周囲からの熱が移動してきますので、周辺温度は元の温度に戻っていきます。そして、爆鳴気の爆発条件に達した時、着火となり、爆発します。ここまでが地震の第一段階といっていいでしょう。爆発の方向はマグマ溜りの形状によって決まると思います。
4、爆発後は、混合気体が超臨界状態の結合水に戻りますので、圧力が降下して、マグマ溜りは潰れてしまいます。これが地震の第二段階です。爆発によって熱が放出され、解離層は地震の前の位置まで下がります。地震現象には押し引き現象という特有の現象がありますが、第一段階の爆発で「押し領域」ができ、第二段階で「引き領域」ができます。その境界に大地震になるほど断層という地震の傷跡が現れるのです。図では逆断層のケースを描いています。断層は地震の後に「ズルズル」と滑るように発生したという観測例があります。断層が動いて地震が起きるのではありません。
「新・地震学セミナーからの学び 21 解離水の爆発による地震の発生機構」 [6]から抜粋引用

爆鳴気:可燃性の気体と酸素を適当な割合で混合したもので、点火すると爆発的な燃焼反応を起こす混合気体
MHD発電:電離によって生じた荷電粒子を含む気体(プラズマ)が、磁界を横切って流れるとプラズマ中に電流が発生するので、その電流を取り出す発電方式(Magneto-Hydro-Dynamics)
 
 
押し引き現象に着目した岩漿貫入説を土台にしつつ、力学エネルギー(衝撃力)ではなく、水の解離反応による化学反応(爆発⇔爆縮)エネルギーが地震を起こす原因としています。
 
次に解離水の反応による爆発がどのように起こるのかを見ていきます。
 
 
◆解離水爆発の仕組み

水は温度と圧力によって、固体とも、液体とも気体ともなる物質であります。水の三態として知られているもので、その関係は図ー1のようになります。高温、高圧の地下では、熱水状態を超えると超臨界水となります。さらに温度が上昇すると、酸素と水素に熱解離しますが、その解離度は温度、圧力、触媒物質の存在によって、変化します。一般には温度が高いほど、圧力は低いほど解離度が高くなります。珪酸化合物の存在は触媒となるために解離度が高くなるようです。解離度が等しいライン(等解離度線)を引くと図のような斜線で表されるはずです。
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図-1 水の三態図と等解離度線の関係
図中の円形の部分を取り出して解離水の爆発現象を説明したのが、図ー2です。
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図-2 解離水爆発の説明(模式図)
解離度が低い領域にあった安定した結合水(超臨界状態の普通の水のことです)が、解離度の高い領域に移動または、環境の変化があると、解離水が発生します。解離反応は吸熱反応であるために、周囲の温度は低下します。爆鳴気とも言われる解離水ですが、すぐに着火することはありません。しかし次第にその外縁から熱の移動を受けると、低温度領域が減少して、着火・爆発に至ります。これが地震の発生であります。爆発は結合反応で、熱を放出しますので、再び結合水に戻ると共に、温度を回復します。
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しかし完全に元の温度・圧力関係に戻るのではなく、若干のエネルギー損失があるはずです。地震エネルギーとして消費されるためで、その分だけ地球が冷えたことになります。解離度の変化が激しい時には、大量の解離水が発生しますので、大地震となります。
この図のような解離反応と結合反応が繰り返し起こっていることが余震が続く原因です。余震は解離条件が安定するまで終わることはありません。
「新・地震学セミナーからの学び 24 水の三態図と解離水爆発の関係(余震が起きる理由)」 [7]から抜粋引用

 
確かに、このメカニズムであれば、余震が継続する事も説明できそうです。
 
ただし、マグマの温度が一般に800~1200℃であるのに対し、水が水素と酸素に解離する温度は常圧時で2000℃以上と言われています。
よって、何らかの別の要因が、圧力の著しい低下、もしくは非常に大きな熱エネルギーの流入などの現象が引き起こすことで、初めて解離反応自体が生じると考えられます。
 
たとえば、マグマ化説 [8]で取り上げた「地球内部の核分裂反応→電磁波放射→岩盤間での反射・増幅→高温化」という現象がマントル上部で起きているとすると、解離反応が誘発される可能性も十分に考えられます。
 
地震時に生じるエネルギーの膨大さを考えると、従来のプレートの移動・衝突による力積⇒歪み解放エネルギーだけでなく、より大きなポテンシャルを持つ化学反応エネルギーや核反応エネルギーと地震の関連性に着目して追求していくことが重要になると思われます。

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