前回 [1]、地球に降り注ぐ宇宙線量の増減によって、地球の寒冷/温暖が促進される仕組みについて扱いました。
今回扱う内容は、今まで扱った宇宙気候学の見識を踏まえると、地球の全球凍結や生物の大絶滅といった歴史上の難問も説明し易くなる点です。

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以下、深井有著「気候変動とエネルギー問題:中公新書出版」より引用します。
1.宇宙線と地球の全球凍結
上のグラフは五億年前までの超新星爆発と氷河期の対応を示すグラフである。
両者は驚くべき一致を示している。
それ以前については、6~8億年前に超新星爆発のピークがあり、それに先立つ10~20億年前には超新星爆発は見られない。これはちょうど全地球凍結と、それに先立つ温暖期に一致する。 また20~24億年前の全地球凍結は、地球創生以来、天の川銀河系内での星生成が最も盛んであった、いわゆるミニ・バーストの時期に一致している。
2.宇宙線と生物大絶滅
もう一つ、最近の話題を付け加えておこう。それは生物との関係である。
地球上の生物はカンブリア紀(5.5億年前)に爆発的な進化と増殖を遂げてから、その後五回の大絶滅を経験して、そのたびに種の数の激減と新種への交替が起こった。
4.4億年前、3.7億年前、2.5億年前、2.1億年前、6,500万年前である。このうち6,500万年前の事件は恐竜の絶滅で知られているが、これは巨大隕石が落下して、巻き上げられた大量のエアロゾルが急激な気候変化と酸性雨をもたらしたためとされている。2.1億年前の絶滅も、酸素、炭素、ストロンチウム同位体の大きな変化を伴っているので、やはり大隕石の落下が原因ではないかと推測されている。
残り3回の絶滅の原因はまったく不明だったのだが、これが最近、宇宙線の増加によるものとして説明されたのである。
太陽系は下図に示したように天の川銀河系の面内をゆっくりと公転しているが、その際上下に振動しながら回っており、その周期はヒッパルコス衛星の観測データを使ったギースとヘルゼルの計算によって約6,400万年と求められている。
また天の川銀河系全体も宇宙空間に対して面に垂直な方向に運動している。ギースとヘルゼルは、この振動を過去に遡ってみると、生物の大絶滅が起こったのは太陽系が銀河面から上側に最も離れたときに符号していることに気付いた。これは天の川銀河系の外から来る宇宙線は銀河面から離れたときに強くなり、とくに銀河系の進行方向では、宇宙空間物質(主に陽子)との衝突で発生する衝撃波によって強められるためとして理解される。
メドヴェデフとメロットは、さらに進んで、カンブリア紀以後の化石の産出数に約6,200万年と1.4億年の周期変動があるというロードとミューラーの発見も宇宙線効果であろうと指摘している。生物の個体数(産出された化石の数)の周期的変動が平均気温の変動によるものと考えれば、6,200万年周期で訪れた寒冷期に生物の個体数が減少し、ときには大絶滅に到ったこととなり、その原因は太陽系に降り注ぐ宇宙線強度の増大として理解できる。およそ1.4億年周期の個体数変動は、シャヴィヴによって指摘された、太陽系が渦状腕を通過するときの宇宙線増加によるものと理解される。画像はこちら [5]からお借りしました。
3.まとめ
ここまでで一旦整理すると。
地球に降り注ぐ宇宙線の大小を左右する要因は、大きく平面方向と垂直方向の2つに分けて理解することができます。
平面方向では、天の川銀河系とその中で運動する太陽系の位置関係が重要。
太陽系が星の密度の高い渦状腕に入ると超新星爆発の影響を受け易く、その結果、地球に入る宇宙線の量も増大する。
垂直方向では、天の川銀河系とその中で振動する太陽系との位置関係が重要。
太陽系が天の川銀河系の端部に行くと他の銀河系の影響を受け易く、その結果、地球に入る宇宙線の量も増大する。
今まで取り上げてきたことは、個々の「観測事実」にかなり大きな不確かさがあることもあり、まだ革新的ではあるが仮説の域を超えることができていません。
しかし、1,000万年から1億年という時間間隔で起こる周期的な変動は、地球の内的要因とするよりは、より大きなスケールの外的要因が地球に及ぼす影響と考える方が自然であり、個々の事象の説明には不確かさが残るにせよ、気候変動の全体像の捉え方には説得力があるので、いずれは広く認知されるようになることと思います。
宇宙線の影響の大きさが分かってきたところで、次回はもう少し、この宇宙線の謎について掘り下げてみたいと思います。