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電磁波の物質への共振現象の解明(3) ~水晶が発電する、圧電効果の不思議

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東日本大震災以降、地震予知が注目されています。VAN法(http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2011/11/000986.html [1])は、地震予知を行うため地中を流れる「地電流」を測定する技術ですが、では、どうして地震前に地電流が変化するのでしょう?

電流と地盤の関係を考える上で、“物質に圧力を加えると電流が発生する”仕組みについて知っておく必要がありそうです。今回はこの『圧電効果』と、これとは逆に、“物質に電圧を与えると変形する”『逆圧電効果』についても調べてみます。
電磁波は電流に伴って発生するので、地盤と電流との関係を調べていくことによって、電磁波と地盤(岩盤)の関係も明らかになっていくはずです。


 


圧電効果(逆圧電効果)とは

●圧電効果

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圧電効果とは、石英や特定のセラミックに圧力を加えると、圧力変化に応じて電圧が生じる現象をいいます。圧電効果は身近なところで利用されています。例えばガスコンロは、圧電素子に圧力を加えて10,000ボルトという高い電圧を持つ電流を発生させることで火花を出し、ガスに着火する仕組みです。ind070801.gif

こうした効果を持つ物質を「圧電素子」と呼びます。圧電素子として代表的な物質に石英(水晶)がありますが、石英は、岩盤を形作る岩石として代表的な「花崗岩」を構成する主成分の一つなのです。

石英は圧電効果を起こすため、圧力を掛けると電流が発生します。(圧電効果によって発生した電流を「ピエゾ電流」といいます。「ピエゾ」は圧電効果の英語名”piezoelectricity”より)したがって、地震(あるいは地震の前兆)によって岩盤に強い圧力が加われば、岩盤をつくっている花崗岩にも電圧変化が発生し、電流として観察されるというわけです。一見無関係に見える岩盤と電流には、意外にも密接な関係があるのです。

●逆圧電効果

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また、圧電効果とは逆に、石英やセラミックといった「圧電素子」に電圧をかけると、結晶が変形する「逆圧電効果」という現象が起きることも知られています。「逆圧電効果」は、潜水艦の航行や魚群探知機として利用されるソナーや、クリスタル型スピーカー等に幅広く用いられています。どちらも水晶などの圧電素子に信号を乗せた交流を加えることで振動させ、それを超音波(ソナー)や音波(スピーカー)に変換するものです。

圧電効果(逆圧電効果)を起こす物質とは

では、どういう物質が圧電効果を起こすのでしょうか?「圧電素子」として代表的な物質としては、石英(水晶)の他、「ロッシェル塩(酒石酸カリウム-ナトリウム)」、工業用としてよく使われる「チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)」などがあります。

●正確な時を刻む水晶発振子

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今回は、身近にある圧電素子の代表、水晶(石英)について、もう少し詳しく見ていきましょう。

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水晶に交流、すなわちプラスとマイナスが交互に入れ替わる電流を加えると、一定の周波数で振動します。その振動数は交流の周波数に依らず、水晶の形状や大きさで決まります。水晶の振動数は極めて正確なため、その振動を電気信号に変えることで、時計をはじめとした様々な電子回路を制御する時間の基準として利用されるのです。

(水晶発振子の内部、丸い部分が水晶)

ちなみに、クォーツ時計に使用されている水晶の振動数は32,768Hzで、1秒間に32,7681回振動することになります。中途半端な周波数に見えますが、32,768=2の15乗なので、二進法で計算するデジタル回路にとってはとても都合が良いのです。32,768回振動することは、デジタル回路にとっては1→10→11→100→101→…→1,000,000,000,000,000まで、32,768回数える時間が1秒となります。

電子回路用として正確な周波数を得るため、水晶発振子用の水晶は天然のものでは無く、工業生産されたものが利用され、できあがった水晶は特殊なカットが施されます。

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水晶発振子の材料となる人工水晶は、天然の水晶と比べると透明で平たい形をしています。写真のものは、長さ20センチ厚さは1センチ程度あります。この人工水晶から黄色い部分をカットして「ウエハー」とし、さらにここから「プランク」という小片を取り出します。これが水晶発振子の材料です。こうした特殊なカットを施すことではじめて、安定した周波数で振動する水晶の小片が得られます。

水晶から正確で安定した周波数を得るためには、特殊なカットが必要となります。後述しますが、水晶の結晶が持つ方向性が圧電効果の秘密の鍵になっています。

圧電効果(逆圧電効果)はなぜ起こる

水晶やセラミックには金属のような自由電子が存在しないため、電流が流れない絶縁体です。それなのに、圧力をかけると電圧が生じるのはなぜでしょう?

その訳は、結晶内のイオン配置にありそうです。下の図をご覧ください。

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水晶の結晶は、全体としては正負がバランスしていますが、結晶の内部にあるイオンは偏在し、プラスとマイナスの電荷中心は一致せず、やや離れて存在しています。したがって、圧力を加えて結晶を圧縮するとプラスの電荷中心が近づいた側がマイナスに帯電し、マイナスの電荷中心が近づいた側がプラスに帯電する「電気分極」という現象が起きます。結晶の一方がプラスに、もう一方がマイナスに帯電することによって、結果として両端を極とした電圧が発生し、電線をつなげば電流が流れるのです。

逆圧電効果の原理は、上記の反対です。圧電素子のプラスの電荷中心に近い方にプラスの電圧を掛けた場合、プラス同士が反発するので結晶は縮みます。逆の場合は、プラスとマイナスが引きつけ合うため、結晶は伸びることになります。
圧電効果の秘密は、結晶構造が持つ「異方性」、すなわち決して同質ではないことにあります。水晶の分子が電荷の偏りを持っているために、わずかな形状の変化が「電気分極」を引き起こして電圧の発生につながるのです。

今後の追究課題

ここまで、電流と地盤(を構成する花崗岩)との関係について調べてきました。では、電磁波と地盤とはどのような関係にあるのでしょうか?次回は、電磁波と電界の関係について追究していきます。
また、逆圧電効果で花崗岩が変形するとしても、電流を掛けて破壊することなどできるのでしょうか?圧電効果による変形量や力の大きさについても調べていく予定です。

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